「薄味の演出はさすがのイーストウッド節」ハドソン川の奇跡 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
薄味の演出はさすがのイーストウッド節
原題の「SALLY」からすると、出来事を追っかけて、「奇跡」として再現することよりも、サレンバーガー機長の人となりに光を当てたかったのだろう。
もし、自分が乗っていたとしたなら彼のことを英雄視できたかどうか、疑問なのですが、実際に、乗客たちは口をそろえて彼のおかげで「生きていられた」と言う。それだけ危機的な状況で、奇跡的に助かったんだということを、全員が分かっていたということだ。
編集の上手さもあって、最悪の結末を「悪夢」的に見せることによって、いかに奇跡的な英雄的な決断であったかがにじみ出てくる演出だ。
そして、ラストの長セリフはさすがのトム・ハンクス。見終わった後の爽快感につながる歯切れの良さだった。
余談ですけど、劇場パンフレットはなかなかの出来の良さで、ていねいなプロダクション・ノートに加え、クリント・イーストウッド監督作品の全解説付き。
彼の作風が、「よみがえり」「死者」「復讐」「旅」などをモチーフにしていることなどが簡潔に解説してある。
今作も、実在の人物を映画化しているので、余計な脚色は一切無い。
淡々としすぎていて、娯楽としては面白味に欠けるものの、彼が成し遂げたことがいかにすごいことかが伝わった。イーストウッドはまだ現役。
2016.9.28
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