「私は泣けませんでした」昼顔 yuyuさんの映画レビュー(感想・評価)
私は泣けませんでした
好きになった同士、伴侶がいた。
出会う順番が違っただけで、道ならぬ恋だと責められる理不尽さ。
それが、TVドラマを見たわたし(既婚)の感想でした。
どちらかと言えば乃里子より沙和に共感出来ると。
けれど、
裕一郎との新しい生活を夢見ながらマンションを訪ねた沙和に対し、
”まだ妻である”乃里子が望むただひとつの願いを沙和が拒否した瞬間、私は初めて乃里子に同情しました。
裕福な家庭で愛されて育ち裕一郎と結婚、
順調にキャリアも積み、彼との子供を願っている美しい女性。
完璧な自分の人生はパート勤務の平凡な主婦に夫を奪われたことで崩れてしまう。
(ドラマでの)示談の場で沙和に突きつけた条件も、その後慰謝料無しで離婚に応じようとしたことも、彼女のプライドに他なりません。
自殺未遂までした精神状態でありながら、必死で自分を納得させようと寛容さを装う乃里子の表裏一体の狂気に、目前にある二人だけの幸せしか見ていなかった沙和と裕一郎は鈍感過ぎました。
特に裕一郎は、別れようとしている乃里子を妻ではなく『家族』のような対象で見ている残酷さ。
左折のウィンカーのまま駅に向かわせなかったのは、乃里子に謝りながら乃里子の傷を理解していない裕一郎自身とも思えました。
沙和もまたしかり。
乃里子の前では、それがポーズでも頭を下げ続けるべきでした。
「これからも裕一郎と呼ばせて」
結果的に乃里子の夫を略奪した人間として、願いを受け入れ十字架を背負いながら生きるべきでした。
奪われた乃里子にとっては、沙和の想いが純粋であればあるほどその全てが邪悪なしたたかさに映り、
裕一郎が自分よりも沙和を選んだことを最後まで認めたくなかった。
純粋さは免罪符ではない。
勘違いをした悲劇、私は泣けませんでした。