「最期の後に遺るもの」アベンジャーズ エンドゲーム 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
最期の後に遺るもの
※いつも以上の長文レビュー注意です
遂に遂に、2008年から始動した『アベンジャーズ』が完結!
約10年に渡り制作されたMCU映画の締め括りとなる本作。
前作『~インフィニティ・ウォー』が前代未聞の
結末を迎えたこともあり、世界中から寄せられる
期待度の高さは並の超大作映画の2倍3倍だろうし、
それに応える作品を作らねばという作り手の
プレッシャーたるや大変なものだったろう。
しかし、いやはやまったく、
恐ろしいことに『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、
かなりの部分でその高過ぎる期待を上回っている。
だが一方で、今回はそのプロット(物語の筋運び)に
おいて前作以上に複雑で危険な綱渡りを行ってもいて、
途中バランスが不安定に思える部分も存在している。
……回りくどいのは止めてこう書こうか。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』には、
判定5.0を飛び越えて6.0くらいにまで感じる部分と、
判定2.5~3.0くらいに感じる部分が同居しているのだ。
...
最終的には秀作と考えているので、不満点から片付ける。
中盤までのひねりまくったプロット。
序盤20分でサノス退場という展開は衝撃だったし、
その後の4つの時系列を跨ぐ展開も先読み不能で良い。
『アベンジャーズ』1作目クライマックスの再訪など、
過去のMCU作品を再加熱するアイデアもまさしく
集大成という感じで燃えるし、キャップVSキャップや
エレベータ内戦闘回避、恥ずかしい無音アカペラなど、
笑える場面はかなり多い。
だが逆に今回はユーモアを利かせ過ぎているとも感じる。
確かに笑えるが、ユーモラスなシーンをやり過ぎて
セルフパロディの一歩手前にまでなってる気がするし
他のシーン(ヴォーミア等)の緊張感やエモーション
まで削いでしまっているように感じた。
それにやっぱり……“タイムトラベル”という方法は
反則ギリギリに思えたかな。一筋縄ではいかない
システムということは説明されてるけど……最終的に
ピム博士が戻って、マシン自体も残っているなら、
何度でもタイムトラベル可能になっちゃうんじゃ……。
...
次に、一部キャラクターのバランス。
まずソーはちょっと三枚目が過ぎるかなあ。
あれだけ打ちのめされたんだしビールっ腹(笑)くらい
はしようがないね……とは思ったが、終盤になるまで
泣き言ばかりでなっかなかエンジンがかからず、
ロケット同様に愛想を尽かしかけそうになった。
もう1人はキャプテン・マーベルこと
キャロルのバランスブレイカーっぷり。
敵主要艦を一撃で撃墜したり、サノスに純粋な
腕力で勝ったり、あまりにも強過ぎて何と言うか……
他のヒーロー達の頑張りが霞んでしまうような……。
あとフューリーとの絡みも少しくらい見たかったな。
...
だが、それら不満点を上回る興奮とエモーショナルな
展開が、本作にはある。中盤までは不安定な上昇下降
を繰り返していたが、果たしてクライマックス1時間
の着地は恐ろしく見事だった。
未来すら読み取り、逆襲に対して逆襲をかける
狡猾な敵将サノスと、彼の率いる大軍団。
高潔な心に主従するハンマー・ムジョルニアをキャップ
が操る驚きの展開や、満身創痍のキャップがたった1人
で軍勢に立ち向かう画にも鳥肌が立ったが……そこから
数秒後、思わず歓声を上げたくなるくらいの怒涛の展開!!
「アベンジャーズ・アッセンブル(集結)!」
のキャップの掛け声で始まる世紀の決戦は――
いやいやもう訳分かんないほどに物凄ェ!!
前作のワカンダ戦を上回る数のヒーロー達が一堂に
会し、超科学と超能力と銃弾と魔法の雨あられ!!!
『ロード・オブ・ザ・リング』並みの大戦闘と
同時平行で、MARVELオールスター対サノス軍
精鋭部隊のド派手バトルが展開されるんである。
僕もさんざん超大作映画を観てきたつもりだけど、
この興奮度は本当にヤバいです。ヤバ過ぎです。
ほとんど神話レベルのぶっちぎりの大決戦です。
そしてそこでもサノスさんが強い。石が無くてもまあ強い。
混戦状態で繰り広げられるガントレット争奪リレー戦、
そして最後の決着まで、息する間も忘れるほどの緊張感!
...
物語が最後の決着へ向かうに連れて、
様々なキャラクターのドラマも大きな節目を迎える。
父に脅え、姉を憎み続けたネビュラの改心と、姉との和解。
スコット・ラングと、5年の間孤独だった愛娘との再会。
師と弟子または父子のようなピーターとスタークの抱擁。
優しく気高い母の言葉で遂に復活するオーディンの息子ソー。
野望を断たれ、静かに悲しみの表情を浮かべて消えるサノス。
ナターシャの退場。かつて多くの人を殺め、
“アベンジャーズ”加入まで孤独だった彼女。
シリーズ初めは冷徹な諜報員だったけど、シリーズ
を通して彼女は、曲者だらけのチームをまとめる
優しい人間に成長した。自分を変えた血の繋がらない
家族のために涙し、そして自らを犠牲にするほどに。
そして再び、トニー・スターク。
金持ちで、身勝手で、プライドが高くて、いつも
皮肉と減らず口で人を怒らせ、危険な事には首を
突っ込まないという態度を取るけれど、土壇場に
なると彼はいつも仲間や家族のために勇気を奮った。
『アベンジャーズ』1作目以来、誰よりもサノスの脅威
に怯えていたはずなのに、誰よりも失うものも多かった
はずなのに、彼は最後の決断を少しも躊躇しなかった。
スタークの覚悟がサノスの覚悟を上回ったのだ。
彼の死と、ポッツの悲しみを抑えた笑顔、そして
「3000回愛してる」には涙が止まらなかった。
スターク、ナターシャ、ヴィジョン、ガモーラ……
二度と戻らないメンバー達の死を乗り越えて、新たな
決意を胸に再び歩み出すヒーロー達の姿が静かに熱い。
...
さて……
このまま終わればこのレビューもいくらか簡単だったろう。
超長いレビューになってしまっているが、もう
ひとつ書かなければならないことが残っている。
キャップことスティーブ・ロジャースの選択についてだ。
正直、この結末には物凄く複雑な気分になってしまった。
誰もがタイムトラベルで自分の目的よりも世界を救う
ことを選んだのに、ましてやスタークは自分の妻子
への想いも断ち切ってまで自らを犠牲にしたのに、
スティーブがタイムトラベルで人生を“生き直した”のは
死んだ彼らに対する裏切りのように感じてしまったのだ。
けれど……その選択も有りだったのかな、と今は思っている。
それまで一番己を律して“アベンジャーズ”をまとめて
きたのは彼だったし、最初にヒドラとの対決で自分の
命を捨てて世界を救ったのも彼だった。結局その時に
死ぬことは叶わず、70年近くも氷漬けとなってしまい、
目覚めた時には恋人は年老いて、再会後まもなくして
亡くなってしまう。そんな悲惨な境遇に置かれても、
ずっと彼は身を粉にして世界を救おうとしてきた。
サノスという最大の脅威が消え、束の間の平和が
戻った今しか、スティーブが自らの人生を
見つめ直すタイミングは無かったと思うし、
それに――生き残れたのなら、精一杯幸せに
生きてみせるのも、仲間への弔いなのかも。
...
以上!
中盤の不安定さやキャラクターのバランスといった
不満はあるものの……過去10年の物語を凝縮・大爆発
させたラスト1時間のスペクタクルアクション、
そして等身大の心を抱えたヒーロー達の
最後の選択は忘れ難いものとなった。
少し迷ったが、ええいままよ、4.5判定です。
何事も無限には続かず、いつか最期が来るもの。
アイアンマンとキャプテン・アメリカが支えた
“アベンジャーズ”はこれが最期。だが、彼らの
意志を受け継いだ次世代の物語は続いていく。
次に彼らはどんな物語で魅了してくれるのか?
楽しみだ。
<2019.04.27鑑賞>
.
.
.
.
余談:
スタン・リー先生、長い間お疲れ様でした。
最初にスクリーンで見た時は貴方の顔も名前も
知りませんでしたが、多くのMCU映画を通して
貴方のヒーロー達が伝えてくれたのは――
誰にだってヒーローになるチャンスがある。
どんなに弱い人間でも強いヒーローになれる。
そして、本当に強いヒーローに必要なのは、
スーパーパワーではなく人を慈しむハートなのだ、
そんなことだったような気がします。
超能力でも超科学でも魔法でもなく、ペンと紙だけで、
その想像力だけで、小さな人々に勇気と高潔さを伝え
続けた貴方もまた、偉大なスーパーヒーローでした。
素敵な物語の数々をありがとうございました。
まぁ分かりますよ
私のような外れたことをするような
マイノリティはウザイから失せろってことでしょ?
だから「ブラックパンサー」とか「キャプテンマーベル」とか
貴殿のようにそれを見た観客側は面白ければいいってだけで
結局何も学んでないってことでしたね
これもお読みになったら粛清してくださって結構です
ではでは
ご無沙汰しております。カミツレです。
毎度返信が大変遅くなってしまって、ごめんなさい。ご心配もおかけしてしまったようで、誠に申し訳ないです……。
GW中はしっかりと休むことができて、映画も休みの間に3本観に行くことができました。(『エンドゲーム』『ピカチュウ』『ユーフォニアム』)
きびなごさんもGW中はゆっくりとお休みできたようで何よりです(o^―^o)
ただ、休みが明けてからは相も変わらず怒涛の日々が続いており、映画を観たりレビューを書いたりする時間もなかなか取れないのが現状です。
今後も返信がだいぶ遅くなってしまうことがあると思うのですが、コメントのやりとりは細々とでも続けさせていただけるととてもうれしいです。(わがままを言ってしまって、ごめんなさい。)
『エンドゲーム』のレビュー、順調に伸びているようで安心しました。
なので、もはやジンクスは関係ないだろうということで、こちらにコメントさせていただくことにしました(笑)
『エンドゲーム』は公開初日の夜、仕事帰りにはりきって観に行ったものの、過去作の復習が全然足りていなかったと反省し、現在シリーズ作品を遡って観ているところです。
実は『アイアンマン』も『マイティ・ソー』も『アントマン』もシリーズを1作も観ていないという不勉強っぷりだったので、ちゃんと勉強してから観直せば『エンドゲーム』の印象もだいぶかわるのではないかと思っています。
2度目の鑑賞後に、あらためてきびなごさんと『エンドゲーム』について意見を交流したいなと考えています。いつになるか分かりませんが、その時はどうぞよろしくお願いします!
……と言っているうちに、いよいよ今週末から『キング・オブ・モンスターズ』が公開ですね! うれしいけど、どうしましょう……(^-^;)
地球に戻ったトニーにナターシャが状況を説明しているときに、
消失者リストの中でフューリーを見たときにだけ、
キャロルが少し悲しそうな顔をしてましたよね
いつも無表情な分、逆に目につきました。
長文堪能しました!本作は、単体での評価だと低くなるのも分からないでもないと思いました。ただし『MCU連ドラ第22話』って思ったら、なかなかの出来だと思いませんか?(私だけ⁉︎)
2回目の鑑賞(令和初日‼️)前にとてもナイスなガイドとなりました。ありがとうございます。
そういえば、信念のブレないサノスが、実は懲りない地球のメンバーを倒すのだけは自分の個人的楽しみだった、みたいなこと言ってたような気がしたのですが、違ってたかな^_^🤔