「猥雑さを失う社会に抵抗する映画」菊とギロチン ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
猥雑さを失う社会に抵抗する映画
関東大震災直後の閉塞していく日本社会と、3.11後の日本を重ねて描いた瀬々監督の渾身の一作。全編に強烈なパワーが漲っていて時間を忘れて引きずり込まれる。
言うことだけは立派で観念的な男たちに、地に足のついた女相撲の力士たちが見事な対比。自由を求めて戦う女力士たちの切実さを目の当たりにして、目覚めてゆく男たち。しかし、時代はどんどん自由をうばってゆく。
社会が余裕を失っていく時は、いつの時代もにたようなことが起こるものなのだろう。猥雑なものを排除する権力の姿は、「正しい」ものしか許さない現代の空気にも共通するものがある。猥雑さを排除しそれいつかエスカレートし、日本は暴走した。今世界で何が起きているのか、本作にはたくさんのヒントがあるように思う。正しいものしか残そうとしない社会は、正しくないのだ。
時代と呼応した、奇跡みたいな映画がたまに生まれるが、本作はまさにそれ。脚本の相澤虎之助のアイデアだという、浜辺で踊るシーンは魂が震える。
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