「結果より過程を楽しむ映画」10 クローバーフィールド・レーン ゴールド寿司さんの映画レビュー(感想・評価)
結果より過程を楽しむ映画
結論から言うと、自分は大変面白かった。
怪獣映画を観たい人は、前作同様そもそもこのシリーズに期待すべきではない。
また、SFであるがサスペンス色が強い。
私は前作を観ずに、いや観たとしても前作の情報は全て捨て、いったいどんな映画なのか考えずに観る方が楽しめると思った。
まず今回は前作のPOV手法ではなく、通常の観客目線となっている。しかし、「一体何が起こっているのか分からない」状態のまま、主役達のパニック状態が続くという意味では、前作と同様の運びと言える。
今回は密室シェルターの中が舞台。
秀逸なのは、怖いのは外で起こっている「何か」なのか、目の前の男なのか、最後の最後まで判断出来ないまま物語が進行する点だ。
ヒロインはその狭間に戸惑いながらも、必至に活路を見出そうとする。観客も同様に色々と想像を働かせながら、彼女に感情移入していく。「外で起こっている事はこの男の嘘なんじゃないか?」「しかしさっきのガスに侵された女性は?」
そんな謎が続きながら、息を付かせない恐怖の展開続き、全く中弛みはしない。この限られた舞台で、これだけ内容の濃い見せ方を出来るのは、流石はJ・Jと言える。
次に音。
例えば銃を撃つと「キーーン」となって”映画の音声自体が”遠くなり、我々も耳鳴りしている臨場感が楽しめる。
ガスマスクを被ると音が遮蔽され、脱ぐと鳥の声や草の音が回復する、などなど。
非常に凝った演出になっている。
ラストは「やはりあの男が嘘をついていたんだ」といって安心させておきながら、目の前の畑の上を謎の飛行物体が飛び回る。呆然と見つめるヒロイン。大変シュールな絵だが、静かな恐怖の演出だ。
「これはヤバイ!」と気付いてからも、怒涛の展開スピード。やっぱり出てくる地球外生命体。この部分に比重を置いて欲しいという意見もあるが、それではクローバーフィールドでは無くなってしまう。謎を残しつつも、ヒロインなりの決意を胸に自分の道を進むラスト、綺麗に纏まっていると自分は思った。
どうもレビューを見ていると「これはSFではなくサスペンスだ」とか「怪獣が殆ど出ない」とか「話しが完結してない」とか「続編見ないと納得行かない」などと言っている人が多いが、そんなものは前作同様、提示される気配すらない。だがそれでいい。
謎が解けないと納得しない日本人の悲しい特徴である。
「どうやらとてつもない事態が起こっている」・・・我々観客はその断片のみを情報として見せられている・・・それが何なのか想像しながら観るのが楽しいのだ。