「残念」アベンジャーズ エンドゲーム gotta99さんの映画レビュー(感想・評価)
残念
私自身マーベルファンですが、私以外のマーベルファンの皆様には申し訳ないのですが、ひとつの映画作品として見たとき、この映画に高評価をつけることは出来ませんでした。
究極のご都合主義だと感じてしまいました。
大きく分けて理由は3つあります。
◆過去作を全部見ても、説明がつかない箇所が多い
映画外の考察を読み込まないと、本作は理解しづらい脚本でした。
説明過多の映画は好きではありませんが、それにしてもの設定・脚本でした。
この映画を理解するには、相当な瞬発力で【妄想を最大限働かさないといけない】内容で、映画の中にヒントすらないので、本作は映画として成立してないと感じました。
◆タイムトラベルの設定・定義の曖昧さ
この設定ミスが低評価の元凶のひとつだと思います。
本作のタイムトラベルの設定・定義は
過去を変えても未来は変わらない。
過去が変わると違う世界線が生まれる。
です。
違う世界線が生まれることはエイシェント・ワンの憂慮すべき心配事でした。
ブルース・バナーは、新たな世界線を生み出さないように、石は借りた直後にすぐ戻すことを約束して石を借りました。
ここで観客は、「新たな世界線を生みださいこと」「石は必ず返す」ことが絶対的なルールだと思って映画を見ます。
ブルース・バナーとエイシェント・ワンの約束 = 見る側のタイムトラベルのルール
が、その後の脚本は、この約束を守ろうとする芯がまったくなく、新たな世界線をどんどん生み出してしまいます。
・キャップの盾がない世界線
・ペギー・カーターとキャップが結ばれる世界線
・ロキ逃走による世界線
・4次元キューブがない世界線
・サノスがいない世界線
・ムジョルニアがない世界線
・ピム粒子が無くなった(減った)世界線
・その他
まるで、劇中の今を生きる人が幸せならば、他の世界線が不幸になろうが知ったことじゃないと、観客は思ってしまうんです。
ここで観客は混乱するんです。
究極のご都合主義だと思ってしまうんです。
結果、作中で描かれた自己犠牲の精神がくすんでしまうんです。
観客にそう思わせないような脚本が必要でした。
◆サノスは別人 カタルシスがない
作中のサノスは過去から来たサノスです。
前作のサノスは、哲学に近い大儀がありました。
生命の半分を消すことが「平和に繋がる」と信じてました。
カルト的な狂人ではありますが、敵が精神的にも強い(その強大な敵を倒そうとするヒーロー達)ことにカタルシスが生まれて、作品の高評価に繋がりました。
本作の過去から来たサノスは暴力的なだけで、どうやって生きたら前作の哲学(平和のための犠牲は止む無し)に行き着くのか、まったく検討もつかないくらい別人でした。
悪事の動機が違いすぎるんです。
前作のサノスを哲学的にも精神的にも倒すことで、映画としてのカタルシスが生まれるのですが、本作にはそれがありません。
同じ顔した悪党を倒してもなぁ・・・ と思ってしまうんです。
良かった点はいくつかあります。
でもそれは、過去作を見た人へのプレゼント的なもの(断片的なパーツ)で、大きな意味の映画としてのそれではありません。
インフィニティー・ウォーが素晴らしかっただけに残念です。
ほんとにそうですね。
MCUとしてはいいんでしょうけど、その前に映画としてどうなんだって話ですよね。
我々は映画を見ながら、その世界観のパラダイムを理解しようとするわけです。
どうなるべきなのか?どうなったらいけないのか?
そのルールがあるからこそハラハラドキドキわくわくが生まれてくるわけで、それを提示しながら片っ端から破壊しまくる展開に混乱してしまい、さらにあまりそういうことを考えてらっしゃらない純粋なMCUファンの方々のすすり泣く声なんぞ聞こえてきたら、そりゃ冷めてしまいます。
MCUの面白さは、今まで多少の矛盾はありながらも全体を通して流れる緻密な理論理屈による世界観にあったと思います。
少なくともインフィニティ―・ウォーまではMCUすべての作品がここにつながるためにあたといえる作品でした。
それをぶっ壊して何でもアリの世界観をつくっちゃったらねえ・・・。
死んだ人間は戻ってこないと言っておいて、死ぬ前のガモーラ連れてくるんだったら、ピム博士の知恵を借りれば過去からいくらでもとトニーやナターシャをつれて来れちゃうってことですよねえ。
サノスはただの悪人に成り下がってますし・・・。
コメントありがとうございます。
どうやら次の「スパイダーマン」で、世界線の回収を行うようです。※監督が明言
これを聞いてさらに残念に感じました。
エンドゲームと言うからには、ここで一度、本当にエンドゲームにして頂きたかったです。
これではこのシリーズは、次回作の予告の要素が強くなりすぎて、後出しジャンケンのようで、だめな映画作品はいつでも改変、補強できてしまいますし、全体の映画としての緊張感が失われ、全然クリエイティブではないと思ってしまいます。
それから、プレビューには書ききれませんでしたが、本編のキャプテンマーベルの描き方に不満が残ります。
これまでMCUは世界観の共有が上手でしたが、本作のキャプテンマーベルは単独作品がまったく生きていません。
単独作品では「ニックはどこ?」と、世界のことよりニックの安否を心配していました。
その友人思いの気持ちがいつも全面に出るところが彼女の魅力のひとつでした。
しかし本作では彼女は単なる壊し屋。
短くてもいいので、ダンバースとニックの再会シーンを入れるべきでした。