劇場公開日 2017年6月24日

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ジーサンズ はじめての強盗 : 映画評論・批評

2017年6月20日更新

2017年6月24日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

レジェンズの面目躍如!絶妙なバランス感覚で魅せる痛快コメディ&ドラマ

40年以上働いた会社から年金の支払いを停止された友人トリオが一念発起して銀行強盗を企てる。彼らの奮闘&友情を描く、痛快コメディにしてヒューマンドラマ。

なにはさておき、主人公を演じる80歳のモーガン・フリーマン(ウィリー)、83歳のマイケル・ケイン(ジョー)、82歳のアラン・アーキン(アル)という、アカデミー賞俳優たちの夢の共演が話題であり、最大の見どころであることは間違いない。コメディだからといって大げさな芝居やキャラクター付けをせず、毒舌まじりの掛け合いや、無言の時間を気にしない空気感、言外の意味を匂わせる表情で、3人の関係性を構築するアプローチはさすがレジェンズ。

銀行強盗決行を決意してからは、万引きの実地練習でジョーが運転する電動ショッピングカートの前カゴにウィリーが乗せられて公道を走るシーンや、射撃の訓練でアルがふっとばされてアタアタするシーンなどがあるが、それらも最低限のコミカルさに抑制されている。監督のザック・ブラフがベタな老人キャラという枠に3人をはめず、リスペクトをもって演出していることが伝わってくるから、本作は徹頭徹尾、喉越しがいいのである。

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一方で、強盗にびびった銀行員がお小水を漏らし、クリストファー・ロイドが振り切った老人キャラで爆笑を誘う。必要最小限のザ・コメディ的アクセントを脇役に振り分けることで、引っかかりを残すバランス感覚も見事である。

社会的弱者の彼らが、失った年金相当額だけを、圧倒的強者の銀行から取り返すという法的にはアウトだが共感できるシナリオを手掛けたのは、ビル・マーレイ主演の「ヴィンセントが教えてくれたこと」や、「ドリーム」の脚本&監督を務めたセオドア・メルフィ。年金不安が叫ばれる少子高齢化社会の日本人ならずとも、彼らが直面する問題は他人事じゃない。だから住宅ローンや病気、恋愛にまつわるサイドストーリーに関しても、心のなかで声援を送りっぱなしだ。

気づけば優れたケイパー映画でもあった物語がエンディングに到達しようかという頃に、ジョーと観客は、本筋に影響のない意外な事実を知らされるのだが、それがすさまじく粋! コース料理で観客を満足させたのに、邪魔にならないお土産も持たせてくれるメルフィの仕事にも注目だ。

須永貴子

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