「かなりコアなSF映画」メッセージ CBさんの映画レビュー(感想・評価)
かなりコアなSF映画
よかった、終わってしまう前に滑り込みで観れた。
おどろおどろしいというかまがまがしいというかそういった音楽ともいいにくい音が背景を流れ続け、異文明との接触は必ずしも楽しいものではなく、少なくとも緊張感の連続であることを、聴覚と視覚の両面から体感する映画。
ストーリーのメインメッセージは協調が大切だということで、それ自体は目新しいわけではない。だがそこに異文明がプレゼントしてくれる能力が絡みあい、観ごたえのあるストーリーになっている。この能力がまた、素晴らしい能力であることは間違いないのだが、それを持つことが幸せかどうかは生き方次第というもので、かなり考えさせる映画になっている。
コアなSF映画だ。
エンタテインメント性はストイックなまでに抑え、これで売れるのかと心配にさえなるが、今日まで上映しているのだから、よかったのだろう。(7週め)
2019/10/17 追記
この映画に関する、琥珀さんとカミツレさんのやりとりを読んで、どうしても原作を読みたくなって、読んできました。以下は、映画でこの作品に導かれ、お二人のレビューで刺激を受け、原作「あなたの人生の物語」を読むことになった私の、至福の体験の記録です。
読んできました。もし映画を観ただけだったら、下記程度の理解で終わったでしょう。
「メインメッセージは『協調が大切』。そこに加えて、異文明がプレゼントしてくれる素晴らしい能力を持つことが幸せかどうかは生き方次第と考えさせる映画になっている」(当時の自分のレビューを要約)
本レビューでのやりとりと原作を読んだおかげで、上記の薄い理解でなく、「もうちょっと深いところで、わかったような気がする」という、映画好きとしては至福の時を、今、迎えています。以下は、読んでない人にはピンとこないであろう不親切な文章になってますが、読んだ際の自分の驚き、喜びをそのまま残しておきたいので、わかりにくくて申し訳ないですが、このまま残します。
「第1本目の線を書き始める前に、全体の文の構成がどうなるかを心得ていなくてはならないことを意味している」
たったこの一文が、重要なことを言っていることに、気付きながら読む、ということの快感。
フェルマーの原理という言葉は知らなかったが、その意味するところを知った上で読み進める際の、先の楽しみ。
なるほど、SFって、結論やネタを知ったからといって、つまらなくなるものではなかったんだ。かえって、ワクワク感が増してるよ!
そして、"覚醒" を、これだけ具体的に描いた作品は、かってあっただろうか。彼等の "文字" を学ぶうちになされていく "覚醒" 。その過程は、それの行き着く先を知った上で読むと、感動的ですらある。何も知らずに読んでいたら、「このあたり、ちょっとかったるいな」と感じながら読んだであろう部分が!
「といっても、結果的に思考過程が速くなったというわけではない。心は、疾駆するのではなく、表義文字群の基層をなす相称性の上に均衡を保って漂っている」
ただ読んでいたら、何難しいこと言っちゃってんの、だ。それが、エンディングに向かうはっきりした道標と理解できる喜び!
カミツレさんが、「2001年宇宙の旅」のスターチャイルドをあげてらした意味が、読んでようやくわかりました。それこそ "覚醒" したかのように、わかりました。
この状況に自分を連れてきてくれたのは、もちろん琥珀さんでありカミツレさんなわけですが、それよりも先に、この「メッセージ」という映画を私が観ていなければ辿り着いていない、と気づいた時の衝撃! 映画を観ることは、こうして、より深い理解や経験への入口にもなりうるんですね。
これで、もう一度「メッセージ」を観る機会があれば、最高の視聴体験になるかなぁ。
なんか、堅苦しい言い回しになっちゃったけれど、自分の中では、とてもスリリングな一週間になりました。
重ねて、感謝します。こんな経験に導いてくれて、ありがとうございました!
さあ、また明日から、新たな経験ができるかも、と楽しみにして、映画観に行こうっと。
CBさん
カミツレさんのレビューを読みました。
琥珀さん(グレシャムの法則さんの旧名は琥珀さん、)
ちょっと驚きました。
原作を読まないでは、到底分からない。
「あなたの人生の物語」
とても哲学的で、カミツレさんが感じられた違和感、
少しは触れた所です。
3000年後の戦いのために武器の準備をする・・・
とか、
ヘプタポッドの形態がイカかタコ状の巨大な浮遊物・・・
これももっと可愛らしいクラゲのようなので感じ、
とか、
イカ墨を吐いて言語とすること、
も、映画化で選択した解釈だけれど、
言語を映像にする過程での判断の可否とか(これは私の感じです)
ルイーズにも完璧に読めたわけでは無い・・・
など、
ヴィルヌーヴ監督の映画化にも40%の評価である・・
とか、
私が不思議に思ていたことは、少しだけ、わだかまりが解けた
気がしています。
テッド・チャンさんは寡作ですけれど大変な人気作家だとWikipediaにも
書かれています。
2時間でその魅力を伝えることはヴィルヌーヴ監督にさえ至難の業
だったのでしょうか?
私は毎日、毎日、新しい
映画を消化することにばかりの毎日です。
「メッセージ」も2度目に見て、1度目よりは少しだけ近づいた気がしましたが、まだまだ最初の一合目でした。
CBさんのレビューそしてカミツレさんのレビューを自分なりに
読み込んで、もっともっと深いんだー、
と、教えて下さり本当にありがとうございます。
原作も読んでみます。
CBさん コメントありがとうございます。自分一人であれこれ考えていても辿り着けない(あるいは出会えない)ようなことが、レビューやコメント、人とのコミュニケーションからインスピレーションを得て、原作を楽しみながら読むことも出来て、そして本作への理解も深まって、と素晴らしい体験をされましたね。カミレツさんのレビュー&コメント欄を紹介して頂けて感謝しております。大変勉強になりましたし、想像力と表現力に感動しました。
SFの面白さは、新しい概念の発見あるいは閃きや覚醒など、自分の中での未知との遭遇が醍醐味なんだなあと、あらためて思いました。
CBさん、コメントありがとうございます。
レビューやコメントを読んてみると、皆さんすごいですね。
で、我々には映画や書籍や歴史の勉強という非線形な日常が存在するので、時系列にとらわれずに一つ一つを楽しむことができます!
いや〜映画って本当に面白いですね🎦
琥珀さん(グレシャムさん)とカミツレさんのレビュー及びコメントが圧巻で、コメントも出来ずただ眺めていた程でした。私も遅ればせながら 是非原作を読もうと思います。
おはようございます。
↓6/25公開予定です。
>「愚行録」「蜜蜂と遠雷」の石川慶監督が、SF作家ケン・リュウの短編小説「円弧(アーク)」を芳根京子主演で映画化。
コメントありがとうございました。
テッド・チャンの話なので、こちらに戻って参りました。
「理解」の映画、新人類同士の戦いになりそうな気がしますが、絶対見ようと思います。
SFはあまり読んでなかったのですが、テッド・チャンは出会えて良かったです。
同じ中国系のアメリカ人だっけか、ケン・リュウも芳根京子主演で映画化されてるので、読んでみたいです。
CBさん、コメントいただきありがとうございました♪
(返信が大変遅くなってしまい、本当にごめんなさい!(>_<))
また、レビュー本文にも名前を出してくださり、とてもうれしかったです。
>なるほど、SFって、結論やネタを知ったからといって、つまらなくなるものではなかったんだ。かえって、ワクワク感が増してるよ!
まさにおっしゃる通りです!
原作小説を紹介した方からこのようなお言葉をいただけるなんて、歓喜の極致! レビューを書いて本当によかったと思いました(;_:)
優れたSF作品の場合、アイデアや結末の面白さだけでなく、その過程の説明のエレガントさやダイナミックさを味わうという楽しみ方もあると思っています。だから、面白い作品は何度読み返しても面白いんですよね♪
CBさんがその面白さを実際に体験していただけたのであれば、これ以上の喜びはありません。SFファン冥利に尽きます。
うれしいコメントをくださり、本当にありがとございました(*^―^*)