劇場公開日 2017年12月15日

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スター・ウォーズ 最後のジェダイ : 映画評論・批評

2017年12月19日更新

2017年12月15日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

「帝国の逆襲」を反復しながらも、艦隊バトルやテーマに独自性を放つSW試練の章

SF映画の様式と視覚効果に革命をもたらした「中間三部作」や、創造主ジョージ・ルーカスのイニシアチブが前面に出た「前史三部作」に比べ、フランチャイズ戦略に長けた「フォースの覚醒」(15)以降のディズニー産「スター・ウォーズ」(以下SW)は、安定したクオリティの代わりに先進性とは無縁の、極まった工業製品のように捉える人もいるだろう。何をどう撮っても意見の割れる人気シリーズだが、とはいえ恒常的に作り続けられるということは、よい部分は継承し、時代にそぐわぬところは再定義していく。それはすなわち、シリーズをより盤石なものにして、広い世代に観てもらうための「創造の換骨奪胎」だと好解釈できはしまいか?

そういう意味で今回の新作「最後のジェダイ」は、シリーズ中もっとも評価の高いエピソード5「帝国の逆襲」(80)を反復するように物語が構成されている。劣勢に追い込まれる反乱軍。ルーク(マーク・ハミル)とヨーダを踏まえた、レイ(デイジー・リドリー)とルークの師弟関係。そしてフォースの暗黒面に対する葛藤や、同士の思わぬ裏切りーーー。だがそこは短絡的に「帝国」をなぞるのではなく、帝国軍と反乱軍という対立構図に膨らみがもたらされ、「ジェダイの存在意義」や「戦争における善悪の根拠」といった要素に現代視点のフィルターを通した形で、能動的な解釈の余地が与えられている。

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ハックス将軍(ドーナル・グリーソン)指揮のもと、反乱軍の残存艦隊を燃料が尽きるまで追い込み、せん滅を図ろうとするファースト・オーダー。反乱軍の将軍レイア(キャリー・フィッシャー)はそんな窮地に立たされながらも、レイを隠遁したルークのもとに向かわせ、ジェダイ騎士団の復活に希望を託す。いっぽうでフィン(ジョン・ボイエガ)は差し迫った危機を回避すべく、帝国のコード破りに長けた達人にアクセスを試み、それぞれの役割を全うしていく。

監督のライアン・ジョンソンは、こうしたエピソードのレイヤーを「LOOPER ルーパー」(12)で見せたようなシンメトリックなアクション構図と、視覚に鮮やかな演出センスを手さばきとしてエモーショナルに敷いていく。絨毯爆撃を主とする反乱軍の先制攻撃、そしてその後に続く撤退戦など、同シリーズに過去あまり見られなかった艦隊バトルのレイアウトは、明らかに前作のJ・J・エイブラムスとは違う個性を匂わせている。こうした点は工業製品として片付けられない、作家性の濃度の高さとみなして特筆すべきだろう。ポーグなどの新キャラクターたちが出オチにすぎず、ドラマとの有機的な連動が図られないなど個人的に煮え切らないところはあるが、2時間半たっぷりに描かれるSWサーガ試練の章は、分厚い良著を読み終えたような充足感に相当するのだ。

尾﨑一男

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