劇場公開日 2016年9月24日

  • 予告編を見る

「誰もが知っているあの事故なのに、誰も知らない驚愕の心理サスペンスが待っていたのです。このようなストーリーを、よくぞクイント・イーストウッド監督が発掘できたものだと感嘆しました。」ハドソン川の奇跡 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0誰もが知っているあの事故なのに、誰も知らない驚愕の心理サスペンスが待っていたのです。このようなストーリーを、よくぞクイント・イーストウッド監督が発掘できたものだと感嘆しました。

2020年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

エンジンが全部故障した航空機を、ハドソン河に不時着水させ、全乗客の命を救った事故を扱った映画です。

このできごと、「映画化は簡単でも、成功作にすることは不可能だ」と私は思っていました。
なぜなら、観客側は溢れるほどの報道や、テレビの再現ドラマなどで結果を熟知している事故だからです。

たとえ3分間の映画だとしても、手に汗握ることは不可能(結果を知っているから)であり、ましてや2時間近い映画にするなんて、ムリムリムリだと私は確信していました。

ですが、さすがはイーストウッド監督。
驚くべきシナリオを練り上げていたのです。

観客は、主人公と一体となって、結果のわからない、誰も知らなかった不条理な出来事に直面していくのです。
あれだけ多くの報道がなされていたのに、たしかにこの映画のメインテーマについては、誰も答えを知らない。
そこに向けて、主人公が苦悩し、悶絶し、誇りを失いそうになりながらも立ち続けるところ、観客もまた一体となって、苦悩を追体験し、悶絶を追体験し、そして人間の本質とは何か、深く自問自答することを迫られるのです。

熟練の映画監督の腕としか言えません。
よくぞ、このようなシナリオを練り上げたものだと感嘆しました。
再度繰り返します。
驚くべき着眼点、驚くべきシナリオ。
これぞ映画というべき、素晴らしい作品でした。

お水汲み当番