「【”死ぬまで生きるさ!” 死の香りが濃厚に漂う都会の中で、必死に生きる人々へ”生”の大切さを伝える作品。”頑張り過ぎない程度に、頑張れ!”】」映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”死ぬまで生きるさ!” 死の香りが濃厚に漂う都会の中で、必死に生きる人々へ”生”の大切さを伝える作品。”頑張り過ぎない程度に、頑張れ!”】
ー 死の香りが濃厚に漂う映画である。
それは、
”同僚の突然の死”であったり、
”人身事故による、列車の遅延”であったり、
”独居老人の孤独死”であったり・・。-
・美香(石橋静河)は昼は看護師、夜はガールズバーで働く。諦観した風合を漂わせる女性。
ー その理由は、後半劇中で語られる。-
・慎二(池松壮亮)は東京オリンピックに向け、活況を呈する建築業界の曾孫受けの会社で日雇い労働者。
目に問題を抱えながら、トモユキ(松田龍平)、イワシタ(田中哲司)、フィリピンからお金を稼ぎに来たアンドレスら、と働く日々。
■印象的なシーン
・”ウルサイ!が口癖だったトモユキはある日、突然脳梗塞で亡くなる。手配師らしき男はお金を香典袋にも入れずに出し ”現場で死ぬな・・”。
ー 人間を、労働する道具としか見ていない、愚劣な輩である。-
・スマホを見ながら、俯いて歩く通勤する人々の姿。
・慎二が時折差し入れをしていた隣人の老人の死。死後2週間で発見される・・。
・やや年配のイワシタが腰を痛めながらも、現場をハシゴするシーン。だが、年齢的に厳しいのだろう・・。
ー 田中哲司さんが、日雇い労働者の悲哀をコミカル感も交えながら、好演している。-
・路上で、”頑張れ!”と言うフレーズが何度も出てくる歌をうたう女性のストリートミュージシャン。美香は慎二に”あの人、売れないよ・・”と呟く。
だが・・・。
ー ラストに近いあるシーンで彼女のギターを抱える大きな絵が描かれたトラックが美香と慎二の前を走り抜けるシーン。二人の驚きと、嬉しそうな表情。ー
・正社員のアンドレスがある日、会社を辞めると言った後の言葉。
”ここは、人間が働く場所じゃない・・”
・慎二が美香を夜、自転車の荷台に乗せて走るシーン。彼が美香に掛ける言葉。
・美香が慎二と暮らすことを決意した後に話す言葉。
”募金しよう・・。”
”朝はおはよう、と言おう。”
”ご飯を食べる時は頂きますと言おう、そういう事だよね・・。”
<辛い日々が続くけれど、信念を共有した慎二と美香の前には”新しい世界”が広がっている・・。
雇用問題の過酷な現状を絡ませながら、大都会で暮らす人々へのエールを感じさせる作品である。>
■蛇足
・今作で、キネマ旬報の新人女優賞を取った石橋さんは、当時”石井裕也監督さんからは毎日叱られて、共演の池松壮亮さんは常に隣で”大丈夫だ。負けるな”と言って下さいました・・。”とコメントしていた。
この映画を作った人たちも皆、頑張っていたのだ・・。