「重厚かつ素晴らしい人間ドラマだ。」沈黙 サイレンス 岡崎仁さんの映画レビュー(感想・評価)
重厚かつ素晴らしい人間ドラマだ。
17世紀初め、棄教したと言われる師に会うため、日本に渡った2人の若い神父の、過酷な運命を描く歴史ドラマ。原作は遠藤周作の小説『沈黙』。監督はマーティン・スコセッシ。
壮大なスケールで、宗教弾圧、心の信仰、裏切り、死と救済というテーマを、静謐なトーンで描き切っている。迫害、拷問、処刑シーンなど残酷な描写があり、日本ではPG12、アメリカではR指定となった。
いわゆる娯楽映画とは無縁の描写であり、煽情的な高ぶりや大きな抑揚があるわけではなく、極めて抑制的に描かれた作品だ。長い上映時間の中で(約160分)、信仰と救済という題材に、真正面から向き合った大作だ。
残酷な映画だが、映画的な美しさに満ちており、信仰や命とは何かを、真摯な姿勢で、見るものに重く問いかける。観客自身も問われることになる、重厚で素晴らしい人間ドラマだといえる。
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