「秀作!だけど、だけど...」メッセージ 独りよがりさんの映画レビュー(感想・評価)
秀作!だけど、だけど...
突然、全世界12箇所に現れた異世界からの訪問者と、どうコミュニケーションするかというお話し。そこに女性言語学者が登場し、心象風景と現実がオーバーラップしながら、物語は進んでいきます。
この間のパッセンジャーもそうだったけれど、ここ何年か、SFの見応えのある映画が続いている。インターステラとかオデッセイとか。その前はゼログラビティだったか。もう一度、科学とか宇宙とかそうした理科系的な世界への回帰なのかなぁと感じてた中に、映画宣伝読む限りは、これはもろに哲学的な物語になるのか、21世紀の2001年宇宙の旅的な話しになるのかと期待して見に行った作品がこれでした。
うん、期待は裏切らなかった。インターステラみたいな映像で誤魔化すこともなく、女性の内面と異世界とのコミュニケーションの進展をテンポよく描いていく。新たな宇宙人の具現化が面白い。その大きさや従来のスタイルとは全く異なる宇宙人に対して、主人公と一緒になって親近感を覚えてしまう。共通の認識を持たない世界同士がどうやって意思疎通していくのか、そのプロセスをそれなりにきちんと描いていて、段々その成果が見えてくる様子も緊張感溢れていた。
そして、ラストへの展開。主人公は宇宙人からあるメッセージをもらうことになるわけだが、いくらネタバレ可能とはいえ、ここでは言えない。こんなメッセージもらって、この人のこれからの運命はどうかるのか、必ずしも幸福とは言い難いだろうと映画見終わった直後は少し哀しくなった。
しかし、しばらく心のモヤモヤ感を意外に気持ちよく感じていたけれど、その次に感じた思いは、あれっ、これって映画的記述に騙されてるよなぁ、ということ。宇宙もの2001年風の哲学見にきたつもりでさっきまでそう思っていたのが、これは最初から騙されていたことにようやく気付いた。SFを題材にした、シャラマン風の叙述トリック映画だったんだと。シックスセンスを思い出させてくれて、あーっ、私の大好きなSF宇宙哲学への思いがどこかに消えてしまいそうになりました。
おかげで、もっとモヤモヤ。騙された悔しさと一方でのその心地よさ、でもSFとしての出来具合も優れているから、基本文句はないんだけど、初めての組み合わせだからなのか、宇宙SFと叙述トリックの掛け合わせに少し拒否反応起こしてる。
でも、そうした最後のモヤモヤ超えて見えてきたのは、映画全体に流れる、主人公が女性ならではの、優しさと包容力みたいな感覚。もっと、優しくなろうよと隣人に訴えかける感覚。全てを知った上でその運命を引き受ける強さも含めて、やっぱり、これは秀作かなぁとは思います。
ただね。またもや、中国出てきて、おっ今回は悪者かと思ったら、最後は善人になりやがってと言うストーリーは、昨今の市場規模、見るとしょーがないかもしれない。てなこと考えると、ある面この映画は計算され尽くした物語なのかもとも思う。ヒット要素かき集めて、うまく原作を引っ掛けて、上手に捏ねると出来上がり的な。君の名は、かよ!とも思ったり。
しかしながら、私にこんなところまで書かせるのは、この作品に力があったからなのは間違いない。一人一人にいろいろ考えさせる力があって、まるで、映画の中の宇宙人からのメッセージみたいな感じかな。受け取ったら考えざるを得ないメッセージ。そこから何を得るかは、本人の努力次第だけど。
ちなみに、宇宙もの映画見ると、宇宙物理系の本が読みたくなるが、これはやはり原作読みたくなった。宇宙哲学的アプローチのおかげですね。シャルマンだけだとこうはいかないからなぁ。一度で2度美味しいと言うことか、結局。