「フークア監督らしさ満載のエンターテイメント超大作!」マグニフィセント・セブン pippo9さんの映画レビュー(感想・評価)
フークア監督らしさ満載のエンターテイメント超大作!
アントワン・フークア監督作品は今作以外では「ザ・シューター/極大射程」、「エンド・オブ・ホワイトハウス」、「イコライザー」「サウスポー」しか観てないのですが、これらの作品には一貫した共通点があると考えられます。
① 勧善懲悪であること
② バイオレンス描写がハードであること
③ 人生で最も重要な何かが「欠落」してしまった男が、闘いの中でその何かを取り戻す話
私は特に③の共通点がこの監督の作家性の部分であると思います。
過去作の具体例を挙げるならば、
「ザ・シューター」は、
観測手を失い何が正義か見定められなくなってしまったスナイパーが、再びパートナーを見つけ殺すべき敵を正確に殺す話
「イコライザー」は、
生きる意味を失った男が、自身の戦闘能力を駆使して人助けをすることによって、再び自分の生きる意味を取り戻す話
「サウスポー」は、
愛する家族とボクシングチャンピオンの地位を失った男が、再び闘うことによってそれらを取り戻す話
このように「何かが欠落した男」がこの監督の一貫したテーマであり、私の思うフークア映画の旨味の部分でもあるのですが、今作は「荒野の七人」という定番の型を借りて、その型の中にしっかりとフークア印を盛り込んだ濃厚なフークア映画になってました!
冒頭の教会のシーン。ボーグの行う残虐行為をハードな演出で見せることでこの映画での完全なる悪をしっかりと提示し、なおかつ「神の法による秩序」の象徴である教会の鐘が文字通り「欠落」してしまう瞬間にタイトルが出る!
この調子で今作は他にどんな「欠落」がみれるのかなぁ〜、と楽しみにして観てました。
しかし、主人公のサム・チザムさんは常に冷静沈着で過去に何かあった感じには見えません。
「こいつなかなか尻尾出さねぇな」と思いながら観ていると、中盤で娘に何かあったっぽい過去が仄めかされ、「やっぱりな!」と思わずにはいられませんでした。
その他の6人もやはり「何かが欠落した男達」であり、私は特にグッドナイトの中盤の戦闘シーンでの狼狽ぶりが「やばぃ、こいつ、何かが決定的に欠落してる…」と、堪らなくツボに入ったキャラでした。
ストーリーが進むにつれてそれぞれ7人の欠落が徐々に明らかになっていくのですが、少しずつこの7人同士がその欠落を埋め合っていく過程も良かったです。7人の中でも影が薄いと思われそうなレッド・ハーベストも、彼は部族の中では孤立していたけど、初めてインディアンの言葉を使った黒人に出会えたことによって、初めて自分も英語使い、唯一無二の友を得る、というように、しっかりとそれぞれ7人の「欠落」部分、そしてそれを最終的にどう取り戻すのか、というドラマを描けていると思えます。レッド・ハーベスト、あの瞬間のために部族の中で生活している時もこっそりと一人で夜な夜な英語の勉強してたのかなぁ…涙
7人だけでなく、町全体もボーグに立ち向かうことによって失われたものを取り戻していきます。「神の法による秩序」の象徴である教会の鐘が復活したシーンは胸が熱くなりました!
そしてボーグを迎え撃つシーン。唯一サム・チザムさんの「欠落」がまだはっきりと明らかになっていないことにモヤモヤしつつも、入念に準備をした作戦で敵を倒していくシーンはやはり圧巻でした!
戦闘の終盤、ガトリング銃が出てきて、一気に形成逆転。好きになったキャラが次々と死んでいくのは悲しかったけど、グッドナイトとビリーが笑顔で楽しそうに一緒に闘うことが出来たことは嬉しかったし、特にファラデーの最期、彼の闘い方の集大成の様な見事な最期でした。
戦闘が終わり、サム・チザムとボーグの一騎打ちのシーン。ボーグが手下2人だけで町に入るという迂闊さは置いといて、ここまで匂わす程度だった主人公の「欠落」がようやく明らかになり、待ちに待った復讐のシーンを堪能させて頂きました!最後に誰がボーグを殺すのかというところも完璧でした!
この映画のルックスの印象は、大味でド派手なハリウッド映画ですが、このフークア監督の作家性というものこそが、今作がこれまでのフークア映画と同様に普通のアクション映画とは一線を画している部分だと思います。純粋にエンターテイメント映画としても面白いし、しっかりとドラマも描いている、キャストの多様性も現代的にアレンジされており、21世紀のハリウッドの西部劇として申し分ないと思います!この様な映画こそ広く万人が観るべき映画なのではと思いました!