ジュリエッタのレビュー・感想・評価
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巨匠、女性を描く
題名は『ジュリエッタ』。あくまでひとりのジュリエッタの物語である。
誰かの娘であり妻であり母である女。女の性(さが)は複数にまたがっている。
生と死、愛と性を軸にして物語は進む。
誰かの死に直面したとき、生きている自分を責めることは、よくあることだ。誰のせいでもない出来事は自分の罪ではない。
実は、失望、悲哀、落胆の状態こそ、一種の罪の状態で錯綜なのである。
女の愛は男の愛と異なって、快楽のための媒介を必要としない。他者はすでに女の内にある。女は他者を所有し支配する必要はない。
しかしジュリエッタは失望のあまり錯綜した。娘に執着した。他者としての娘を理解することを怠った。
私はそんなジュリエッタが愛しい。
色彩設計の見事さ。
古典教師の一面は知性の色、青。
おしゃれでセクシーな一面は引力の色、黄色。
情熱も悲しみも全てを含む女の生命力の色、赤。
そして、まるで会話の一部分のような重要なモチーフ。ルシアンフロイドの絵画、雄鹿の疾走、男性のオブジェ、キッチンから見える海。不完全な人間の美を感じた。
これぞ映画の醍醐味である。
考えさせられた
母と娘、夫婦、友人、恋人、、いろいろな関係について考えさせられた映画でした。
映像もきれいだったし、とても良かったです。
最後の終わり方も、あれはあれで良かったですが、再会したところ観たかったかも。
必然的な娘への言及不足
久しぶりのアルモドバルの新作。
前回観たのはボルベールだったか。
赤を中心にカラーコントロールされた画面に、アルモドバル調の健在を喜ぶ。
列車で二人の男に出会った主人公が、死ではなく生に惹かれることは、その若さや美しさから当たり前のようにも思える。
だが、この選択は紙一重のものであった。
ラストシーンにおいて彼女の鞄の中に娘からの手紙が入っていたことが、列車に飛び込んだ男が残した鞄の中身が空だったことの謎の答えとして提示された観客は、そのことに気付くだろう。
鞄に入っていた娘からの手紙は、母親との和解を求めており、これにより、主人公は人生を絶望させてきたわだまりから解放される。そんな感動のラストなのだが、残念なことに、氷解により溢れ出すものが観客の期待する程度ではなかった。
そうならざるを得ない理由は明白でもあるのだが。
母娘のすれ違いをラストで提示するには、娘のことがほとんど描かれていない。だから、観客はこの娘の子供時代からの苦しみを知らないし、現在の心境にも思いを馳せることができない。
しかし、これはある意味当然である。
映画は初めから、娘のことがつかみきれない母親の姿を描く。娘のことは、その母の視点から見たものを描くので、必然的に娘のイメージが断片的、一面的なものに過ぎなくなるのだ。
だからこそ、娘が出奔した事実にも増して、その理由が分からない謎が、主人公を追い詰めていくし、観客もまた、彼女の苦しみへの感情移入ならば存分に果たすことが可能なのだ。
介護、移民労働者、カルト集団といった、現代社会特有の問題によって家族が変化する。しかし、バラバラになってしまったかのような家族を繋ぎ止めているものは、結局のところ親子の情である。
子供を産み、そしてその子を喪う経験から、自分の母親の苦しみを理解すること。大切な伴侶を亡くした悲しみを、新たなパートナーとの人生をスタートさせることによって乗り越える父を赦すこと。
二つの和解の糸口だけを示して映画は終わる。
フリエタ
え、ここで終わり!!?という。
ストーリーのテンポもスペイン語の会話のテンポもめっちゃ良い。けどその分展開の速さについてけない場面多々。
なんかボルベール観たときと同じような感想。良い話っぽいねんけど、初見だけでは核心がぼんやりとしかわからんかった。
バッドエデュケーションとか私が生きる肌とか、もっとエキセントリックな話のときのアルモドバルは好み。
おとなしめのアルモドバルも何回か観たら、それか子供産んで母親になったら良さがわかるかも。
スペインの巨匠、女性をテーマに独特の作品を世に出してきたペドロ・ア...
スペインの巨匠、女性をテーマに独特の作品を世に出してきたペドロ・アルモドバル監督の最新作。
マドリードで暮らす中年女性 ジュリエッタ、そして12年前に理由も解らず家を出てしまった一人娘のアンティア。ジュリエッタの過去〜現在の人生が丁寧に織り交ぜられ、娘が何故彼女の元を去ったかがドラマティックに描かれる。
様々な伏線が引かれそれをキッチリ回収するとともに、アルモドバル独特の色彩感覚やエロチシズムも健在で、見る側はグイグイのめり込んでしまう。
ちなみにポスターの女性はどちらもジュリエッタです。若い時と中年時代を別の女優が演じてますが、映画の中での、その切り替えがこれまた上手い!
自分は、かなり好みの作品でした( ^ω^ )
オススメです。
尻切れとんぼな娘への懺悔。
まだ続くと思っていたところで終わったことにびっくりします。せめてアンティアに会うところまでは続くと思っていたよ。
ジュリエッタ(スペイン語の発音とは違うけど)は、何を恐れていたのかね。電車のおじさんが死んだのはジュリエッタには全く罪のないことです。
ショアンがアバと肉体関係があったとして、それが結婚後ならまだしも、それ以前だと咎める権利もないし、そのことで口論したからって、悪天候を読めなかったショアンが死んだ事もジュリエッタのせいでもない。
それを自分の罪として抱えて、娘の少女時代を台無しにしたことはよくないけど、どうにもできなかったことだし。
いろんなことがあるけど、誰も悪くないし、たとえ罪があったとしても十分苦しんだからってことなんでしょうか。
でもジュリエッタが母だったら辛いわ。
アンティアの気持ちは意図的に描かれなかったのでしょう。
ジュリエッタの告解の物語だから。
独りよがりで時々、ん?てなるけど、嫌いじゃない語り口ではあります。
海が美しく、壁紙がエキセントリックだった。
平凡な男たちが登場するアルモドバル流女性映画
スペイン・マドリードで暮らすジュリエッタ(エマ・スアレス)。
恋人ロレンソとポルトガル移住を明日に控えたある日、街角で娘の幼友だちと出逢う。
娘のアンティアは、十数年前に出奔したきり。
その幼友だちはアンティアをコモ湖畔で見かけたという・・・
というところから始まる物語は、そのジュリエッタが、かつて娘と暮らしたアパートへ引っ越し、過去を回想するという展開になる。
現在と過去、大過去と時間軸を移しながらの語り口は、アルモドバル監督だけあってさすがに上手い。
ジュリエッタの心の深奥を示す、赤を基調とした鮮烈な画面も強烈だ。
けれども、意外とつまらない。
つまらない、というと語弊があるかもしれないが、なんだか物語の表面を撫でただけの映画みたいな感じ。
たぶん、ジュリエッタにからむ男たちが平凡だからだろう。
『ボルベール <帰郷> 』あたりに登場した男どもは、男の目からみてもダメな奴って感じの、唾棄すべき男どもだったけれど、本作ではそんなことはない。
ただ、登場して突然死んでしまうということを繰り返して、ジュリエッタに暗い過去を残すだけ。
アルモドバル映画で、平凡な男を観ることになろうとは思わなかった。
そこに尽きる。
ジュリエッタと娘アンティアの確執も微妙だし、若き日をアドリアーナ・ウガルテが演じるジュリエッタの二人一役効果も微妙。
アルモドバル監督作品としては、中程度の出来かしらん。
え?これで終わり?みたいな…
うーん、レビュー観て期待してたんですけど…(笑)。何か、母親に対して、なんて仕打ち?って思っちゃうのは、親離れできてないからでしょうか。
でも、やっぱり共感できないので、誕生日ケーキを捨てたお母さんと同じ気持ちでイライラしっぱなしでした。
あのHシーン、何度もいる? …まぁ、眠気が覚めていっか(笑)。
絵力が凄い
濃厚な色味と深みのある絵が凄すぎて、あきれて笑ってしまうほど。
話も因果応報的にめくるめく数奇な人生で、これもまた面白すぎて笑わざるを得ない。
完璧に虚構であり、監督のワールドでしかないと感じてしまうけれど、それがまた完璧であり、しかも面白くて、完全にその世界観に見せられてしまった。
主演の女優も美しいし、自分にはまるでジュリエッタ・マッシーナにしか見えなかった、まさかそのジュリエッタなのか!?と今更ながら思わないでもない。
「トーク・トゥ・ハー」よりも感情移入
「苦しみを抱え生きて来た主人公ジュリエッタ(フリエッタ)とその周囲の人たち」を描いた作品です。
観ている間、ずっと胸が詰まるような映画でした。ラストはどうなって行くのだろうかと。
同監督の「トーク・トゥ・ハー」では二人の女性が昏睡状態でしたが、「二人はそれぞれどうなったんだっけ?」などと頭の中をよぎったりしました。
いい意味で、アルモドバル監督らしい作品なのだと思います。
映像・町並みが綺麗、登場人物が魅力的・・と好きな箇所はいくつもありますが、何よりもラストまで想像のつかないストーリー展開が良かったです。
観終わった時、「全てはラストのために」という言葉が胸をよぎりました。
秀作だと思います。
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