「後半以外は超最高」ブラックパンサー ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
後半以外は超最高
ライアン・クーグラー監督は超優秀なのか、クライマックスまでの転換は惚れ惚れするほど良かった。
伏線のはり方、各キャラクターの魅せ方・テンポ、アクションをこれでもかとなめまわす長回しのカメラワーク、アクション映画のお手本ともいうべき仕事ぶり!
実は最初のバスケ少年はキルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)だったのか!(NBAの伝説的選手マイケル・ジョーダンとかけてる?(笑))という冒頭シーンの回収や、王座をかけた決闘に主人公が異なる敵(エムバクとキルモンガー)と二回対峙し、主人公の成功と挫折を表現している。それと同時に!エムバクに対して主人公がとった行動と、そのエムバクが最後主人公や国に対してとった行動、これこそが話なテーマとして機能している。うまい!!
(キルモンガーが主人公に対してとった行動が、主人公がエムバクに対してとった行動と真逆であったからこそのあの末路ですよという説明にちゃんとなっている。)
ヒーロー映画といいながらも、アフリカ系民族のもつ複雑さを上手く取り入れ、それを主人公の成功と挫折、成長し再びカムバックという王道ストーリーにして普遍的な物語に落とし込んだ手腕はさすが。個人的に「ブラック・パンサー」という題材でこれ以上出来ないんじゃないかと思う。
ただ後半クライマックスで変なギアが入ってしまった、おかしなことになった。
前半で作り上げたキルモンガーのキャラクターの複雑さに対して、彼の野望というのがあまりにもチープでステレオタイプな悪役と化してしまったのが非常に残念だ。
まさか「世界制服だ!」なんて今更どの悪役も言わないことを言い始めるとは。。。ここはさすがに私だけでなく、王座の間のキャラクターたちもドン引きしていましたが(笑)
観賞中の心境としては「深いな〜、深いな〜、深いな〜、ん?浅い!!(笑)」という感想でした。
ワンガさん
コメントありがとうございます。キルモンガーは私もいいヴィランだと思っています。身体の刻印はライイムスター宇多丸さんも言及されておりましたが、殺した一人一人を痛みとして感じているからじゃないか?痛みとして背負っているんじゃないかと私も思います。
彼はもう立ち止まれなかったというコメントには納得いたします。
ただ魅せ方としてセリフやクライマックスのドタバタ演出が前半の洗練されたストーリーテリングに比べると駆け足でどこかチープ(どっかで見たようなドタバタ劇)に見えてしまいました。
マーティン・フリーマンの大活躍には興奮しましたが(笑)
キルモンガーと恋人との描写は判断材料が少ないため推測の域を出ませんが、ワンガさんの解釈の仕方も面白いですね。
いや、キルモンガーはやらずにはいられなかったんですよ。
それがワカンダも世界も不幸にするだけと理解していても。
彼はずっと怒ってたんです。どうしようもないぐらいに。
だから恋人も平気で射殺できる。
人間を殺してなにも思わないやつが、殺した人間の数だけ刺青を入れますか?
あれは勲章にも見えるけど、覚悟。
しかし・・・王を倒して目的を達成してしまった。
だからといって、もう立ち止まれないじゃないですか。
彼には父親と違って、黒人を救う気持ちなんてそんなに強くなかったと思う。
ただ、境遇を憎んで、怒っていた。
父親と再会した後、花を全部焼いたのも、もう引き返せないから。。
自分の次の王なんか存在しない、父親ともう二度と会わないという覚悟。
だから負けた時、やっと彼は平穏を手に入れた。
でも、これは彼のいるべき場所じゃない。
そう思ったからこそ母方の黒人、つまり奴隷としてアメリカに連れていかれた黒人の子孫として死ぬことを宣言した。ワカンダ人なら船から身投げなんてしてませんものね。
まあ、思い込みもあるかもしれませんが、私はこうだと思います
キルモンガーはいい悪役だと思いますよ。
PS.
最後に彼の理解者だったと思われる恋人。
彼女が最後に謝ったのは自分がドジを踏んだからではなく、彼に最期までついて行けなかったことを誤ったのではないでしょうか。