パターソンのレビュー・感想・評価
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あんな奥さんいたら幸せでしょう
パターソンに住むパターソンさんの1週間。
これは何というか奇妙な映画。淡々といつもと代わり映えしない日常を映しながら説明しにくい心の揺らぎが何時しか波打っている、とでもいうか。大仰ではないからこそじんわりと伝わるメッセージ。詩の響きが心地好かったです。
あとサウンドトラックも良くて。絶妙に抑えた音響系みたいなの。散歩中に聴きたい。
何気ない日常に見せておいて
街と同じ名前の人間が、毎日同じ時刻に目が覚め、同じバスを運転し、犬の散歩の途中でバーに寄る日常。
それは平穏そうでいて何か不穏。書き綴られる誰にも読まれない詩、何度も見かける何組もの双子、カントリー歌手を目指すちょっと素直そうでいながら奇抜な彼女、何かのフラグか?と思わせる人間たちとの出会い、、、。
退屈というよりも、ほっこりというよりも、どこかざわつくのはなぜ?
ア~ハン?
・・・そっちよりも、終始ガサガサとビニールの音を立て続けて平気な客と、寒すぎる空調、そっちの方を解決してしてほしいわ。
毎日は「似ていること」の連続
ジム・ジャームッシュ監督の作品は恥ずかしながらこれまで一度も見たことがなく、本作が初ジャームッシュでした。
何気ない日常を幸せに暮らすのに、ワクワクやドキドキは必要ないのかもしれない。と考えさせられる作品でした。
普段、私は毎日同じように過ぎて行く毎日どこか物足りなさを感じつつも、行動を起こすこともせずダラダラと過ごしています。
そして、おそらくそんな人が世の中の大半だと思います。
そんな毎日に嫌気がさして、つい刺激的なことを求めて旅行に出かけたり、簡単なことでは映画を観たりしてその退屈さを紛らわしているはずです。
しかし、本作では本当に何も起こらない。ただ、パターソンの1週間を切り取っただけ。本来であれば退屈でつまらない作品となるであろうはずですが、なぜか心地よく、また来週のパターソンを観ていたいと思わせる作品でした。
それは、特に多忙な現代社会の人々にとっては忘れかけていた、しかし、誰しも心に憧れるまったりとした生活を、パターソンを通してきっちりと描き出していたからでしょう。
毎日のルーチンの中に、本人は何気なくても、はたからみると、たくさんの幸せが転がっているのだと思います。
朝6時過ぎに目が覚め、綺麗な奥さんにキスをし、猫背でシリアルを食べ、陽が当たる道を出社し、バスの中で詩を書き、同僚と話し、仕事をこなし、昼は滝を見ながらサンドウィッチを食べ、夕方帰宅すると奥さんと談笑をして、マーヴィンの散歩をして、ビールを飲み帰宅する。
全てが幸せに見えます。それはきっと、アダム・ドライバーの笑顔のせいかもしれないし、詩という多くの人にとって馴染みが薄いであろう芸術を媒介することで、自分たちの生活とは違う幸福感を感じさせるようになっているのかもしれない。
しかし、そんな幸せは誰もが持っていて、みんな「似ている」のだとこの作品は伝えているのではないでしょうか。
毎日のルーチンはもちろん似たことの繰り返し。似ている双子や、詩の韻を踏むとは似ている言葉を繰り返すこと、パターソンと奥さんもどこかで似通っており、少女の詩で出てくる「落ちる水」とパターソンが眺める滝の関係。ウィリアムズを好きなパターソンに似たような日本人。
この作品には似ているものが、同じようなものがたくさん出てきます。
日々の暮らしは誰しも似たようなことの繰り返し。しかし、そこには自分では気づけない幸せが転がっているのかもしれません。
マーヴィンのポストの件や、夕食のパイを食べた後ゴクゴク水を飲むパターソンなど、微笑ましい日常がきちんと描かれていて、多幸感に包まれた一作だと思いました。
評価が星3なのは、結局私はこんなものよりドンパチを観たいという、あてにならない評価なので、小さな幸せを愛でることができる人であれば誰しも楽しめる一作だと思います。
可愛いおもしろい
淡々と丁寧に日常がつづられている。
それでいて退屈ではない。
ひとりよがりの「芸術」映画ではない。
くすっと笑えて,なにかわからないしみじみした感動もある。
ちょっとへんな彼女がすごくかわいい。美人なだけではない。
良かった。
かなりの事が起こっているのに起伏がないように見せている
分かりにくくほとんど無いように見える主人公の感情だが、喜びや落ち込み具合、イライラ具合は表情からではなく周りの事象に感情移入していれば、凄く伝わってくるはず。
主人公のオフビートで柔らかいフフっと笑いが全編を表現していると思った。
何者にもならないかもしれない芸術家気取りが苦手な人も最後まで観たら優しい気持ちになれる。
白湯のような作品
パターソンに住むバスの運転手のパターソンは詩作を愛し、妻と犬のブルドックに囲まれ平穏な暮しの一週間を淡々と描いた作品。
詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズの詩に主人公は拘りを持っているようだがこの元ネタが分からない。「ゴーストドッグ」の時の「葉隠」のような意味合いがあるのだろうか?同じ分からないにしても黒人のフォレストウィテカーが殺し屋で日本の古書に傾倒しているのは面白く感じたが
「リミッツオブコントロール」「ブロークンフラワーズ」の時のように同じカット構成でループさせながら微妙に変化する手法は健在。
夜の犬の散歩のルーティンは楽しめた。いつもは家を出て左に行くのに、犬が右に突進する(笑)
主人公が仕事を終え帰ってくるとポストが必ず傾いているのを直す件があるのだが、これの仕業が愛犬のブルドックだったところがジャームッシュ流
双子、ないしは双子に見えるような人物が点在させている意味合い?ユーモアなのだろうが、この辺もイマイチ。デヴィッドリンチならどうしただろうか?
アダムドライヴァーが主人公である意味。メジャー俳優のようだが当方予備知識がないのだが、少し前で言うとエドワードノートンや松田龍平のように何かしでかしそうな俳優が何もやらない妙があるのか?
4次元に関し言及しているが、詩と哲学の関係を匂わせる。主人公が詩を書き溜めてるノートがある。冒頭で奧さんからノートのコピーを勧められる。後半そのノートを愛犬が食い散らかして消滅する。そして最後に謎の日本人永瀬正敏から新しいノートのプレゼント。何か壮大なる哲学があるのだろうが、それが理解できない。
それもまたジャームッシュ流。
また次作を見た時に「あーここに繋がった」とか思えるのかもしれない。
もの静かな主人公の見てる世界観がほっこりとして、普通の日常がキラキ...
もの静かな主人公の見てる世界観がほっこりとして、普通の日常がキラキラしてる事に気づかされるお話。
少女からおっさんまで日常に詩作してるのが素敵だった。
じわじわと惹きつけられたら
マンデーチューズデーを見た限りでは、とてつもなくつまらない予感が漂ってくる。淡々と続くであろう展開が予想され、果たしてサンデーまで集中力が持つかどうか、全く自信が持てなかった。
淡々とした内容はほぼ予想どうりだったけれど、内容への興味というものは予想に反して徐々に高められていき、序盤の眠気が終いには嘘のように吹っ飛んでいた。
繰り返される事柄に、ちょっとした出来事が付け足されるだけなのだが、その積み重ねがたくさんのファニーとハッピーをもたらしてくれる。
退屈な映画どころか、何度も見て楽しまなくてはならない映画かも、そんな気さえ興させてくれた。
ホント最初は設定そのものにも、つまらなさしか感じなかった。でも、見終わってその絶妙な舞台・キャラ設定に、複雑な憧れのようなものを感じてしまった。
映画で詩を表現するということ
アダム・ドライヴァー扮するバスの運転手(ドライヴァー)の名前はパターソン。
彼が生まれ育った町は、ニュージャージー州のパターソン。
彼は毎日、気に留まったことを、手元のノートブックに詩に書いている。
彼が好きな詩人は、パターソンで暮らしたウィリアム・カーロス・ウィリアムズ。
毎朝6時半ごろに目覚め、バスを運転し、勤務が終わると、自宅前の傾いだポストを真っ直ぐにし、近所のドクのバーまで愛犬を散歩させて、ビールを2杯ばかし飲んで帰る。
そんな毎日・・・
というところから始まる物語で、まぁ、大した出来事はほとんど起こらない。
そんな毎日を、ジャームッシュは映像として切り取っていく。
ダブルベッッドで眠るパターソンと妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)。
ベッドを真上から捉え、二人の寝姿は繋がっているかのよう。
時間は6時半頃。
20分頃だったり、15分だったり、30分頃だったり。
出勤したパターソンをチェックするバス会社の管理者。
「今日はどうだい」から始まる会話は、毎日似たようなものだけれど、管理者の返答は毎日異なる。
反復の連続。
そんな毎日。
だけれど、微妙に異なる。
その差異を観客に見つけ出してほしいといわんばかりに、ジャームッシュは同じようなフレームで映像を綴っていく。
そんなにアップじゃない、どちらかといえば、引いたフレーム。
さらに念の入ったことに、移動撮影の際にも、被写体の大きさは変わらないようにしている。
横移動だけでなく、縦の移動でも。
バスが画面奥から進んできても、その大きさは変わらないし、フロントガラス越しにみる風景は大きさは変わらない。
たぶん、この映画を演出する上で、もっとも気にかけた点だろう。
主人公が綴る詩は自由詩だけれど、詩が持つ言葉の厳選さ、みたいなものを、映像に移し替えたといえる。
そしてもうひとつ、詩といえば韻を踏むこと。
この映画では、いくつもの相似形を描いていく。
ひとつは、双子。
あきらかな双子もいれば、双子に見えるふたりもいる。
単に、靴の左右を反対に履いているだけの、ふたりのバス乗客もいる。
それになにより、パターソンに暮らすパターソン。
ドライヴァー役のドライヴァー。
でも、その相似形もふたつだけ。
途中、パターソンが出会う10歳の少女が書いた詩(水が、落ちる。エア(宇)から。髪(ヘア)を伝って)のように。
そう、ちょっとした類似、符丁、偶然の一致。
そんなものに心惹かれ、美しいと感じる毎日。
それが幸せ。
とはいえ、幸せは移ろいやすい、壊れやすい。
まして、日常のちょっとしたところに感じる幸せなんて、気づかなくなったらそれまでだし、壊してしまうことなんて容易い。
週末、パターソンが書いていた詩のノートブックを、愛犬が、留守の間に破って粉々にしてしまう。
言葉は発した瞬間から消え失せてしまうものだけれど、書き留めた言葉はいつまでも残るような気がする。
そして、そこに遺した言葉とともに、その時の「想い(幸せ)」も、そこにあるように思う。
ホントは、ただの、アルファベットの連続だけれど。
落ち込むパターソン。
幸せが「なくなって」しまったように「感じる」パターソン。
そんな彼を救うのが、詩を愛する日本人(永瀬正敏)。
彼が頻繁に口にするのは「アぁ、ハぁ?(a-ha?)」。
似ているふたつの音の組み合わせ。
納得(アぁ)と疑問(ハぁ)。
滝が見えるベンチに並ぶふたり。
アとハ。
偶然の一致、ちょっとした類似、なにか(たぶん、幸せ)の符丁。
日本人から手渡されるのは、白紙のノートブック。
世界は変わっていない。
ちょっと、変化したかもしれない。
かつての幸せは、いまは、ないかもしれない。
でも、やっぱり、世界は変わっていない。
幸せな瞬間を、ふたたび感じるだけでいいんじゃないか。
そんな意味の詩を、映像にして綴ってみた。
そういう映画だろう。
という映画なんですが、個人的には、ちょっと詩としては長いかな。
特に、反復の水曜・木曜あたりでダレダレになっちゃいましたもので。
感受性豊かに生きること
一週間、主人公パターソンが生活しているだけ。
変わらない毎日はいつも違った毎日で、同じ一日なんて二度と来ないこと
愛する人が側にいて平和な日々を感受性豊かに過ごすことの幸せなこと が緩やかに描かれていた。
バスの客の会話に聞き耳を立ててニヤリと笑うパターソンが可愛かった。
模様替えが大好きでなかなかフリーダムなローラも、悪いことばっかり起きがちなダニーも、終わった幼馴染との恋に未練有り余るエヴェレットもなんだか愛おしくてたまらない。
特にストーリーが面白いとかは無いんだけど、連鎖する言葉や双子の存在、傾いたポストなど色々な仕掛けがたくさんあって楽しかった。
「詩を翻訳するのはレインコートを着てシャワーを浴びるようだ」とセリフがあるのに劇中詩を翻訳の字幕で読んでいる私達って…とか思ってしまった笑
アダム・ドライバーの顔が常に困り顔っぽいのと、パターソン自体喜怒哀楽激しい方でないので、ちょっと今どういう感情なの?ってシーンがちょいちょいあった。
私も小学生くらいのとき、秘密のノートに詩を一日一編書きしたためてたなーと思い出した。
あのノートどこにいったのかな
AhHa
すンばらしい!!久々に最高傑作を観た! すべてのシーン、セリフ、表...
すンばらしい!!久々に最高傑作を観た!
すべてのシーン、セリフ、表情、光、音楽、笑顔、良いっ!
マーヴィンかわいすぎる!
ナイトオンザプラネットが大人になったような作品。ジャームッシュ監督、いいわ。素敵に歳をとっているのだなー。
幸せはシンプルでささやかな暮らしの中に
バス運転手のパターソン
彼の毎日は
朝起きて、妻にキスをし、仕事に行き、家に帰って夕飯を食べた後は、犬の散歩に行って、バーでビールを飲む
この繰り返し
これといって特別なことのない毎日
だからこそ平和で幸せな日々
お天気の良い日に散歩に行って、幸せな時間をかみしめるような
そんな映画だった
私は、この夫婦の
フリマで300ドル稼いだから、今夜は贅沢しましょ
っていう感覚がすごく好き
つい「毎日、同じことの繰り返し」を退屈な日々だと思い、刺激的なことを求めがちだけど
日々の生活の中で
本当に大切なことは、無駄なことをそぎ落としたシンプルな生活の中にこそある
贅沢な生活をすることが、必ずしも幸せだとは限らない
そんなことを感じさせてくれるところも良い
uh-huh
米国ニュージャージー州パターソンの市営バス運転手で詩を愛するパターソンの一週間を切り取って見せる。詩を題材にした作品は、それ自体がジャームッシュの詩のようだ。映像が韻を踏んでゆく。静かで、可笑しくて、物哀しくて、自分の世界への愛と、愛する人への思いやりに満ちて。永瀬正敏が出演していい味わいを出しています。
ジャームッシュらしい真上からの映像も、嬉しくなったね。
なんていい映画なんだろう
素晴らしい。素晴らしすぎる。なんていい映画なんだろう。
この映画を見た翌日、朝起きたら多分見ている世界が変わるだろう。人生も変わるかもしれない。
パターソンという街に住む、街と同名の男、パターソンは妻と2人暮らしのバスの運転手。朝起きて妻にキスをし、詩を書き、バスを運転しながら乗客の話に耳を傾け、夜は犬の散歩にいきながらバーに寄る。そんな毎日。生活のリズムには狂いがない。しかし、そんな毎日は美しさで溢れているのだ。
パターソンは我々が喜ぶような、「懸賞に当たった」などというようなことではなく、良い詩を書く少女に出会ったり、妻の作ったカップケーキが売れたことや、夜に映画を見に行ったことなどに喜びを感じる。この映画は、今を生きる我々の本当の幸せを見つける手助けをしてくれるような映画だ。
とはいえ、ただ現実的なことを描くわけではない。美しい街並み、彼を取り巻く個性豊かな人々。パターソンという街はまさに理想郷である。そして、携帯を持たず、小さなことに喜びをみつけるパターソンはまさに人の理想像なのだと思う。
キャスティングも素晴らしい。アダムドライバーという俳優が重宝される理由がわかる。永瀬さんもよかった。
この映画を見終えて感じることは、「もっとパターソンの街にいたい!」
退屈なんてとんでもない。ずっとこの映画を見ていたい。そういう映画だった。
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