「.」ドント・ブリーズ 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。(共同)製作・脚本を兼ねるF.アルバレス監督と(共同)製作のS.ライミが、リメイク版『死霊のはらわた('13・“ロッキー”のJ.レヴィも“ミア”で出ていた)』以来、再び組んだ一作。ストーリー自体に目新しさは無いが、ひたすら心拍数が上がる超常現象が出ない犯罪スリラー。俯瞰を多用したあっさり目の冒頭が後半に繋がる。細かい描写の綻びや設定・展開の矛盾は多々存在するが、それらがさほど気にならない程、張り詰めた臨場感ある場面が持続するので、作品に身を任せた方が愉しめる。続篇が現在製作中。75/100点。
・無駄な描写が殆ど見当たらない程、あれよあれよと次々に緊迫したシーンが繰り返される。本作の予算は1,000万ドル未満と云われているが、公開から2ヶ月で1億4,000万ドル以上の収益を上げたとされている。
・ただ違和感を憶える箇所として、S.ラングの“盲目の老人”のシャツにあった血痕の様な染みが中盤以降、消えてしまうし、締め切った筈の屋敷に犬が自由に出入りしたりもする。更に後半車を襲うシーンではドアガラスへの涎等の跡や赤いデイバッグの位置がシーン毎に全く違っており、このシーンでのJ.レヴィの“ロッキー”のズボンにはハサミで開けられた筈の穴が無くなっていたりする。他にもノリやイキオイでは誤魔化しきれない明らかな矛盾点や詰めの甘い描写は枚挙に暇が無い程散見出来、完成度を下げるこれらが大きなマイナス点。
・タトゥーでも触れられたテントウムシのエピソードから別のラストを想像したが、当初は警察が踏み込んだ後も発見されす、囚われた儘となる別のエンディングであったと云う──ただこのバッド・エンドでは救いが無さ過ぎると変更されたらしい。その際のワーキング・タイトルは"A Man in the Dark"であった。
・幕開けのとは裏腹のしっかりしたタイトルコールがラストにあり、エンディングからテロップが重なる描写は、有り勝ち乍ら『パニック・ルーム('02)』のオープニングを彷彿した。ラストには、友人として"Pablito Blois"へ献辞が捧げられている。
・“盲目の老人”役のS.ラングは、僅か13行の科白しかなく、終始視力を制限したコンタクト・レンズにて撮影に挑んだ。暗闇で侵入者を追いかけ回すシーンでは、“ロッキー”のJ.レヴィと“アレックス”のD.ミネット(ちなみにこの二人は12月29日と同じ誕生日である)も瞳が大きく見え、視力が制限されるコンタクトレンズを着用していたらしい。
・上述のF.アルバレス監督、(共同)製作のS.ライミ、“ロッキー”役のJ.レヴィの他に(共同)製作のR.タパート、(共同)脚本のR.サヤゲス、音楽のR.バニョスとリメイク版『死霊のはらわた('13)』の主要スタッフ・キャストが再集結した形となっている。
・製作陣は幾つかの作品に敬意を表しているが、中でもS.キング原作の『クジョー('83)』とオスカーを受賞した『羊たちの沈黙('90)』の二本に大きな影響を受けたとされる。
・監督曰くウルグアイのモンテビデオで育った事により着想を得たとされているが、本作の大まかなプロットは『ブル~ス一家は大暴走!('03~'06・'13)』の一エピソードで、第1シーズン第17話『正義は盲目なり "Justice Is Blind('04・J.チャンドラセカール監督)"』にそっくりである。
・鑑賞日:2016年12月25日(日)