「かなりイラつくけれど…まぁ恋愛なんてこんなもの。」ナラタージュ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
かなりイラつくけれど…まぁ恋愛なんてこんなもの。
松本潤と有村架純の濡れ場を始めとした、教師と元生徒の禁断のラブストーリーに注目が集まるが、たいしたことない。リアルに、"水で濡れる"だけ。ついでに坂口健太郎と架純ちゃんのベッドシーンも、程度は言わずもがな。少年少女の妄想にはちょうどいい。
むしろ、ラブストーリーの行定勲監督作品として見たほうがいい。よくもまぁ、こんなに何にもない片想いプロットを150分もの長尺に仕立てたものである。
これでダラけないのは、行定監督の繊細な叙情手腕とも言えるし、ヒロインが有村架純だから持ったとも言えるが、延々と続く叶わない恋愛模様に、かなりイラ立つ。とはいえ恋愛なんてこんなもの。当事者にはどうすることもできない、切なさ。
とにかく"男(友人)→女(生徒)→男(教師)→女(別居中の妻)"、完全な一方通行なのである。音楽もない静寂のなかで、セリフだけで構成される間(ま)の長いシーンが続き、恋愛に一途な人間の愚かさや嫉妬深さを、冷静に客観視してしまう・・・。
そもそもタイトルの「ナラタージュ」(narratage)は、映画用語である。回想シーンによく見られる技法で、過去の映像に乗せた本人の語りによって物語が進行していく。ナレーション(narration)とモンタージュ(montage)の合成語である。まさに本作は社会人になった泉が、大学時代の恋愛を振り返るというもの。
また、劇中にモチーフとなる映画がいくつか出てくる。
ヴィクトル・エリセ監督の「エル・スール」(1985)は、忘れ得ぬ恋人への想いをはせる映画だし、成瀬巳喜男監督の「浮雲」(1955)も、妻と別れられない浮気な男への一途な女の情念が描かれている。
教師・葉山と生徒・泉が、その映画について語ったり、鑑賞したりするわけだが、どれも2人の関係性を象徴する特別な意味を持っている。
女性ボーカルの主題歌も印象的で、曲タイトルも同名の「ナラタージュ」。歌っているのは新人で、17歳の現役女子高生シンガー、adieu(アデュー)である。
RADWIMPSの野田洋二郎による作詞・作曲で、TV-CMでも流れているが、サビがひじょうに耳に残る。野田は、夏にも「東京喰種 トーキョーグール」の主題歌を担当していた(illion名義)が、昨年の「君の名は。」以降、映画音楽のオファーが殺到している。
(2017/10/7 /TOHOシネマズ日本橋/ビスタ)