「ココロネひとつで伝わらない物語もある」ひるね姫 知らないワタシの物語 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ココロネひとつで伝わらない物語もある
細田守や昨年の新海誠に続けとばかりに、今年は気鋭のアニメ監督のオリジナル作が続く。
その先陣を切るのは、「攻殻機動隊S.A.C.」「東のエデン」などで知られる神山健治監督。
正直、この監督の作品をほとんど見た事なく、それでも印象としてはSFアニメの監督。
意外にも今作は、現代が舞台(東京オリンピック間近の2020年)。
が、至る所にこの監督印であろうSF要素が散りばめられている。
必須アイテムであるタブレットや顔に装着するアレ(何て言ったらいいか分からん)。
現代的であり、ほんの数年だけ近未来的。
とりわけ、もう一つの舞台である夢世界はビジュアルのオンパレード。
機械産業が盛なとある王国。
ちょっと古い時代を感じさせつつ、近未来な世界観。
その王国を襲う“オニ”。
それと対する巨大ロボット。
バトル・シーンはSFロボット・アニメの醍醐味充分。
魔法のタブレットや、車がトランスフォームした青いベイマックスみたいな“ハーツ”など、メカニック描写は凝っている。
話の方は…
幼い頃に母親を亡くし、岡山で小さな自動車整備工を営む父と二人暮らしの高校3年生のココネ。
ある時突然父が逮捕された事をきっかけに、知らなかった家族の秘密を知る…。
要は、死んだ母は実は超一流自動車会社の娘で、会長である父の跡を継ぐつもりでいたが、ヤンキーと駆け落ち結婚。絶縁。
母は生前画期的な無人自動車プログラムを開発していて、野心家な役人が狙う。
それに、ココネと父が巻き込まれ…というもの。
言ってしまえば、何て事の無い家族の秘密とある企業のゴタゴタ。
それを、ココネの現実社会とココネが見る夢世界をリンクさせて描いただけの事。
昨年から続く空前のアニメ・ブームの中、神山監督が贈るオリジナル作。ファンなら見逃せないだろう。
確かにそれなりには面白かった。が、昨年の記憶と記録に残るアニメ映画群ほどかと言うと…。
賛否両論、200スクリーン以上の大規模公開ながら初登場9位。100スクリーンほどの中規模公開の方が良かったんではないかと思う。
それに、もし昨年公開されてても、あまりヒットしてなかったとも思う。
ちょっと何を描きたかったのか分からなくもないが、本作の特筆点である現実と夢の交錯が、長所ともなり欠点のようにも感じられた。
ココネが最近よく見る夢が次第に現実社会とリンクしていって…という構成はユニーク。
夢世界はアニメならではのイマジネーションあるファンタジー。
が、それが時々現実社会の展開を邪魔している。
現実社会で劇的な展開になると、決まって夢世界となり、本音言うと、現実社会でどうなったか見たいのに…。
つまりそれは、現実社会の重要場面で、ココネが寝てるって事…? 何と緊張感の無い主人公…。
他にも、強引な点やツッコミな点もあったり。
策士、夢に溺れる…とでも言うべきか。
寝ないと話が進まないので主人公でありながらよく寝るココネ。
起きてる時は快活なミニスカ娘。
でも、これと言って何もしてない気が…。
高畑充希の声と岡山弁と歌は聞いていて心地よい。
監督が娘に見せたい思いで作ったという本作。
色々意味やメッセージは込められている。
娘の年齢にもよるけど…
まだ幼かったら、それこそ昼寝しちゃうと思う。