「ただ聖地を目指し巡礼の旅をするだけの、純粋で気高い信仰心。」ラサへの歩き方 祈りの2400km 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ただ聖地を目指し巡礼の旅をするだけの、純粋で気高い信仰心。
先日の『ダライ・ラマ14世』のなかで、初めて五体投地で聖地ポラタ宮への巡礼へ向かう熱心な信者たちを見た。だけどあそこに出てきた信者の行程はたしか3日だった。
こちらはなんと、1年近くもかけて1200km先のラサへと向かう。1200kmって東京福岡の距離。ちなみに四国八十八か所のお遍路も1200kmだそうだ。それをただ歩くのではなく、五体投地をするっていうのだから気が遠のく思いがする。だいたい、1日10kmくらいしか進まないのだから。
途中、多難を極めようが、いたって慌てず騒がず、全てを受け入れていくニマたち一行。トラクターがオカマ掘られようが、相手を責めない。おまけにズルなどせず、荷台を引っ張った後にもう一度五体投地でやり直す。オジサンが亡くなろうが泣きわめくこともなくむしろカイラス山の麓でよかったね、と言う。なんと敬虔な信仰心であろうか。こちらの心が洗われる思いだった。
ラサに着いてからだって、労働を厭わず資金捻出に精を出す。地元の子とちょこっと仲良くなるところは健全な若者らしく、とりわけ禁欲的なわけではないよと言いたげだった。そして当然のように、じゃあカイラス山も行こうというのだが、これがラサからさらに1200kmなのだよ、すごいよまったく。
見た後、さすがに五体投地はしないけど、一度、ポタラ宮をお参りしたいという思いを強くした。おそらく、ポタラ宮に感激をするのはもちろん、ニマたちのような巡礼者を目の当たりにすることで、特別な何かを感じることができるような気がするのだ。
この映画はドキュメンタリーではないが、それに近いくらいのリアルがある。それで、この映画の背景を知りたくてパンフレットを買ってみたが、正解だった。キャスト選びの裏話など必読。