愚行録のレビュー・感想・評価
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まさに愚行
冒頭から引き込まれる
終始どんよりとした、画面もグレー調の雰囲気で物語が進んでいく。
進むにつれて、終盤での衝撃(しかも3回)は驚いた。身体が前のめりになるほど引き込まれた。
役者さんの演技も素晴らしいのだが、脚本、カメラワークその他全てが最高潮
ゆっくりと紐解かれて編み上げられる物語
全体に漂うノワール感。
冒頭からいきなり不穏な空気。なんだこの空気は…。
ゆったりとしたカメラワーク、
(ただしワンカット長回しでは無かったりする)
大きな音を出さない演出で静かめに進む物語は何本もの線が紐解かれていき、そして編み上げられていく。
伏線が回収されてドヤッ!という物語では無いので、そういう意味で伏線モノが嫌いな方もゆったりとした気持ちで観れると思います。
妻夫木さんも良かったですが、特に満島ひかりさんの演技が良かったです。
プツンって音が聞こえた
冒頭で脚が悪い振りをする妻夫木を見て最高だなーなんて思ってたら想像の何倍も重い衝撃がガツンガツンと襲ってきて参っちゃった。
これが観たかった。頭を痛めたかった。素晴らしかった
主に一対一で聴取する場面の連続なんだけど、一人一人に抱えるものや物語があって最後に全てが繋がるオムニバス形式のようでかなり観入ることができた。
基本聞く側の田中がときどき聞かれる側にまわるのが効果的で良かった。
田向の生き様にドン引き笑
その開き直り方に感心するレベル。
夏原さんもまた何考えてんのか分からなすぎて怖い。
あの笑顔と器用な人間関係の裏に何があるのか、或いは何もないのか…
最後まで二人に関しては客観的な話しかないので掴めなくて、より気持ち悪く感じる。
この映画一番の衝撃は田中が宮村を殺すシーンだった。
宮村が光子のことを話してる時点でうわぁ〜やめてくれ〜って思ってたけど、まさかあんな、流れるように静かに殴り殺しちゃうとは。
夢でも見てるのかと思った
光子が田向家殺人の犯人ってのは宮村の話で予想はつくけど、実際彼女の口から語られるとズーンときた。
それと光子が「生まれ変わってもお兄ちゃんの妹でいたい」って言った時に、もしや…と思ったけど本当に兄妹の子供だったとは…!
中盤でそれが分かってもただの衝撃で終わるけど、虐待児童だった二人で、しかも宮村殺人と田向殺人を経たあとでの判明だから余計に重くて重くて
とにかく救いのないやりきれない映画。
役者のちょっと抑えめの演技が最高だった。
夏原さんと光子の笑顔が忘れられない…
濱田マリのまっすぐな目付きと妻夫木の伏せがちの目付きが印象的だった。
短編映画の監督だそうでちょっと納得。
愚行録ってタイトルもまさに。
去年の怒り を思い出す、良い邦画でした
2017.8.16
飯田橋ギンレイホールにて再鑑賞。
当たり前だけど初めて観た時と全然観え方が違っていたので追記。
改めて細かく作り込まれた演出、構成と至る所にある伏線にたまらなくなる。
別荘パーティーで後ろに光子を見つけた時には鳥肌が止まらなかった。
メモを取っていない田中、彼の表情も印象がガラリと変わって 悲しく恐ろしかった。
田中兄妹の、歪にゆがんで沈むしかないような愛もどこか虚しく空回るように感じる。
恵美の指している「犯人」と彼女の赤ちゃんの父親について考えに考えていると、もしかして田向が父親なのかも そんで夏原を犯人だと思っているのかも って行き着いてしまった。
一番納得できるのがこのへんしかない…怖いよ…
何回観ても面白く重くのしかかるサスペンス。
今の所今年の邦画でダントツNo.1に好き。
ただし鑑賞後ひどく体力を削がれてしばらくまともに動けなくなる!笑
まさに「愚行録」
満島ひかりさんのファンなので、予備知識は予告編程度といった状態での鑑賞。
感想としては、2017年早くもベスト10に入るんじゃないかという素晴らしい傑作。
全シーンの色合い、音楽共に暗く、作品の世界観にぴったり。小出恵介さん演じる、「田向」と会社の同期の「尾形」がどういう人物なのかが分かった時点で、「あぁ…嫌な話なんだな」というのがはっきりとし、どんどん暗い話になっていく。なかでも、松本若菜さん演じる「夏原」の「女に嫌われるタイプの女」が男の自分からみてもかなり不快だった。
そして終盤。「宮村」が語る、「光子」についての告白、そして満島ひかりさんのシーン。今までの話はこのシーンまでの布石であり、それに満島さんの演技が加わって、息をのむ素晴らしいシーンとなっている。
人間にとって、自己利益のためだけ行為は、愚かに映る。
まさに「愚行録」なのだと感じた傑作でした。
面白かった
丸の内ピカデリー初体験。
この辺りの劇場はでかくていい!
サービスデイだったが平日午前中ということもあり、まばらな入り。
ミステリーの謎解き自体はなんとなく予想はできたが、映画としては満足できた。
殆んどの登場人物がクソなのだが、個人的には小出恵介の同期の男が一番クソだと思った。
暗いな〜
お分かりであると思うが、とにかく暗い。暗すぎる。
人間の愚かさというものを伝えたいのであろうが、それにしても暗いよ〜。
登場人物は一人一人が笑えるほどクズ。よく一つの環境にこれだけ集まったなというくらいw確かに人間は欲を中心に動く愚かな生き物だ。そういうキャラクターがたくさん出てきた。それにしたって感情移入できる登場人物がほとんどいないw人間の愚かさを伝えたい映画でこれは致命的だ。
記者が過去を調べていき、当時の回想シーンが流されていくときの雰囲気は、「凶悪」に物凄く似ていた。
女子からはカリスマ的存在、男子からは完璧な女、同時に人を傷つけることを全く厭わない女。そんな一人の女を中心に物語は進んでいく。これは「渇き」に物凄く似ていた。
この映画を見て一番強く思ったのは、親が子に残した傷というのはどんな形であろうと、一生残るのだなということだ。
妻夫木聡は爽やかな役だけではなく、こういうシリアスな役もできるから凄いと思う。
満島ひかりが演じる精神異常っぷりも素晴らしかった。
他の俳優たちの演技は……w
妻夫木は幸せになれない役を敢えて連続して受けたのかな?
妻夫木と満島ひかりの演技に最後までグッと引き込まれてあっという間の2時間だった。
手の伏線がまさかの予想外の展開に。
サスペンスとしては相棒より断然見応えあると思うけど、客入りの違いはテレ東とテレ朝の違いかなw
観客の経験値に問いかける、"自分自身の愚かさ"
観客が試される作品である。ミステリーだから、一家惨殺事件の犯人とその動機に興味がそそられるかもしれないが、ほんとうのテーマは、登場人物たちの素行から見えてくる、"人間の愚かさ"だったりする。はたして客観視できるだろうか。
原作は直木賞候補にもなった、貫井徳郎の同名小説。イヤミス系(=読み終わったあと"イヤ"な気分になる"ミステリー")なので、好き嫌いは分かれるかもしれない。
日本社会特有のエピソードではあるが、おそらく観客の経験値がそのまま跳ね返ってくる。人生経験を積み重ねるほど、何かしら不都合なことに目をつむっているはずで、それが重くのしかかってくる。
実は、この原作の映画化は、監督によって百人百様になるはず。なぜなら原作はインタビュー形式に近い一人称で書かれており、場景の具体がない。主人公である田中の人物像も、読者の想像力によって自由に作ることができる。映像化の自由度が高いぶん、演出の実力が問われる。そこで長編デビューとなる、石川慶監督の名前を頭に刻まざるを得なくなる。
とにかくオープニングのカットを一瞥するだけで、この映画のルックを決定づける要素が、すべて詰め込まれている。エキストラひとりひとりにまで、演技をつけているであろう演出も面白い。オープニングの映像で一気に作品に引き込まれる。
映画はシリアスな空気感を充満させるために、カラーグレーディングで色彩調整をしている。全体の彩度を落としているだけでなく、小物や衣装、背景に移り込む構造物に至るまで、徹底的に無彩色・中間色(白・黒・グレー・ベージュ…)のものを揃えている。その中で、キーパーソンとなる夏原友希恵の服と、弁護士と大学生のクルマだけ赤色で際立たせている。
撮影監督としてタッグを組むポーランド出身のピオトル・ニエミイスキのテクニックも大きい。シネスコの画角を活かしきるカメラワークが印象的だ。水平パンニングが多用されているほか、水平直線を強調したフレーミングや、人物の左右相対ポジショニングなどもなされている。それによって画面スペースが左右に効果的に広がる。またカメラは長めに回され、その間に映る人物はずっと演技を継続させている。
また”雨”と”ガラス(窓)”も、この映画の特徴的な素材である。バスやクルマの窓、ビルの窓ごし、接見室のアクリル板など、多くの透明なフィルターを介して人物が出てくる。その目に見えない存在に雨粒がつくことで気付かせる。最初、フィルターを通して見る人物は、第三者の観察視点であるが、ズーミングとともにいつの間にか当事者視点に同化させられる。
主演の妻夫木聡は、異常キャラクターの役が少し多すぎるキライもあるが、"妻夫木主演に間違いなし"。その期待に今回も応えてくれる。共演の満島ひかりをはじめとするキャストの演技にも感服する。
(2017/2/18 /ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)
「愚行」は誰でも持っているもの
誰も嘘はついてない。
でも、感じ方や考え方が微妙にずれている。
その結果、一人一人の発言も違って見えてくる。
妻夫木聡さん演じる田中は、一家殺人事件の真相を調べるために動き出します。
取材で、聞き取り調査をすればするほど、見えてくる真相が違うため、何が真実で何が偽りなのか分からなくなってしまいます。
また、記者である田中は、妹が育児放棄で逮捕されたことを受け、かなり精神的にも厳しい状況に…。
取材を続ける彼のバイタリティの強さは、妹を思うが故に発揮されている状態のようです。
秘密を隠し持っている妹と、一家殺人事件の真相が意外なところで繋がり、衝撃の結末を迎えた瞬間には驚きました。
毒にはなっても薬にはならない、ドロドロとした内容に、観終わった後に残るのはドロドロとした感情のみ。
誰も救われない結末が悲しいです…。
こうゆうタイプの話が好きなので楽しみにしてた作品です。期待値を越え...
こうゆうタイプの話が好きなので楽しみにしてた作品です。期待値を越え…は、しなかったけど、ヒリヒリする緊張感と良い意味での不自然さを最初から最後まで味わえました。この手の話はよくあるけど、説明しきらない感じが絶妙。
あと原作未読なので何とも言えないけど、各キャラの作り込みが絶妙で素晴らしい。湊かなえっぽいけど、もっと陰鬱で意地が悪い。小出恵介良かった。妻夫木と満島ひかりはさすがとしか言いようがない。
冒頭5分で感じる違和感、凄い。
天才現る。
貫井徳郎の原作を読んだときに、どんなアプローチで映画化するのだろうと、かなり心配になった。
映画が始まって最初のシークエンスで気持ちをグッと掴まれた。向井康介脚本、石川慶監督は天才なのではないか。
その後、原作通り進むのだが、田中(妻夫木聡)が取材する相手がみな好演で、会話劇でも見応えがあった。
注目すべきは宮村(臼田あさ美)の話で、ここで田中光子(満島ひかり)が出てくる。原作では、宮村は我々が知らない間に死んだことになっている。
ここのシーンのつながりも天才的で、宮村が光子の話をするのは終盤で、その回想シーンが出てくるのだ。
原作を読んだとき、この光子が田中の妹だとは気づかなかったのだ。いろいろな人が夏原(松本若菜)にひどい目にあっていて、そのうちのひとりという話の流れになっていたからだ。映像ではそうはいかない。
さて、原作を読んでいない人にはちゃんと伝わっているのだろうか。そこは心配なところだが、僕はこれでいいと思う。
映像表現が上手い
まずは冒頭のバスのシーン。映像表現に鷲づかみ。この先の展開に大きな期待を抱かせる。
妻夫木が事件の真相を求めて取材をするが、登場人物の個性がさほど強くはないため、現在と過去のシーンの幾度もの織り交ぜに若干の混乱をきたしてしまう。ここはしっかり整理をつけながら見ていく必要がある。とにかく仕掛けが多く目が離せない。正直もう一度見ないとわからない部分もあって、リピートしたら見えない気づきがたくさん出てきそう。
真実は何か、それぞれの人物の立場と思惑、性(さが)、身勝手さ、自己中・・・。人間誰もが持つ裏の部分が炙り出される。それを愚行と呼ぶのか・・・。ラストを迎え、全体像が見えたとき、人間の「愚行」が明らかになる。ぞっとするというより、ぞっとしない自分にぞっとする。
妻夫木の雰囲気も良いのですが、満島ひかりは彼女ならではの役どころ。語りのシーンは見事でしたね。そしてラストシーンも見事だった新人監督の力量もなかなかで今後も期待。
問題作。
終わらせ方がかなり独特。
本当に人間っておもしろいものだなと感じさせられる作品でした。また、とても怖かったです。
海外で学んできていきなりこんな作品が作れる監督は化け物ですね。
今後がすごく楽しみです!
あと、満島ひかりさんが凄すぎます。
惚れました笑
貫井さんの作品は…
やっぱ叙述物だから、活字で読んで気付いた時の衝撃と、映像で驚かそうとするのでは、驚愕度が違うんだよなぁ〜。タイミング的に、活字だと最後にまとめてたたみ掛けることが出来るんだけど、映像だと途中でネタバレしちゃうんだよね。それはさておき、兄妹役は良かった。あの二人は『悪人』の時も良かったなぁ〜。
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