「伝説に最後は無い」スター・ウォーズ 最後のジェダイ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説に最後は無い
※新作公開に合わせて各所修正。余談1加筆。
あけましておめでとうございます。
2018年もよろしくお願いします。
今年最初のレビュー投稿は何か
景気の良い作品をということで、
遅くなってしまったが昨年の間に
投稿できなかった本作をレビュー。
さてさて遂に公開されたSF超大作
最新エピソード、『最後のジェダイ』!
昨年――というか数年通してこれほどまでに
世界中の期待と不安を集めた映画も無いが、
流石は映画史上最大規模の超大作シリーズ。
昨年の大作の中ではド派手さもスケール感も
群を抜いていたし、画作りの壮大さもバッチリ
(ルーク対レン&大型兵器群の画には鳥肌!)。
スケールの点では昨年No.1の満足度でした。
しかし、それでも前作より下げての4.0判定。
まあ最終的な印象は『面白かった!』なので、
先に不満点からガシガシ書いていくことにする。
...
今回は物語が大きく2パートに分かれている。
ひとつはレイ、ルーク、カイロが主軸のパート、
ひとつはフィン、ポー、ローズが主軸のパート。
最大の不満は後者に関してだ。
言ってしまえば、彼らの行動は反乱軍の
脱出船が次々撃墜される惨事を招いただけ
だし、ポーは反乱軍内で大混乱を招く始末。
最初からホルド提督の策通りに進めば
多くの仲間が助かった筈なのに……なんでか
策を隠してた提督にも大いに非はあるけど。
あのカジノ惑星からの脱出の流れも、
フィンとローズは「来た意味はあった」
と微笑んでたが、果たしてそう単純か?
あの時点ではゲスな金持ち連中をアタフタ
させて良い気味だろうが、あの後で逃げ切れ
なかった馬や子ども達の立場が悪化するかも
とは考えないのだろうか?
正直に言おうか。今回の新キャラ・ローズ。
僕は彼女をまるで好いてない。
『普通の人』を起用する意図は分かるが
(余談参照)、彼女は端から端までただ
生真面目でユーモアに欠け、自分を疑う
こともせず、直情的で後先を考えない。
子どもや馬に同情するくせあんな軽率な
真似をするし、フィンへの想いを
吐露する最後の場面も唐突過ぎる。
ローズはさておきフィンは前作に引き続き
悪くないし、ポーも失敗を糧に終盤で大きな
成長を見せるものの、やはり彼ら三人の為に
犠牲になったものの方が大きすぎる。なので
爽快感を得るのも感情移入するのも難しかった。
このパート以外の不満点も簡単に。
・カイロ・レンとスノークの関係はもっと
説明しないの? カイロの闇を語る上で
最重要の部分だと思うんだけど。
・スノークの背景ももっと語られるべき。
前作の印象より遥かに狡猾で強力な敵だとは
感じたが、ファースト・オーダー勃興の経緯
やカイロとの過去は殆ど語られない。そこが
あれば後半はもっと衝撃的だったろうと思う
だけに、勿体無い。
・あと、ライトセーバー戦がちょい寂しい。
EP1,2,3 とかはちょっとやり過ぎなほど壮絶で
好きだったが、その反動か、物足りなく感じた。
...
長々と不満点を書いたが、
ここからは気に入った点を。
レイ、ルーク、カイロが主軸のパート。
ここは最高に楽しめた。
老練ルークのサバイバル生活にニヤリ。ジェダイ
の講義やミステリアスな島の様子も面白い。あと、
猫ペンギンだらけの船で頭を抱えるチューイ(爆)。
てかなにあの猫ペンギンかわいい
なにあれめっさかわいい。
そしてR2との再会&まさかの1作目ホログラム!
まさかまさかまさかのヨーダ師匠
withフランク・オズ!!!
ルークの3POへの無言のウィンクやレイア
との最後の会話も優しいし、この辺はもう
涙腺にグッと来ざるを得ません。卑怯やわぁ。
そんなユーモアとリスペクトを交えつつ、
本筋であるルークとカイロの因縁を巡る
箇所もサスペンスフル。
最後の一騎討ちも、ひと振りごとの緊張感や
荘厳な映像にゾクゾク。言葉も技も完全に
カイロの上を行くルークの活躍にはまさに
“マスター”と呼べるだけの余裕と風格があった。
単純な敵味方とは異なる関係となっていく
カイロとレイのドラマも良い。
強大な血筋に翻弄され続けたカイロは、遂に
ジェダイはおろか自身の属すシスすらも否定した。
古いものすべてを滅ぼし、自分だけの秩序を確立
しようという利己的で暴力的な思想を見出だした。
一方のレイ。
両親にすら必要とされなかった彼女の悲しみを
見抜いたカイロは彼女に協力を請うが、レイは
それを拒む。前作でBB-8を見捨てなかった
優しい心は勿論だが、彼女は己の進む道を半ば
見つけていたのだと思う。フィンやレイア、
そして亡きハン・ソロ――自分を家族のように
迎えてくれた人々の為に闘う道を。
ようやく互いの進む道を決めたカイロとレイ。
道は違えたが、二人が探し求めていたのは
結局、自分の居場所だと思う。
時代の継承や人と人の繋がりを否定して
己の居場所を築こうとするカイロと、
それとは真逆の人間的な道を目指すレイ。
次作で二人はどんな決着を迎えるのか。
...
そしてルーク・スカイウォーカーの『伝説』。
「私は最後のジェダイではない」と彼は語った。
伝説とはまったく関わらない血筋にも関わらず、
真のジェダイの心を有するレイ。そしてラスト、
巨大な軍団に独り立ち向かって反乱軍を救った
スカイウォーカーの伝説に目を輝かせる子ども達。
ヨーダ曰く、「我々は彼等が成長する上で
乗り越えるべき目標なのだ。それこそが
全ての師の負う真の重荷よ。」
『伝説』ゆえの重責と長い長い後悔を克服し、
彼は遂にヨーダやオビ・ワンのような真の師に、
人々の希望そのものの存在になったのだろう。
スカイウォーカーは逝ってしまったが、
スカイウォーカーの伝説に最後は無い。
そして、彼の伝説が語り継がれる限り、
高潔なジェダイの精神に、弱きを助け
強きを挫く、正義の心に最後は無い。
つまるところ『最後のジェダイ』は、
過去3部作という伝説に歓喜し憧れた世代が、
その伝説に多大な尊敬を払いつつも決別を図り、
新たな物語を創り出そうという姿勢で作られた
意欲作だったのだと思う。
...
最後に……あくまでEP7,8までの評価として判定
には加味していないが、今後の不安要素について。
大作映画の敵は強大かつ賢しい方が
盛り上がると思うが、カイロはパワフルでは
あるがあまりに怒り任せだ。リーダーに据える
には知略とカリスマ性がまるで足りないし、
そのカイロ以外の敵も小物しか残っていない。
王将が消え、銀将(カイロ)と桂馬
(ハックス)と歩兵だけのいびつな
将棋みたいになってしまっている。
対する反乱軍も飛車角落ち(ルーク/ハン・ソロ)
な上、映画外ではあるが王将レイアも不在と
なってしまった。今回は確かに二転三転の展開
で盛り上げた訳だけど、そのために強力な駒を
悉く消費してしまったという感が拭えない。
最終章を盛り上げるのは相当に難儀では……。
再びメガホンを取るというエイブラムス監督に
またしても世界中の期待と不安が注がれます。
I have a bad feeling about this. とか
言われまくってるのかなあ。
<2017.12.16鑑賞>
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長い余談1:
ローズ役ケリー・マリー・トランについて。
勘違いされてる方が多いが(まあ、勘違い
してても非難する部分ではないと思うが)、
彼女は中国系ではない。両親ともベトナム移民
のベトナム系アメリカ人。なお、姉ペイジ役
ゴー・タイン・バンもベトナム出身。
監督曰く『ヒーローになるとは思えないような
意外性のあるキャラを入れたい』という意図の
キャスティングだったとか。
レイの血筋が無名であったという設定や
(次回で覆りそうな気もするが)、無名の
子ども達に未来を託しているような結末も
含めて『ヒーローに運命付けられた者達以外
を活躍させたい』という意図が見える。
ま、ぶっちゃけ、近頃過剰なまでに言及される
“多様性”へ配慮してアジア系を配役したという
のもあるのだろう。
個人的には、物語がよほど破綻しない限りは
どこの出身だろうがどの肌色だろうが構わない。
演出する側に腕があれば、人種や外観など
関係なしに魅力的で説得力あるキャラを描く
ことはできると思う。しかしまあ……
ローズについての感想は本文の通り。
余談2:
IMAX3D上映がなぜ初週から
行われないのか……(12/29から)。
高価な4DX上映を何故わざわざ
2パターンも用意したのか……。
近頃どうも銭絡みの不穏な話題が
多いディズニー社。暗黒面に落ちたか。
暗黒卿ダース・ミッキー降臨しちゃうのかこれ。
余談3:
キャリー・フィッシャー逝去。
クラシック3部作のファンではない
自分だけど、前作・本作での彼女の
慈愛に満ちた表情は忘れ難かった。
世界中があなたの伝説を忘れないだろう。
銀河でいちばん有名でタフな姫君の伝説だ。
どうか安らかに。
> 近頃どうも銭絡みの不穏な話題が多いディズニー社。暗黒面に落ちたか。暗黒卿ダース・ミッキー降臨しちゃうのかこれ。
ぷふふ。
秀逸ですね、この言い回し。
自分も、不満を言う時もこんなノリで書けることを目指します。お見事!
明けましておめでとうございます。
SWレビュー、楽しみにしてました。
賛否両論真っ二つですが、自分も大変満足出来ました。同意見のツッコミ所も多々ですが。
今回は特に新しいSWを作るという意気込みを殊更感じましたね。
それはあのジェダイ・マスターの言葉でも表されてました。
「わしらを超える為に彼らがおる」
この台詞が今回のSW新シリーズを表してるように思えましたね。
レビューにも書きたかったんですが、投稿したのが公開直後だったので控えましたが(^^;
今年も楽しみな作品がいっぱいですね。
今年もレビュー楽しみにしてます♪