ネオン・デーモンのレビュー・感想・評価
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美しいは、恐ろしい
若さと美貌を兼ね備えた少女がファッションモデルの世界に足を踏み入れる。が、そこは…。
ファッションモデル業界版「ブラック・スワン」と言った趣向のサイコ・スリラー。
きらびやかで華やかなのは表面上だけ。その実態は…
異常なまでの美への執着心、嫉妬、欲望…。
自分がトップになる為なら、周りのライバルなど。
愛憎渦巻く女たちの地獄絵図のような激しい争い。
題材的には特別目新しいものでもないかもしれない。ひょっとしたら以前にも似たような作品があったかもしれない。
しかし、鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンが鮮烈なビジュアルで見せる。
明暗交錯する映像、インパクト抜群の音楽が幻想的な雰囲気を創る。
特に音楽は映像にマッチし、非常に耳に残る。
監督十八番のバイオレンス描写は全体的には抑え目だが、要所要所で強烈。
ラストの“アレ”はバイオレンスと言うより、エグい。
官能描写と言うより、ある“人物”へのキスや愛撫はもはや変態。
主人公のジェシーは確かに無垢な女の子だ。
が、ステージ・ディレクターから「トリは君だ」と言われた時、ほくそ笑む。
他にも彼女の野心が垣間見え、徐々に浮き彫りになっていく。
彼女の美は周囲をも狂わせる。
メイクのルビーはジェシーの美の虜になるが、拒絶され、その仕返し…。
モデルの世界なので美人ばかり。
しかし、美しければ美しいほど、メイクなどで美を追い求めるほど、おぞましい。
ファーストカットシーンがすでに作品を物語っていた。
美しいは、恐ろしい。
キュートで清純な魅力のエル・ファニングの体当たり熱演は見事。でも、ヌードだけは見せられなかった(>_<)
ジェナ・マローンの狂演が印象に残る。
キアヌ・リーヴスは僅かしか出ないが、粗暴な役柄もなかなか。
凡人
半自伝的アート
『Drive』のN.W.レフン監督の最新作。
ポスターの美しさに惹かれ、数ヶ月前に鑑賞したが、未だにその衝撃が想起されることがあり、ここ1, 2年の映画の中では明らかに異彩を放っているものの1つ。
ストーリーは、まるで『ブラック・スワン』である。しかし、ブラック・スワンが白黒を基調とした、ややクラシカルなイメージがあるのに対し、本作では終始色とりどりで強烈なネオンサインやフラッシュが観る人を襲う。
さらに、まるでディスコに身を置いているかのような芯から震える重厚なサウンドと、現代美術あるいはシュルレアリスム絵画を想起させるような狂気的な画と息苦しさをも感じる静寂が、イヤというほど観客を惹きつける。
主演のエル・ファニングは当時弱冠18歳、大人の妖艶さと子供の儚さ・危うさを兼ね備えた、今が旬の女優である。本編通り、性的な興奮とともに、独占欲をもかき立てられる。
そして、凄まじいほどの映像・音響にトランス状態になっている観客らに叩きつけられる、ショッキングな結末である。あれで全て持っていかれる。
内容が薄いという批評は全く意味をなさない。これはN.W.レフン監督の前衛芸術なのだと理解した。
(追記)2017/09/10
2度目の鑑賞後にふと思い浮かんだことを記す。
本作の公開後、暫くしてレフン監督の『オンリー・ゴッド』の撮影裏を彼の奥さんがカメラで撮っていた1時間ほどのドキュメンタリー『My Life Directed By Nicolas Winding Refn』が公開される。
そこには、『ドライヴ』の成功による周囲の大きすぎる期待とプレッシャーに苦しむ姿があった。
周りの人間は良い作品だというが、彼自身確たる自信が持てず、イライラを募らせ、妻とすれ違いが生じる場面も記録に収められている。
『ネオン・デーモン』のエンドロールに、「リヴへ、愛を込めて」という言葉とともに、美しい曲が流れる。最初歌詞の内容も本編と全く無関係でピンとこなかったのだが、2回目で上記のドキュメンタリーを観た直後だから感じたのは、この歌詞が奥さんから彼への言葉にぴったり当てはまるということだ。曲は、Siaの”Waving Goodbye”、別れた彼へのラブソングである。レフンとリヴは離婚してはいない。しかし、”Tells me I should treat myself better”や”You’re too crying feel so bad But can I lie down”など、巨大なプロジェクトを創作するレフンを支えるリヴの想いに重なる。
リヴはレフンに家庭的な男であってほしいと願う。しかし、彼のプロジェクトの大きさもよく把握しているリヴはそれは単なる理想でしかないこともわかっている。リヴは彼を支えなくてはいけないこともよくわかっているが、一方で彼女自身、もっと自由になりたいと心の内では思っている。それでも、彼を愛しているのだ。
しかし、その想いは一方通行ではない。リヴは『オンリー・ゴッド』を最後まで応援してくれた。カンヌではリヴも彼と同じくらい緊張したと言っていた。彼女のおかげで『ドライヴ』の呪縛に屈することなく新作を作り上げることができたのだ。レフンもそんなリヴを愛しているし、彼女の想いは痛いほど理解している。
この”Waving Goodbye”は、彼女の想いもよくわかっているというレフンからのメッセージなのではないか。もっと言えば、『ネオン・デーモン』が、成功への欲望に取り憑かれてしまう、レフン監督の半自伝的物語なのではないだろうか。
『ドライヴ』による成功の呪縛が取り除かれた今、『オンリー・ゴッド』『ネオン・デーモン』と、レフン監督の真の才能が解き放たれ始めた。
今年の暫定ベスト
レフンの変態映画がここまでキタ!
天然と人工
田舎娘が売れっ子モデルになり嫉妬される話
レフン監督の作品は「ブロンソン」「ヴァルハラ・ライジング」「ドライブ」「オンリーゴッド」と見ていた。
ファンとまではいかないが結構好きな監督なので期待しつつ鑑賞した。
今作は衣装や背景の色合い、ファッション、空気感など「ラ・ラ・ランド」の暗黒版と言った印象だ。
ララランドと違って、恋愛もミュージカルも無いが、紫色の夜景やモデルの衣装などで原色きつめの服を着たり、オーディションなど何個か重なるシーンがあった。
モデルの原石である主人公、エル・ファニングがカメラマンやデザイナーに気に入られてどんどん仕事をもらうようになるのだが、ハッキリ言って業界の先輩3人のほうがはるかに美人だったと思う。
美人で溢れかえったモデル業界にはエルのような顔が珍しくていい感じだったのかも知れないが、元スーパーモデルのアビー・リーとモデル勝負するのはいささか無理がある。
スタイルの面でも手足の長さ、細さが違い過ぎて、エルが可哀そうだった。
顔も奇抜なメイクでごまかしているし、モデルオーデションの下着姿も全体をあまり映さずスタイルを上手く隠していた、総合的にどう見ても貧相と感じたのは自分だけだろうか。
アビー、クリスティーナ、ジェナの三人を画像検索してから、エルを検索してい比べてほしい。
人それぞれの好みはあるからなんとも言えないが、自分としてはエルは他を圧倒するモデルには成りえないと思った。
女優の顔の話ばかりしても仕方ないので物語の内容に移るが、全体的にお洒落でかっこよくて、雰囲気も最高だ。
監督の事が好きな人は見て損はないし、お洒落目当てで見ても十分満足できる。
新人が感じる厳しいモデルの女社会の嫌な雰囲気、馴れない町でのモーテル暮らしの危うさ、理由もわからずトントン拍子に出世する不安など上手く描けていたのではないだろうか。
オーデションなどで、あからさまに主人公を原石、美の象徴として扱う演出は過剰だったが、これも皮肉かなにかだったのだろうか。
若ければそれだけで価値がある点なども批判していたのかも知れない。
映像表現で楽しかったのはクラブで見る宙づりショーやネオン管の三角形、鏡なども演出だ。意図はまったく読み取れなかったが見ているだけでも高揚した。
キアヌ・リーブスの今までにないゲス役も必見、新鮮で最悪だった(いい意味で)
月の光とネオンの光は天然と人工の対比であり、モデル業界、映画業界へのメッセージとも取れる。
最終的にはおとぎ話風の美を求めるあまり起きてしまう事件をへて物語は終了するが、単純明快で良かった。
どんな世界も食うか食われるかなのだと思った。
主人公が小さい頃に母親に言われた「あなたは危険な子」とはヤンチャで無鉄砲な危ない子ではなく、周りを誘惑し巻き込む危うい子と言う意味だったのだろう。
危うさ儚さをエル・ファニングが上手く演じていたし監督の演出なども素晴らしかった。
衣装デザインやカワイイ女優目当てで気軽に見ると火傷するが、バイオレンス映画だとしっかり認識した上で鑑賞するといい映画体験ができると思う。
劇中セリフより
「美は全てではない、唯一だ」
同じ人間は居ないし好みはそれぞれだが、皆が共感する美人とは何が基準なのだろうか。
全てが唯一のこの世界で美の物差しを持つ人間はどんな視点で人を見るのか興味が湧いた。
「美を極める」の果ての果て
とにかくギラギラ
美と狂気と静寂
トップモデルを目指しロスへとやって来た田舎娘ジェシーが大都会にて女たちのドス黒い嫉妬による争いに巻き込まれる様子を描いた作品。
ギラッギラの色彩センス、静かすぎて逆に耳に響く不協和音のような劇伴、最先端過ぎるぶっ飛びファッション、そして女。
相当クセが強い笑。冒頭のシーンからぶっ飛んでた。間の使い方が長かったり謎の表現がホントに謎だったりと見ててだいぶ胃が痛くなると同時に相当クセになる笑。
これR15どころじゃない気がする。直接的な描写はないけど間接的な描写がエグすぎる。
ラスト前のシーンが映された瞬間、ほぼ満員だった映画館の観客全員がドン引きして息を飲むのを感じた気がした笑。そしてそのシーンが予想して映し出されるのを若干期待していた自分に引いた笑。
あと月灯りのルビーが映されたシーン。
絶対あの瞬間
え?うry
と思ったのは自分だけじゃないはず笑。
この胃のキリキリ感、怖いくらいの間の使い方からたぶんこの監督はキューブリック好きなんだろうなって感じた。
あとホントにエルファニングかわいい。あどけなさの中に妖艶さを混ぜた演技でだいたいの男性を犯罪の道に走らせること間違いなし。まだ10代かぁ!もう2歳くらい歳近けりゃなぁ!(?)
そしてキアヌの無駄遣いたまらん笑。
まだドライヴを見たことないが正直これ見てハードルは上がった。今作は女性ならではの表現をエグめに描いていたけどアメリカの夜のドライブというトラヴィス大先輩がご健在するテーマの中どんな狂気を描いてくれるか楽しみになった。
2017年01月22日(日)1回目@TOHO新宿
2017年06月18日(日)2回目@キネカ大森
私は嫌いじゃなかったです…
だいぶ満足
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