オン・ザ・ミルキー・ロード : 特集
映画通を仰天させた“あの巨匠”の9年ぶりの新作、伝説の反逆児が帰ってきた!
こんな監督他にナシ、世界3大映画祭で支持されまくりなのにめちゃくちゃ!
愛と冒険の逃避行──今回もぶっ飛んでます!
「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」で世界に衝撃を与えた鬼才、エミール・クストリッツァ監督9年ぶりの最新作「オン・ザ・ミルキー・ロード」が、9月15日より全国公開。圧倒的エネルギーと奇想天外なストーリー──ジョニー・デップ、ジム・ジャームッシュも敬愛するカリスマ監督が復活を果たした、壮大な愛の逃避行だ。
「知らない」とは言わせない「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」の衝撃を!
ジョニデもジャームッシュも崇拝する“カリスマ監督”がまたやった!
長らく映画を見てきた映画通を名乗るなら、エミール・クストリッツァ監督の名前を知らないとは言わせない。95年の「アンダーグラウンド」、98年の「黒猫・白猫」と聞けば、「あの作品の監督か!」と思い出す人も多いだろう。そして、当時はまだ子どもだったという若年層は、これを機にぜひ覚えておいてほしい人物だ。54年、旧ユーゴスラビアのサラエボ出身。カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭のすべてで主要賞を獲得した映画監督にして、ミュージシャンであり俳優。「巨匠監督」と呼ばれるに相応しい大御所ながら、その創作意欲は落ち着くことを知らず、多方面でエネルギッシュに活躍する常識破りの破天荒男。そんなカリスマ監督が、9年ぶりに新作をひっさげて帰ってきたのだ。
クストリッツァ監督に尊敬の念を表明する顔ぶれを見れば、この男がただ者ではないことは明らかだろう。まずはベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作「アリゾナ・ドリーム」で主演を務めたジョニー・デップ。そのデップと「デッドマン」でコラボしている人気監督ジム・ジャームッシュもリスペクトを表明。この2人はクストリッツァ主催の映画祭にゲスト参加しているが、そのなかにはオスカー監督オリバー・ストーンも名を連ねていた。
クストリッツァ監督の代表的作品と言えば、「アンダーグラウンド」と「黒猫・白猫」。特に監督に2度目のカンヌ国際映画祭パルムドールをもたらした前者が世界に与えたインパクトは絶大。悲劇的な戦争が寓(ぐう)話性、ジプシー音楽と渾然一体となって描かれ、見る者を大いに驚かせた。続くコメディ「黒猫・白猫」とも合わせ、当時ミニシアター・ブームのまっただ中にあった日本でも、大きな話題となったのだ。
シリアスなのかコメディなのか、いやそのどちらでもあるというブッ飛んだ作品群が、権威ある映画祭を席巻してきているのが痛快だ。カンヌ国際映画祭では前述の「アンダーグラウンド」に加えて、「パパは出張中!」がパルムドールを受賞。ベネチア国際映画祭では「黒猫・白猫」が銀獅子賞(監督賞)を受賞、ベルリン国際映画祭ではジョニー・デップ主演作「アリゾナ・ドリーム」が、銀熊賞(審査員グランプリ)を獲得しているのだ。
圧倒的エネルギーと奇想天外なストーリー──「クストリッツァ節」大復活!
《破天荒監督 of 破天荒監督》=“ブッ飛びオヤジ”世界待望の最新作
クストリッツァが、どれほどパワフルですさまじい才能を持つ監督なのか分かってもらえたと思うが、その彼が9年ぶりに完成させたのが、この「オン・ザ・ミルキー・ロード」。圧倒的なエネルギーと、リアリズム&幻想的な要素の融合、そして予測不能の展開──まさに「クストリッツァ節」と呼ぶべき作風が全開、映画通を震わせたあの破天荒ぶりが、またもやスクリーンに復活しているのだ。世界が待ち望んだ最新作、鬼才監督の持ち味をたっぷり味わえる本作は、やはり「見逃してはならない作品」だ。
今回描かれるのは、激しい戦火のなかで繰り広げられる壮大な愛の逃避行。クストリッツァ監督は、戦争が続く架空の国、架空の村を舞台に、運命的な出会いを果たしたミルク運びの男と、別の男のもとに嫁ごうとする美しき花嫁が、純粋な愛を貫く姿を情熱的かつユーモアたっぷりに、でもシリアスに圧倒的なエネルギーで描き切る。
過去の作品群でもおなじみの、人知を超えた奇想天外な動物たちとのコミュニケーション・シーンも健在だ。本作では主人公が駆るロバを筆頭に、ガチョウやハヤブサ、ヒツジ、クマまでが登場。CGは使わず本物を使用して撮影したというだけに、驚かずにはいられない。なかでもヘビは、ストーリーに関わる重要な役割を担う。
愛の逃避行に身を投じる美しき花嫁役には、「007 スペクター」でも話題を集めたモニカ・ベルッチがキャスティング。その相手役を演じたのは、なんとクストリッツァ監督自身だ。いくつかの作品に俳優として出演した経歴を持つが、自身の監督作に出演するのは今回が初。自らの世界を主演俳優として体現するさまに要注目だ。
ジョニデ?→「イラネ!」 街が必要?→「なら作っちゃえ!」
“伝説だらけ”のこんな男の作る映画、そりゃすごくて面白い!
クストリッツァ監督がどれほど常識破りのブッ飛び男なのかを伝える「伝説」の数々を、さらに追加しておこう。映画において、描かれる作品世界の豊かさや壮大さ、とんでもなさは、作品を手掛ける監督の器のデカさに比例していると言っても過言ではない。こんな武勇伝を持つ男が監督した映画が、面白くないわけがない。
「アリゾナ・ドリーム」の撮影中に、「アンダーグラウンド」の企画をクストリッツァから聞いたジョニー・デップ。同作の主人公の弟で、動物園で飼育係を務めるイバン役に「出演させてもらうためなら、セルビア語もマスターするから!」と熱烈ラブコールを送ったが、監督は「今回はユーゴスラビアの役者だけで撮るから、無理! ごめんね!」とあっさり断った。
「ライフ・イズ・ミラクル」ロケ地となったセルビア西部の村・モクラゴラを気に入り、その村をまるごと購入。「クストリッツァの村」を意味する「クステンドルフ」という名前の村にした。観光地としても人気を集め、「クステンドルフ映画祭」も毎年開催。そして、現在製作中のノーベル文学賞小説「ドリナの橋」の映画化のため、作品の舞台であるボスニア・ヘルツェゴビナのビシェグラードにも新たな街を建造している。
セックス・ピストルズなどのパンク・ロックに心酔する青年期を送ったクストリッツァは、音楽シーンでも大活躍。自身が率いる「エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラ」で、世界ツアーまで実施しているのだ。ジャズ、ラテン、スカ、パンク、ハードロック、クラシックから、ジプシー音楽まで、あらゆるジャンルを採り込んだ音楽でも世界を魅了し続ける。