JUKAI 樹海のレビュー・感想・評価
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自宅にて鑑賞。原題"The Forest"。開始早々のタイトルバックから黄色のテープが印象的なフライングタイトルによるスタッフロール迄含め、要所要所で童謡「通りゃんせ」が使われている。一言で云えば木乃伊取りが木乃伊になる物語だが、そもそも“ジェス・プライス”が何を目的としてテント持参で青木ヶ原樹海に入ったのか判らないし、五日間無事に過ごしたのも事大主義である。意外性が乏しいストーリーにゴア描写も殆ど無く、不気味な雰囲気が続く中、サプライズ的な仕掛けが数回あるだけで、全篇に亘り物足りない。50/100点。
・劇中、樹海での怪異の説明内で“幽霊”と"ghost"は違うと云う説明が佳かった。そして他作と較べ、外国から見た日本の描かれ方がそれ程、酷くなかった。
・とどのつまり誰が邪気に惑わされ、錯乱した行動をとったかや、信用出来うる善人はいたのか、或いは何が真実で何が幻覚だったか等、不明な点が多く残る。
・やはり本作の肝は“サラ・プライス”と“ジェス・プライス”の双子(二役)を演じるN.ドーマーの好みによる処が大きいだろう。髪の色を変える事で外観的に差をつけていたが、メンヘラっぽい妹とその妹に負い目を感じる過去を持つ姉と云った心理的な内面や性格的な演じ分けは微妙であった。因みに巻き込まれた被害者と云える“エイデン”を演じたT.キニーは、かの歌姫L.ガガ嬢と交際が噂されていた。
・本作がハリウッドデビューとなった小澤征悦が演じた“ミチ”──この役名は、ガイドを端的に示す「道」から命名されているらしい。
・スペインの漫画家J.トーレスによると、本作の粗筋はJ.トーレスとG.エルナンデスの共著コミック"El bosque de los suicidas('11)"にソックリであると云う。
・樹海での撮影の殆どは青木ヶ原ではなく、セルビアのタラ国立公園内で敢行された。他にもセルビア国内のスタジオで多くの撮影が行われている(実家でのシーケンスのみロンドン市内でのロケらしい)。日本国内ロケでは、活きた海老を差し出す鮨店のシーンで台東区浅草の弁天山 美家古寿司店が使われ、他にも豊島区の大明小学校の旧校舎(現みらい館大明)や千葉の成田国際空港等が使われた。
・鑑賞日:2017年2月15日(水)
正気も呑み込む樹々の海
自殺の名所として知られる富士・青木ヶ原樹海。日本で働く双子の妹がそこで失踪したとの報せを受け、
アメリカ人の主人公がガイド達と共に捜索を行うが、樹海の中で怪異に襲われるというホラー作。
どうやら青木ヶ原樹海は、自殺の名所として世界的にも有名らしく、
世界の有名な自殺場所をランキングにしたサイトやら世界で一番不気味な場所をランキングにしたサイトやらで
トップ10入り――どころか、どちらでもNo.1なんだそうな。こんなので1位を取っても全然嬉しくないので
「2位じゃダメなんですか」とかつての流行語のひとつもぼやきたくなるが、草木がぎしぎしと絡み合う、
鬱蒼とした森の風景には確かに、写真を通して見るだけでも何か陰鬱な気持ちにさせるものがある。
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しかしまあ……ホラー映画としての出来は非常に中途半端な印象。
森のあちこちから話しかけてくるミイラ遺体のシーンは良かったし、「ノートラストヒム」と
カタコト英語で囁いたり暗闇でニマァ~と嗤ったりする女学生ホシコさんはめっさ怖かったけど、
それ以外はそんなに怖いシーンはないし特別ユニークとも言えない恐怖演出ばかりかね。
不穏なだけで展開に結びつかないような演出も多いし、鬱蒼とした森の風景は確かに
不気味で画になるのだけど、静かに淡々と映すばかりじゃメリハリもイマイチ。
他に良かったのは……小澤さんの流暢な英語くらいだろうか。
また本作、変な日本描写はあまりないのだが、日本人の幽霊観という点でだいぶ認識がおかしい気がする。
「樹海で自殺した人は怒った霊になって帰ってくる」とか「森は死んだ人を取り込み、幽霊にして人を惑わす」とか
日本でイマイチ馴染みのない幽霊観がどこから来たのか謎だし、会う人会う人がみんな幽霊の存在を
当たり前のように語るのも妙なのだが、一番謎なのは、妹の捜索に来た主人公に対して、
なんで皆そんなに怯えさせるようなことしか教えてくれんの?という点だったりする。
遺体安置所のおばさんもね……普通だったらそんな所にお客を置き去りにしないでしょ……
誰を探してるのかあんまり確認もしないから他人の死体を見せる羽目になったりしてるし……。
主人公に対して共感しづらい所も痛い。双子の妹が心配で必死なのは分かるが、「道を外れると危ない」
「暗くなる前に帰らないと」「1人で勝手に動かないで」などのガイドの忠告をことごとく破る上、
幽霊にそそのかされて協力してくれた人を疑うわ責めるわ刺し殺すわでアンタ何やってくれてんのと。
姉が姉なら妹も妹で、樹海に来たのは自殺以外の事情があるのかと思ったら、何にも無いのかね。
生半可な気持ちで来て周囲に迷惑をかけまくる形なので、そりゃ自殺した人達の霊が怒って追い回すのも当然よ。
...
まあ色々と不満点を書いたのだが、ホラーやドラマとしての出来も去ることながら、
やっぱ心の底で思うのは「こんな扱いで青木ヶ原樹海を描いていいの?」という気持ちかも。
自殺の名所を扱うホラー映画であれば、主人公の妹だけでなく、他の自殺志願者の心象も描いて
人間や青木ヶ原樹海という場所の抱える闇といったものに言及してもらいたかったが、
残念ながら本作は主人公姉妹のトラウマ解明にドラマを絞っており、青木ヶ原樹海を
「人を襲う怪異でいっぱいの場所」くらいのものとしか描いていない感じで、ちょっとね。
というわけでイマイチの2.0判定。
もっと怖くて深い恐怖映画にできそうな題材なのに、勿体無い。
<2018.9.24鑑賞>
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