「ナナメ掛けバッグの殺し屋」ザ・コンサルタント Toshiさんの映画レビュー(感想・評価)
ナナメ掛けバッグの殺し屋
タイトルに偽りあり。主人公はコンサルではなく公認会計士だし殺し屋でもない。公認会計士として超一流で他の人間がやらないヤバい仕事で稼いでいる。こういう危ない橋を渡れるのは火器の扱いと体術も超一流だから何かあったら自分で解決出来るからだ。この人物の造形が秀逸だ。彼にとっては会計士の仕事もひと殺しも同じ生きる術。会計士の仕事のときもひと殺しのときもバッグをナナメ掛け。数字の解析とひと殺しが同じ次元なのをこのバッグで表している。バッグの中身はだいぶ違うが。自閉症で感情表現がうまく出来ない人物をベン・アフレックがときにはコミカルに演じる。新しい当り役になりそう。
この主人公が請け負った新しい仕事は普通の企業の役員の不正を帳簿から調査すること。それほどヤバい仕事ではないはずだったが…
ストーリーには新味がないが異能のこの人物と周囲の人々との関わりが面白い。ヒロインはアナ・ケンドリックが演ずる企業の経理課員。地元の企業に普通に就職してきた地味な女性。しかし彼女が役員の不正に気付いたために主人公が雇われる。彼女も数字を読み取る能力がある。一見地味なのに能力のある田舎のおねえさん、いるんだよねえ。リアリティのないこの映画はこの女性だけが現実世界の人間で主人公もこの女性には心を開く。
後半は危機に陥ったこの女性を守るために主人公が大活躍する。あまりにも強すぎるからスリルがないが、この男が一体何者なのかがストーリーの進行とともに描かれるのがこの映画の眼目。
彼を捜査する財務省の役人の男女コンビが登場するが、彼らの捜査はもっと面白く出来たはず。
続編を期待したいが、主人公があまりにも簡単にひとを殺すのがどうも気になる。彼の正体が明らかになったあとどうやってストーリーを魅力的に紡ぐか。本作ではある一点を除いて主人公の行動に共感出来ないから。うまくやらないとだだのひと殺しの話になってしまう。