「人間は諦めないし救いはある」沈黙 サイレンス ころころりんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間は諦めないし救いはある
残酷な映画、というのが率直な感想です。
キリシタンがまるでごみのように拷問されていく様は
人間が無価値なものと錯覚してしまいます。
あの時代、人は秩序の為にしか存在しなかったのかと
百姓の生きる意味は幕府にとって
年貢を吸い上げる虫程度の意味しか持たなかったのかと
知識として知ってはいたものの
映像を前に絶望感と無力感に苛まれました。
その中でパードレを迎えるとき礼拝を行うときの
モキチやお爺が頬の緩んだ明るい笑顔が
印象的でした。
キリスト教を知らずにいたらこの人たちは一生
笑うことを知らずに寿命を全うしたのかもしれません。
またイッセイ尾形演じるイノウエが
パードレに棄教を迫るあの巧妙な話術は
詐欺師のようでありやくざのようであり魔王のようでもあり
圧巻でした。
あの映画の中で正しかったと思えるのは
ロドリコ神父です。
形だけ、表面上神を棄てても
神を口に出来なくても
神を裏切るような行為に及んでも、
洗礼できなくても告解できなくても
礼拝が出来なくても
キリスト教の教えである
腹を立ててはならない
姦淫してはならない
復讐してはならない
離婚してはならない
敵を愛しなさい
などの諸々のキリスト教義を守って
生活されたのではないでしょうか。
その姿を妻が息子が周囲の人が見ることは
それだけで布教になったのではないでしょうか。
だからこそ最後にあんな救いがあったのだと思います。
どれだけ迫害されても自分の大切なものを捨ててさえ
何としても生きようとすることが正しい生き方なのだと
思わずにはいられない映画でした。
映画を見終わってから頭の整理が出来ずにいたら
隣の席のピンクのニット帽を被った
年配の女性に素敵な笑顔で
映画どうだった?
と聞いてくれて簡単な感想を言えて
頭がクリアになりました。
女性は
これから色々考えてね、と言って映画館を出ました。
何だか神様はいるかもしれないと思いました。
どのようにも解釈できる奥の深い映画でした。
久々に生きる意味を考える機会が持てました。