劇場公開日 2017年1月10日

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「アメリカの闇が登場人物にそのまま憑依してしまった感じ?」FOUND ファウンド kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカの闇が登場人物にそのまま憑依してしまった感じ?

2021年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 自分のことを可愛がってくれる兄スティーブが黒人の生首を斬って隠し持っている事実を知った11歳の少年マーティ。ホラー映画が大好きなためか、通報するわけでもなく誰にも相談できぬまま過ごしていた。そんなある日、レンタルビデオ店で「HEADLESS」というホラー映画のビデオの中身が盗まれていることに気づくが、その盗まれたビデオが兄の部屋にあった・・・

 ずっと少年マーティ目線による作品であり、ホラー映画の賛否までも問いかけてきそうな内容だった。マニアには垂涎モノのビデオのオンパレード。作品名を見てもさっぱりわからないが、物語の中心になるのは「HEADLESS」。ストーリーもクソもない内容ながらスプラッター描写だけは凄く、兄もこれを模倣したんじゃないかと疑うマーティ。そして、学校のいじめっ子マーカスの生首も発見してしまう。

 イジメの構図や黒人差別主義の問題が根底にあり、ホラー好きが実践という一線を越えたシリアルキラーの描写を犯人の弟目線で追ったといえば、的確ではないにしろ、筋が通る。マーティの心の動きも絶妙であり、兄弟の絆を信じながらもやってはいけないことを自覚する様子。彼もまた殺戮者にならなくとも差別主義者の道を歩むかもしれないが、最後の大きな事件によりトラウマとなり歪んだ心を持つことが示唆されている。

 廃墟と化した鉄道博物館や麦畑の美しい風景。部屋の中にはマニアックなホラー映画のポスターが貼りつくされていた。黒人牧師の説く和解など無視。「やられたらやりかえす」という暴力の連鎖を肯定してしまう、人間の根底にある愚かさも描かれ、多感な年頃に残酷シーンを見せることの是非も問うている気がしました。

kossy
2022年4月5日

暴力では解決しないのは正論ですが、イジメってそんな綺麗事は通用しませんよ・・・?子供のイジメは子供が故にとても残酷で激烈です。作品の中で勇気を出してやりかえして勝った事自分を褒めてあげたいという主人公の台詞がありましたが、まさにそれに尽きます。
神父だか牧師だかの言葉がどれだけ主人公を絶望させたか、少なからずイジメ的なものを経験した自分にはよく分かります。
もし自分がああ言われたら「どこにそんな大人がいるんだよ!親は世間体しか考えていないし自分の深い部分をまるで知ろうとしない理解しようとしない!あんたに話したらどうにかしてくれるのか!?四六時中守ってくれるのか!?」と叫ぶと思います。
せめて両親が世間体や自己保身を優先させず子供に対して真摯に向き合い子供の事をきちんと知ろうと努力していたならともかく今までイジメに気付かなかった(気付きたくなかった)自分達の愚かさを反省すらせず「お前がそんなに辛い目にあっていた事に気付けなかったのは本当に申し訳なかった。確かにやりすぎたかもしれないがお前がその勇気を持つのがどれだけ大変だったかを思えば褒めてやりたいくらいだ。後の事はお父さん達にまかせておけ、お前の事は守る、それが親の仕事だ。」と言ってあげられない両親だったからこそ主人公は苦しみ続け兄もああいう風に育ったのかもしれません。(過去のあれこれが描かれていないので何があってああなったかは憶測の部分が大きいですが)

和哉