オリーブの樹は呼んでいる
劇場公開日:2017年5月20日
解説
祖父が大切にしていたリーブの樹を取り戻すため、スペインのバレンシアからドイツへと向かう孫娘と仲間たちの旅を描いたドラマ。ビクトル・エリセ監督の「エル・スール」にヒロインとなる少女エストレリャ役で出演した経歴を持つ元女優の映画監督イシアル・ボジャインがメガホンをとり、ボジャインの夫でケン・ローチ作品の脚本家として知られるポール・ラバーティが脚本を手がけた。20歳のアルマは気が強く扱いにくい女の子だが、オリーブ農園を営む祖父とだけは幼い頃から強い絆で結ばれていた。しかし、農園の経営難から、祖父が大切にしていた樹齢2000年のオリーブの木を父が売り払ってしまい、祖父は食事も喉を通らなくなってしまう。そんな祖父のため、アルマは樹を取り戻そうと無謀な旅に出る。2016年・第13回ラテンビート映画祭で上映されている。
2016年製作/99分/G/スペイン
原題:El olivo
配給:アットエンタテインメント
スタッフ・キャスト
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2017年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
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『わたしは、ダニエル・ブレイク』の脚本家で、監督がその妻で『エル・スール』の子役だったイシアル・ボジャイン。その組み合わせに興味が湧いて観た。
物語もテーマも非常にシンプル。現代に生きるわれわれは自然と共生できるのか? ただし、土地に根差して質素に生きるか、開発によって富を選ぶかではなく、どっちを選んだところで貧困が待っているのが非常に現代的だ。
ただテーマを掘り下げる点ではちょっと食い足りない。しかも当初の脚本では無事に樹を取り返すラストだったらしく、監督の娘が「ありがちすぎる」と言ったことで完成品のラストに至ったとか。まったくもって正解だったと思う。
ケン・ローチ映画のような凄味には届いてはいないが、この映画の真っ直ぐさを嫌いになれない。深くはないが清々しい。そして人を動かすのは、したり顔の正論より愚直で真っ直ぐな思いだったりするのを、歳を重ねるにつれ痛いほどい思い知るのである。
2022年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
見終わってから、しばらくしてよみがえってきました。
オリーブの樹を取り戻そうと突っ走るアルマ。ののしり合いながらも愛情深い家族。オリーブ畑を縫って長く続く道路とトレーラー。壊された自由の女神像。組織として冷徹に対処するドイツ企業・・・などの映像、エピソード。
もうひとつは、樹齢2000年のオリーブの樹。その樹とどこか一体にみえるアルマの祖父(マヌエル・クカラ)。この祖父は昔の日本映画「東京物語」の笠智衆みたい。口数が少ないのですが存在感があります。樹を売られ悲しみ、気力をなくしているかわいそうな老人というだけではないですね。
この映画を創った人の思いを勝手に想像してみると、個々を評して通り過ぎるのではなく、両方・全体を含めた大きな絵をみるように、ゆっくり眺め、なにかを感じ、考えてほしい、ということではないだろうかと思いました。
スペイン映画ならではのあたたかさと、現代社会への問題提議を秘めた味わいある映画だと思います。
2021年12月21日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
日本はビルトアンドスクラップを繰り返してきた国。
自然を取り戻すにはこう言った方法しかない。
壊しちゃ駄目だ。でも、壊したら自然を再生しなけりゃ駄目だ。
森を取り戻す。人間の為だけで無く、全ての自然の為に。
ってこの映画は語っていると思った。
人間は2000年も生きられないって事かなぁ。
2019年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ー愛着ある樹齢2000年のオリーブの樹を求めて、スペインのバレンシアからドイツへと向かう孫娘と仲間たちの旅を描いたロードムービー。ー
祖父の意思に反して、父親が売却した樹齢2000年のオリーブの樹を取り戻すために孫娘ルイスが取った行動と気概に打たれた作品。
スペイン経済の現実を描き出しつつ、仄かな未来への希望が感じられる。
コメディ要素を絡め、現在の国家間経済格差も描き出している、小品だが記憶に残る作品である。
<2018年8月13日 酷暑の旅先のミニシアター、京都シネマにて鑑賞>