「自由を求めるヒロインのたくましさに魅せられる」サーミの血 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
自由を求めるヒロインのたくましさに魅せられる
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1930年代。厳しい自然に囲まれた北欧、ラップランド。この物語は、先住民族サーミ人が受けていた差別の歴史を描いた物語でもある。寄宿学校での教育や教師から発せられる言葉、人々がサーミ人へ投げかける冷たい視線などは身を切るほど辛いものがある。が、それでも本作が一向に魅力を失わないのは、ひとえにヒロインの逞しい存在感があるからだろう。彼女が日常の中で何を考え、どのような思いを発露させ、やがてどんな決断を下すのかに主軸を置いて、その心の流れを丁寧に描き出すのである。
当時、多くのサーミ人たちが故郷を捨て二度と戻ることはなかったという。本作は故郷に残った者、故郷を捨てた者のどちらの正当性を訴えるのでもなく、あくまで少女の視点に特化することで“感情”を描き出してみせる。こうした演出ゆえに決して昔話に陥ることなく、現代に生きる我々でもダイレクトに享受できる豊かな心象模様がもたらされたように思えるのだ。
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