「彼女達の結論は100点だと思う。」夜明けの祈り だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女達の結論は100点だと思う。
ポーランドはカトリック信仰がつよいお国柄の様です。そんな地域で修道女達を襲ったソ連兵。複数回に渡って、結果7人が妊娠して、修道院長は梅毒に感染させられたとのこと。地獄です。
そんな中、1人の修道女が耐えかねて医師に助けを求めた。結果若いフランス人女性医師マチルドが修道女達を助けるお話です。実話モノです。
ものすっごく辛い話ですが、それだけではないので、ぜひ目を逸らさず見てもらいたいです。
産科の専門ではないけれど、必死に手を尽くすマチルド。自身もソ連兵に凌辱されそうになりながら、本職に思いっきり影響だしながら。上司でセフレのユダヤ系医師に、悩みを打ち明けるよう進められても、修道女達が望まないので口を閉ざしています。
最終的には同時のお産になった時、例の彼に助けを求め、協力してくれるのですが。
私はフランス語に堪能な修道女マリアにも思いっきり感動しました。信仰の世界と現実の世界のどちらも知っているからこそ、院長に背き、マチルドを頼った。信仰への疑問を持ちながらも、周囲を支えるマリアをすごいなぁと思いました。
カトリックだけどコミュニストの両親がいて医師でセフレもいるマチルドと、恋人がかつてはいた現修道女のマリアの友情が美しく思いました。
修道女といえども、それぞれ考え方は違う。修道院としての体面を最も重視して新生児を2人遺棄してしまう人(院長)。自由になりたいといって最終的には修道院を出る人。産んだ子供に母性を感じる人、拒否する人。様々です。
院長の行動は許せませんが、彼女には他の道が見えなかったのでしょう。
帝王切開で子を産むも(本人知らないけど)院長に子を捨てられ、同僚の産んだ子に乳をやって、可愛く思えて名前をつけて洗礼を楽しみにしていたのに、その子も院長に捨てられてしまって、自殺してしまった修道女が、もう本当に辛かったです。
院長が子供を捨てていた。そのせいで1人の修道女が自殺してしまった(自殺はキリスト教では重い罪なんです)。そんな中さらに幼な子は更に3人産まれた。
マリアは赤十字の撤退が決まってポーランドを去る直前のマチルドを訪ね助けを求めます。
一晩ののち、マチルドはすんばらしい提案をします。生まれた子供達と赤十字病院の近辺にいる戦災孤児をまとめて修道院で育ててはどうか。そうすれば誰の子かは外から問われないのでは、と。
映画の冒頭から多くの孤児が風景として写っていました。タバコを一本売ったり、案内するからなんかちょうだいってゆったり、棺桶を囲んで走り回ったり。本当にただ風景だった孤児たち(ごめんね)が、修道女を救うべく神が遣わした天使に見えました。
レイプによる望まない妊娠は消せない悲惨な出来事で、これからも被害者を苦しめるでしょう。でも笑いながら駆け回る子供達や滑らかな赤子の肌や温もりは、悲惨な過去を少しだけ和らげると思います。子供にとっても、修道女達にも希望です。その結論はマリアの信仰をも肯定してくれると思いました。
この結論は予想以上に見ている私を救いました。ただの傍観者が救われる必要はないのですが、救われたと思いました。私が妊娠した修道女の立場になった時、きっと少なからず救われると思ったのです。
さらに三ヶ月後がよかった。おそらく養子のためのお見合い会を修道院でやっているんでしょう。走り回る子供たち、その姿に目を細める修道女達と里親候補たち。更には別室の赤ん坊は5〜6人がコロコロ転がっていてそこは正に天国でした。
もちろん、レイプの過去は忘れられないでしょう。これからも夜毎彼女らを襲う悪夢は続く。でも信仰を持ちながらこれからも生きていける。そういう希望を得たのではないでしょうか。
ひとーつだけケチをつけると、修道女が見分けられなくて、特に妊婦が誰が誰やらさっぱりでした。なので⒋5にしました。