「半身とか片割れとか」映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
半身とか片割れとか
好きな人は好きなのだろうなあと思う。
かくゆう俺も嫌いではない。
後半になり、物語の帰結を予想する事にはなるのだが、それをどおいう形で見せてくれるのかと期待する。
物語に起承転結があるとして、この作品の98%が起承であり、2%が結。
たった一言の台詞が転であったような気がした。
冒頭から主人公の心象が語られ、1人なのに1人になれない東京という街が映し出される。
雑音や人の声が、耳障りで、その心の内が投影され続ける。
物語の半分以上を使って、この「孤独」という状況とシステムが繰り返し、しつこいくらい語られる。
シンジは恐らく、自らその不自然なレースから身を引いた人なのだと思う。
諦めたわけじゃなく、なんだか馬鹿馬鹿しくなったのではないだろうか?
彼の台詞の端々には、人が人であるための定義のようなものが見え隠れする。
いわゆる、上映時間の大部分をかけて東京という狂気じみた街で暮らす事の葛藤とか懇願とか寂しさが語られる。
すこぶる陰気な作りなわけだ。
だけど、
これはやはり見る人にもよるのだけれど、俺はシンジの台詞に胸打たれた。
「半分しか見えない目で産まれてきた事を、初めて嬉しく思った。」
きっとこの台詞は、
「その半分を埋めてくれる、共有できるあなたに会えたから」
って事なのだと思う。
東京での濁流に流され、色んなとこにぶつかって、水底に押し付けられる事があったとしても、違う支流に流れこみ、迷って惑って、他の石とぶつかりあった挙句でも、安息できる場所がある。
それは誰しもに用意されてる。
今はまだ見当たらなくても大丈夫。
いつか貴方の前に現れるから、頑張ろう!
今を生きよう!
そう言われているような気がした。
不器用な女性を、不器用すぎる程、不器用に演じてたのか、元々の素なのかは知らんが、髪飾りをつけながら悪態をつく彼女を素敵だと思った。
変な話…
あの飛行船は飛行船じゃないと思う。
東京で飛行船があんな風に飛んでるの見た事ないし。今ある景色に目を向けたという事じゃないかと思う。
4分割される画面は、表面上の連帯感の表現かも。あの4人の中にもしっかりとある格差や壁という事を暗に映したのかもしれない。
いづれにせよ、
今、あなたは何と向き合ってるのですか?と問いかけられてるようである。