「すべての人類が見るべき不朽の名作」インクレディブル・ファミリー ch229さんの映画レビュー(感想・評価)
すべての人類が見るべき不朽の名作
一見、アメリカンホームコメディとヒーローアクションを合体させただけの大味な娯楽作に見えるが、そうした先入観を持って本作を鑑賞すれば、いい意味で期待を裏切ってくれることになる。
前作に引き続き、リズミカルな痛快コメディでありながら、じわっと涙腺を刺激する不思議な瞬間がある稀有な作品。
映画というのは「よしここで感動させよう」「泣かせよう」という意図を露骨に感じる場面が用意されていることが多く、いわゆる感動巨編と呼ばれるようなものはたいていそのような作りになっている。
大多数の「空気の読める観客」はその場面で素直に気持ちを高揚させ、感動を味わう。
娯楽というのはそういうもの。それが「ある種の映画」に課せられた重要な要素であるし、その瞬間のために決して安くない金と貴重な時間を捧げるのだ。
ただ、そこには誰もがそれぞれに、ここまでは許容範囲だと思えるデッドラインがあるもので、それを踏み越えてしまう演出過剰を感じた瞬間に外連味に変わり、とても見ていられない鬱蒼とした気分になってしまう。
この加減というのは年代や経験、性格などでおおきくデッドラインが変わると思う。
だからこそ演出によるものと感じさせず、自然と湧き上がる感動を与えてくれる、自分がいったいなにに感動したのか、自分でもその瞬間には理解出来ていないような、でもふしぎと一瞬涙がじわっと滲むような、そんな不思議な感動を与えてくれる映画こそが、最も尊い作品なのだと私は思う。
このシリーズの素晴らしさは、まさにそのような種類のナチュラルな感動を与えてくれるところなのである。
なぜあの瞬間、ホロッと来たんだろう?というふしぎな場面がいくつかあり、見終わるまではなにに感動したのかうまく理解できずにいるのだが、少し考えてようやく理解する。
それは彼らがそれぞれの立場でさまざまな悩みや課題を抱え、互いにぶつかり合いときに傷つけ合う、どこにでもいるようなごく普通の家族であり、とても人間らしい存在であること。
そしてそんな家族がピンチに見舞われると、見事に息の合った鮮やかな連携を見せて大活躍するのである。
このギャップの大きさが実に爽快であり、同時にそれは家族としての普遍的で理想的な姿であり、それがしびれるほどにかっこいいのだ。家族ってすげえ!
特殊な能力よりも、その連携プレーの素晴らしさこそが彼らの強さなのだと感じ、そして自分にも家族があることを思い出して心が震えるのである。
そしてこの映画は、最後にちょっとしたエピソードを残して終わるのだが、その姿がまさにこの映画の楽しさ素晴らしさを濃縮したものになっていて、極上のディナーを味わった帰りにおみやげもらっちゃった、みたいなときめきを覚える。
前作ともどもすべての人類に見ていただきたい、不朽の名作である。