「期待し過ぎは禁物」ゴースト・イン・ザ・シェル hayassyさんの映画レビュー(感想・評価)
期待し過ぎは禁物
ブレードランナーの世界観を継承し、マトリックスに影響を与えた映画として、以前から名前だけは知っていた世界に誇るジャパニメーション「攻殼機動隊」の実写版。
ということで、アニメ未見のままものすごく期待値を上げて観に行ったが、少しがっかりした。
がっかりした点は以下の3点に要約できる。
①映画の内容が予想以上に薄い、アイデアが古い
攻殼機動隊は難解である…とは以前からネットの口コミ等でよく目にしていた。しかし、それは1995年にしかも日本のアニメーションで一線を隔す内容であったため当時としては斬新であったし、それ以降のSF作品にも影響を与えたからである。
しかし、1995年の企画を現代の技術で実写化するということ自体が少々古臭い。他のSF映画やサスペンス映画でも観たことがあるシーンが数多くあり、新鮮味にかけるのである。逆説的に言えば他の作品にオマージュされ過ぎている原作がすごいと言えるのだが、このご時世わざわざ実写化する必要性はないかなとも思えるのである。
ブレードランナーな世界観で、ロボコップのようなノリで作られた主人公が、マトリックスな情報社会の中マイノリティリポートのように謎解きを行なっていく…と。最後はやはりロボコップのような戦闘シーンもある。
②世界観がやり過ぎである。
SF映画の最高の醍醐味でもある「世界観を楽しむ」という点において現代のCG技術の凄さを垣間見ると同時に、何かが物足りない。やり過ぎていて現実味がないのである。例えばブレードランナーでは同じアジアンテイストな世界観ながら将来的にこうなるだろうなーという退廃的だが革新的な世界観がうまく作られているのである。
対して本作では街中を立体化したコイが泳ぐ等、バーチャル技術の凄さは伝わってくるのだが、退廃的な世界としては物足りない。むしろバトーが犬の餌やりのシーン等ででてくる路地裏等、汚くて地味な場所にこそ、ブレードランナーのような退廃的な趣が伝わってきて共感できる。全体を通してごちゃごちゃし過ぎな感じは否めない。
③予告編に良いシーン公開し過ぎ
本作を本気で見たいと思ったのは予告編のシーンがかっこよ過ぎたからだ。
トレーラー映像では芸者ロボットが要人を襲うシーンがあり、芸者ロボットの造形等SF好きとしてはかなり惹きつけられた。また少佐がプレデターばりの光学迷彩で敵をなぎ倒していく等、公開前にこんなに公開しても良いのかと思えるほど多くのトレーラーが公開されていた。
これだけトレーラーが面白ければ、中身も面白いだろうと思って期待していただけに残念である。
良かった点はビートたけしが渋くてかっこよかった点である。この映画の最大の見所は最後のシーンで悪を断つために、ビートたけしがアウトレイジばりの熱演を見せるところである。
一緒に観に行った友人はアニメ「攻殼機動隊」を鑑賞済みの方だったので、その彼の感想も載せておく。
「結構楽しめたな〜。ハリウッドだからかなりわかりやすく作られていた感じはした。アニメの方はセリフとか難しすぎて子供の頃に見た時内容がほとんどわからなかった。でもやっぱりアニメ版のほうが俺的には好きかな」
とのこと。
機会があればアニメ「攻殼機動隊」や友人オススメの「イノセンス」も鑑賞したいなと思った。
あと、今年は何と言ってもブレードランナー2049の公開年である。
今から非常に楽しみである。