劇場公開日 2017年5月27日

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「安定の面白さ」家族はつらいよ2 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5安定の面白さ

2017年6月6日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

 前作の「家族はつらいよ」と、その前の「東京家族」も、ルーツは小津安次郎監督の「東京物語」にある。
 「東京物語」も「東京家族」も家族のありようをテーマにした意外に重い作品で、考えさせられるところが多かった。「東京家族」では、妻を亡くして独り暮らしになった父を兄弟夫婦の誰が引き取るのかが問題となる。父への愛情も感謝の気持ちもあるが、老人の我儘に対する嫌悪もある。引き取るとなればそれなりの経済的負担もある。かといって引き取らなければ、引き取らなかった負い目や罪悪感が生じる。兄弟たちも悩むが、父も悩む。

 本作品は、そういった重苦しさを笑い飛ばす意図で作られたと思われる。西村雅彦の行動を中心に、映画の至る所に笑いのシーンが散らばっていて、映画館ではたびたび笑い声が上がっていた。笑いの中心的な構図は、既存の権威を虚仮にするものだ。警官が死体を見て動転したり、会社人間の長男が非常識な失敗をするのを笑う。
 笑いの構造が明らかになるにつれ、これは単なる喜劇ではないぞと思い直して見ていると、橋爪功演じる家長の平山周造が、同級生について思いの丈を述べる。ネタバレになるので明かせないが、聞いている家族の誰もが息をのむ名台詞だ。

 周造が言いたいことは平易な表現で、誰もが理解できる。庶民は世の役に立ち、家族の役に立ち、できれば自分も幸せな思いができるように懸命に生きている。名もない平凡な生き方だが、そういう生き方は世の中から肯定されなければならない。そう、断じて否定されてはならないのだ。

 山田洋次監督の庶民への愛がひしひしと伝わる愛すべき作品である。

耶馬英彦