「福田作品の中では一番面白くない」斉木楠雄のΨ難 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)
福田作品の中では一番面白くない
福田雄一の監督作品は、ドラマで『勇者ヨシヒコ』シリーズや『アオイホノオ』『コドモ警察』『宇宙の仕事』『スーパーサラリーマン左江内氏』を観ているし、映画も映画館で『HK 変態仮面』『俺はまだ本気出してないだけ』『女子ーズ』『明烏』『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』『銀魂』を観ているし、配信サービスで『コドモ警察』の劇場版を観ているので、それなりに観ているとは思うが、今まで観た中では本作が一番面白くなかった。
筆者は福田の演出方法の特色を俳優の演技力に期待しないことだと勝手に解釈しているが、本作では役柄上どうしても表題役を演じた山崎賢人の独り語りが多くなってしまう。
そのため自然と役者の演技に頼る部分が大きくなり福田作品としてはバランスが悪いように感じる。
福田が熱望したように山崎自身の見た目は斉木楠雄に合っているように思うが、山崎の演技力が高いわけではないのでイマイチ入り込めない。
それと灰呂杵志を演じた笠原秀幸の演技が全力すぎるせいなのか、ケツ出しシーンが2回あるにもかかわらず全く笑えなかった。
燃堂力役の新井浩文も外見は原作漫画やアニメそのものだが、「おっふ」も含めてそこまで面白くなかった。
海藤瞬を演じた吉沢亮の演技にも何か違和感を感じてしまった。
『銀魂』で力いっぱい花をほじる仕草を披露した橋本環奈も福田作品は本作で2作品目なので、さらに羽目を外す演技を心がけていたように見えた。
ムロツヨシ、佐藤二朗の2人は福田作品のいつもの顔ぶれだし、福田作品の常連になりつつある賀来賢人も安定のわざとらしさを発揮している。
ムロツヨシは小泉孝太郎と大の仲良しで、小泉純一郎元総理大臣や弟の衆議院議員の進次郎も交えた4人で毎年新年会を開くほどだというが、進次郎のTwitterで「喜劇役者のムロツヨシさん」と紹介されているのには笑ってしまった。
とういうことは、小泉元総理も本作を観たりするのだろうか?
以前ムロツヨシは福田から「役作りしてんじゃねえ」と言われて以来福田作品では役作りをしないらしく、まさにそのフットワークの軽さが福田作品の生命線だと思うのだが、本作ではそれが感じられない。
橋本演じる照橋心美の妄想の再現における山崎の演技には大いに笑ったが、物語全体となるとそれほど笑えない。
わざとらしい大袈裟な演技自体は福田作品の特徴の1つだから問題ないはずである。
あまり福田作品に慣れてない出演者たちが少し張り切り過ぎたのだろうか?
原作漫画を読んだことがなく、アニメも数える程しか観たことがないので実写との違いもよくわからない。
まあでも福田作品だから原因を究明しても意味がない。
今回は面白くなかったから、次!次!
次回作に期待しようと思う。
なお学園祭がループしてまた始まる設定は押井守監督作品の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を意識しているようにも感じられた。
本作の裏話で笑ったのが、佐藤二朗の撮影におけるエピソードである。
2時間かけて撮影場所に行ったのに撮影時間が5分で終わったため、普段から福田作品の現場は「仕事ではなく遊び」と言っているが、今回は「ドライブ」であり本格的な遊びだったと述べている。
ただ5分間割と近い距離でずっと橋本環奈を観光できたから満足なんだとか。
ん〜、もう少し佐藤の出演時間が多かったら面白くなったのかもしれない。