「すばらしい!!元気な時に鑑賞を。」沈黙 サイレンス tundokuさんの映画レビュー(感想・評価)
すばらしい!!元気な時に鑑賞を。
始めに、ネタバレから。
「信仰に対する揺らぎとその克服」がテーマの映画です。「沈黙」そのものがテーマでは無く、神の沈黙に直面しながら、それでも神が常に側にいることを発見することがテーマです。
豪華キャストが映画の世界に入っていくことを助けてくれます。例えば、井上筑後守は、小説でも特異な性格の人物であることは分かるのですが、明確なイメージを持つのは難しいと思います。しかし、映画ではイッセー尾形が、大胆に一つの人物像(屈折した面も含めて)を示してくれます。浅野忠信が、職務に忠実な武士のイメージを具現化してくれます。
さらに、日本の汎神論的土壌、武士社会の形式主義なども、サブテーマとして描写されていて、今日の日本を世界と比べて理解する助けになると思います。
『深い河』も合わせて読むことをおすすめします。「(自分が神を捨てても)、神は自分を見捨てない」という遠藤周作の信念がより理解できます。
一点だけ残念なのは、自然の美しさの描写が無かったことです。農民の日々の喜びも描かれていません。前半、農村が舞台の間、貧しさの中での信仰と迫害への抵抗が描かれている全てという感じ。原作に忠実ということかもしれませんが、映画なので、五島や平戸の自然の美しさなども盛り込めたのではと思います。
とはいえ、「神はいるのか」という疑問を持つことがある方には絶対おすすめの映画です。
「自分は信仰を持っていないから、理解不能の映画では?」と疑問を持つ向きもあるかもしれません。しかし、この時代のこの地域の農民が、イエズス会の宣教師達に触発され、改宗していった理由も理解できるように配慮されています。始めに信仰ありきの映画ではありません。貧しい農民が、半ば誤解したまま、キリスト教による救済を信じた背景が客観的に描かれています。終盤の仏教寺院のシーンなどは、庶民の生活から切り離された静寂の空間として描かれており、こんな世の中だったら、新しい宗教に救いを求めるかもしれないと理解できました。
3時間近い映画ですし、内容の重さを考えると、元気な時の鑑賞を。