劇場公開日 2016年6月17日

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10 クローバーフィールド・レーン : 映画評論・批評

2016年6月14日更新

2016年6月17日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

タイトルの謎ワードに惑わされるな!これぞ密室型“怪物”映画の正統継承作

2008年に製作された「クローバーフィールド HAKAISHA」は、怪獣映画に革命をもたらした。POV(一人称視点)、そしてファウンド・フッテージ(発見された未公開映像)の手段を用い、巨大モンスターの都市破壊と、逃げ惑う市民のパニックを描いた同作。その迫真ぶりは「現実世界に怪獣が出てきたら、我々はこういう映像を目撃するだろう」という説得力に溢れていた。

しかし今回の「10クローバーフィールド・レーン」は、そんな前作とはアプローチを異にする。POVでもファウンド・フッテージでもなく、劇映画としてサスペンスを繰り広げるのだ。登場するモンスターも生態が以前とは一致しておらず、両作の間に関連性が「ある」とも「ない」とも断定し難い。ただ圧倒的な勢力を誇る怪生物が地球を襲い、人類を破滅へと向かわす「黙示録」的な世界観だけが、前作とのリンクをそれとなく感じさせる。

そんな関連性うんぬんを傍に置けば、ストーリーはシンプルだ。謎の生命体が世界中を襲撃するなか、婚約者のもとに車を走らせる主人公ミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)。だが途中で衝突事故に遭い、気づけばコンクリート部屋のベッドに倒れていた。彼女は元軍人のハワード(ジョン・グッドマン)が所有するシェルターに運び込まれ、九死に一生を得たのだ。

外には生命体が放つ死のウイルスがまん延し、ミシェルはハワードと、もう一人の生存者エメット(ジョン・ギャラガー・Jr.)らと共にシェルターでの生活を余儀なくされる。ところが、いつ終わるとも知れぬ日々を過ごしていくうちに、ハワードは命の恩人ではなく、監禁が目的のサイコパスなのではという疑惑が持ち上がっていく。

外界も絶望的だが、シェルター内ではさらに切実な危機がミシェルたちを襲う。怪物よりも、恐ろしいのは人間なのかーー? この八方ふさがりな設定を活かしたスリリングな趣向も、怪獣の出現を錯乱的に捉えた前作とは著しく異なる。とはいえ怪獣モノのジャンルを正統に踏まえた前作と同様、本作も密室の状況をベースに敷いた、そんな伝統的なモンスター映画を継承しているのだ。人食いゾンビムービーの嚆矢(こうし)ともいうべき「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(68)や、侵略SFの名作「エイリアン」(79)「遊星からの物体X」(82)など、先例は決して少なくない。

本作を「クローバーフィールド」という大きな世界のピースの一片として捉えれば、解釈は多様に膨らみ、ややこしさを増す。そこには製作者であるJ・J・エイブラムスの、観客を煙に巻こうとする狙いもあるだろう。

しかし氏の手がけた作品は、どれもがクラシカルなファンタスティック・シネマのテイストを換骨奪胎させたものだ。監督作「スター・トレック」(09)「SUPER8 スーパーエイト」(11)そして「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(15)etc……。まずは何より、そのテイストを素直に汲みとって楽しもうではないか。タイトルに含まれる謎ワードの真意なんて、作品が面白けりゃ、おのずと後からついてくる。

尾崎一男

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