「傑作だが求めていたエンドゲームとは……(ネタバレ感想)」アベンジャーズ エンドゲーム s kさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作だが求めていたエンドゲームとは……(ネタバレ感想)
エンドゲームは今期最高の映画だと思う。
それは、10年共に歩んできた仲間達との最後の別れが待っているからだ。
10年来の友人と、もう会えない。
永遠になると同時に、終演を迎える。
10年共に歩んできた輩なら、そんなの感動しない訳がない。
ただし、本作の様々な描き方は疑問が残る。
ストーリープロットや、個々のキャラクターの描き方。
そして、最後のシーンには、もっと美しい終わり方が出来たのではないかと思う。
これだけの良キャラが揃っているのに、見せ場が成立していないキャラも多く、作中内の理論も破綻している。
不信に思った点と、私が求めたエンドゲームについて書こうと思う。
以下より多分のネタバレを含む為、本作を観ていない方は、読まないようにお願いします。
批判されるのは承知ですが、あえて声を大にして言いたいので。
まずは、不信に思った点。
①時空間理論について
②マイティ・ソーのファンは辛い
③アイアンマンの家族
④キャプテンの最後
⑤ドクター・ストレンジが無能
⑥サノスの描かれ方
⑦キャプテンマーベル不要論
⑧インフィニティストーンの扱われ方
大きな箇所では、この辺り。
①時空間理論について
本作のタイムトラベルは、時間と空間が連続しない為、多少の影響は問題ないと見なされます。ただ、時間と空間が連続しないで分岐するのであれば、最後の年老いたキャプテンが同一時間軸にいるのが謎。
タイムマシン理論をもう少し段階を追って説明するか、説得力のある事を言わないと駄目な感じ。
②マイティ・ソーのファンは辛い
カッコいいソーが見られない。冒頭10分のストームブレイカーを呼び寄せるシーン以外は全部だめ。しかもラストバトルですら弱体化させられたまま挑む事になります。
これはストーンを持っていないサノスとの戦闘バランスを考慮したようにしか思えません。
インフィニティー・ウォーでは、1撃で何十体も倒したのに、今回は1撃で数体しか倒せていない。
ラストバトルで窮地に陥る為に、ソーを弱体化させているようにしか感じません。
次回作が決まっているから、今回はこのままで良いやとすら思える。何だかなぁ。
雷神様なんだから、雷の力で体型くらい戻せよ。
③アイアンマンの家族
これは単純に撮影スケジュールの都合かも知れないので、そこまで不満と言う訳でもないのですが、家族3人揃うシーンがありません。
庭で遊ぶシーンや、寝かしつけるシーンでも、3人が揃うカットがありませんでした。
モーガンとペッパーの仲は、あんまり良くないのかなぁなんて思います。
窓ガラスから覗くペッパーや、家に入ったモーガンを抱き上げるペッパー。妻と娘に軽くからかわれて嫉妬するトニーとか、そういう家族間のやり取りが見たかったなぁと思います。
④キャプテンの最後
年老いたキャプテンが座っている時点で、タイムマシン理論が破綻しているのに加えて、キャプテンの台詞や最後のダンスシーンが蛇足感満載。これについては求めるエンディングにも繋がるので後述します。
⑤ドクター・ストレンジが無能
ダムのように水止めて、人差し指を立てる人と成り下がった最高の魔術師。
止めた水を投げつけて、道を造るくらいしなさいよ。
せめてエボニーと対峙して動けないくらいにしてもらわないと、パワーバランス的に合わない。ギリギリ勝てるけど間に合わないみたいな描かれ方が良かったなぁ。
取り敢えず思ったのが、1400万分の1がこれかよ……いや、それについては全て台無しになっちゃうから何も言えないけど……。
⑥サノスの描かれ方
インフィニティ・ウォーの格好良いサノスは、どこに行ってしまったのか。
ただの倒しやすく分かりやすい悪役と化し、異常な剛腕でBIG3を追い詰める。その金属剣は何で出来てるんですか?
前作は石を持っていたから力の理由があったのに、今回は異常に強い。今までの力関係が分からなくなるくらい無意味に強い(物理)
パワーストーンを使う事でハルクをも押しのけるのがサノスじゃないのか? 常に強者であれば、草の根滅ぼし活動でも問題ないじゃん。
サノス特有の、傍から見たら間違っているとも言える確固たる信念は、過去に自分の星を失いかけた時点で形成されたはずなのに……。格好良いサノスが見たかった……。
⑦キャプテンマーベル不要論
彼女の存在はゲームバランスを著しく崩す。それ程の強キャラ。チートキャラである。
それ故に、彼女は遅れて来るし、大事な場面では間に合わない。間に合わせない。
タイムトラベルの時点で彼女が一緒に居たり、ガントレットが出来た時に彼女が居て、彼女が指を鳴らしていれば、ハルクは負傷せずにラストバトルに参戦出来たのではとすら思う。
単独作の映画は正直、中の上程度の出来なので、キャラの掘り下げが甘い状況になってしまう。
彼女の始まりは分かっても、宇宙で何を忙しくしているのかまでは理解が及ばない。そのため、何で居ないんだよ感がメチャクチャある。
こんな中途半端な扱いで良いのだろうか。いっそ出さなくても良かったのではないか。
大人の事情で出された感しかしない悲しいキャラになってしまった。
⑧インフィニティストーンの扱われ方
揃った時点で指パッチン製造装置になってしまった石達。
それぞれにストーリーや固有能力があったのだから、元の使われ方が見たかった。
揃えたら凄いのは分かるから、それぞれのストーンに分離して、一回でも個々の使い方が見えたらもっと素敵だったかも。
結局、私が見たかったエンドゲームは、
・意思と意思の戦い
・石と石との闘い
・ヒーローの美しい最後
である。
サノスのキャラ性を壊さずに、相反する思想の戦いに出来なかったのが酷く辛い。
また、ガントレットと言う一つの個体扱いの石達ではなく、個別の石としての戦いが見たかった。
個人的な振分けとしては、
ヴィラン側
サノス ガントレット・パワー、リアリティ、スペース
ヒーロー側
ストレンジ・タイム ワンダ・マインド ホークアイ・ソウル
あたりにして、ヴィジョンとナターシャの幻影がラストバトルで一瞬でも出て欲しかった。
まぁ、過去から石を持って来た時点でヴィジョンは難しいかも知れないけど……。
でもワンダの中のヴィジョンくらいなら出せたかも知れないし……。
ストーンを再度集めて世界の半分を戻した衝撃で、石が近郊に散らばり、そのタイミングでサノスが現れ、石の再争奪戦が始まり、ラストバトルへ……見たいな展開が欲しかった。
タイムマシン理論の話として、時空間が同一線上にある考え方で「多少の変化なら戻ります」であるなら、ラストシーンのキャプテンの存在も問題なく受け入れられる。
もしその考え方であるなら、なるべく過去に干渉しないように石を手に入れるべきだろう。
M・I・Pよろしくスパイ映画のように緊張感をもって行動するなら、過去のハワードとの会話シーンや、ペギーを見つめるだけのキャプテンの表情もグッと緊張感や感傷が増すはずなのに……。
中途半端に市民権を得ていない時空間理論は、SF世界観では受け入れ辛い。
ある程度の内容であれば許容出来るが、キャプテン・アメリカ同士の対決際に言った「バッキーは生きている」発言は悪手感が強い。別世界線だからと言って、何でもありは駄目だろう。せめてペギーネタで油断を誘って欲しかった。
そして何よりも不信を抱いたのは、ラストシーンである。
美しい最後を飾ったアイアンマンは伝説になった。これについては何も言う事はない。
しかし、アイアンマンのラストと対象的にキャプテン・アメリカの最後は「ぬるま湯」のようだ。シビルウォーで意志をぶつけ合った二人の最後の描き方に、あまりにも温度差がある。
年老いたスティーブが座っているのも、時空間理論が崩れているように感じるし、バッキーに対して「何で同じ時代に一緒に戻らなかったんだよ」感もある。
戻る事自体に問題はないが、理論を正とするなら同一時間軸に居る事に矛盾を感じる。もし時間軸が同じであるなら、他の箇所を細かく直す必要がある。
個人的には戻るエンディングは好きだ。なので、時間軸同一理論で話が進んだ場合のエンディング改善案を構築してみる。
エンディング改修案
・サム視点。バッキーとキャプテンが、遠くで真剣な顔で話をしている。(バッキーは現代で生きる事を決める描写)
・キャプテン、サムに挨拶。タイムトラベルをする。
・キャプテンが旅立った直後、サムの元に手紙と鍵が届けられる(出来ればスタンリー)
・手紙には、キャプテンが過去に戻り自分の人生を生きたかったと書いてある。
・ペギーとスティーブはもう故人になっており墓に名前が刻まれている。
・手紙の最後には「君に贈り物がある」と書かれ、二人が過ごしたであろう家を訪れる。
・家の中には、生前の二人の写真が少しだけ映る。
・奥の倉庫を開けると、キャプテンの盾が隙間からこぼれる光を反射して輝いていた。
・盾の星に向かってズームアップしてエンドロール
個人的にはこれくらいの方が良かった。
アイアンマンが明確な終わりを迎えたのに、キャプテンは過去に戻った上にまだ生きていて、しかも後継者に言葉を掛けられるなんて、バランスが悪すぎる。
2人とも同じくらいの痛みになって欲しいのに、最後に「スティーブロジャースは幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」のダンスシーンとか、本当に要らない。
ヒーローの最期を見届けるはずなのに、老人になって若いのに託して隠居します感が嫌なのだ。
あまり「死=伝説化」を推奨したい訳ではないが、何よりもバランスが悪い。
結局、引退するアイアンマンとキャプテン・アメリカ 2人の為の映画だったと思う。
だからこそ、2人は同じラインで終わって欲しかった。
エゴもエゴで申し訳ないけれど、キャプテンのラストシーンは、私の目線だと何とももどかしい。何かとても歯がゆい。
ただ、エンドロール前の6人の役者のサインシーンは最高でした。
最終回感半端ないエンディングビジュアルでした。
とまぁ、
好き勝手言って申し訳ございません。
エンドゲームは、MCU10年の重みが全て詰まった傑作です。
こんなに言っていますが、
映画としては、めちゃくちゃ良いです。
特にアイアンマン4としては最高です。
キャプテン・アメリカ4としては中の上。マイティ・ソー4としては下の中。
アベンジャーズの最終回としては、感慨深いものがあります。
次作のスパイダーマンは、エンドゲームに無かったCパートだと思っていますので、次作込みのエンドゲームだとも思っています。
素直にファーフロムホームが楽しみです。
乱文長文 失礼しました。