劇場公開日 2018年4月27日

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「サノス式「悪」の在り方」アベンジャーズ インフィニティ・ウォー nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0サノス式「悪」の在り方

2018年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作について何か考えるべきならば、やはりサノスなしに語ることはできないだろう。サノスといえばアメコミファンには有名すぎるほどのヴィランであるが、MCUで本格的にフィーチャーされるのは本作が初めてということになる。今までは巨大な椅子に座っているサノスしか我々は目にしてこなかった。そのフォルムは、誰からみても醜悪そのもの。見ていられないということではなく、スターロードが『キ○タマ』と表現したように、生理的に受け入れ難い形態をしている。そしてオープニングのハルクとの決闘ときた。ハルク以上に強大な力を持ち(しかも速い!)まさに非道を具現化したようなヴィランであることは明白だ。

しかしサノスの本当の「怖さ」はそうではない。サノスが怖いのは、「いかなるMCUヒーローよりも、人間的な感情を持ち合わせている」ことなのである。ガモーラは彼の涙をどう受け止めたのか。期せずして垣間見えた涙は、父親の愛情なのか、あるいはサイコパスの絶望的な側面なのか...

醜悪で非道な外見と実践と矛盾した内面の豊かな人間性、その共存は果たして有り得るのか、有り得て良いのだろうか...その矛盾をはらんだ理解を超越したヴィランに対し、我々は恐怖を覚えるのである。

『ダークナイト』のジョーカーはこれとは逆だ。ジョーカーは、その雄弁さで、彼の悪の哲学が正しく思えてしまう(正確には、何が正しいのか判らなくなる)ことが怖いのである。正義と悪という盲目的に貼られた自己概念を揺らがせた『ダークナイト』は映画史上に残る傑作であることは言うまでもない。

サノスは「悪」の新しい在り方を我々に突きつけたのである。世界を救うための大量殺害は本当に「悪」か?隣国の独裁者、北の共産趣味国家然り、これは社会問題として我々が常に思考せねばならないことで、他人事ではないとさえ思える。

nagi