孤独のススメのレビュー・感想・評価
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狭義の神様が広義の神様になる話
教会の教えが価値観のすべてだった主人公が、謎の男と出会うことでそれまで「悪」とみなしていた存在をほんのり認められるようになる話。
話は淡々と進むも、コミカルな雰囲気なので終始飽きなかった。
クッキーをサクサクサクサク食べる謎の男が妙に可愛い。
日曜日、皆が教会に向かう中、謎の男と共に別な場所に向かう主人公の姿が印象的だった。
あれが、主人公の中に決定的な変化ぎ訪れた瞬間なのかな、と。
これが私の人生だ、と、まっすぐ主人公を見つめながら歌う彼の血縁者の目が胸に染みる。
それまで、信じる者しか認めなかった教えの中の神様が、主人公の中ではあらゆるものを赦し認める本当の神様になったような印象を受けた。
鑑賞後優しい気持ちになれる作品。
カラに籠もること、カラを破ること
最初、フレッドは自分の硬いカラから世界を眺めている人に見えた。バッハ、彼の息子の歌声をテープで聴く、妻を思い出す、何かそれ以外あるのかしら? 彼のカラは何かから彼を守っている。
テオの存在はイラつく事も多いが、フレッドの何かに触れている。テオにはカラはない。
テオの妻の愛が、フレッドの愛と償いを呼び覚まし、隣人の非難は赦しに変わり、フレッドの息子への愛と赦しにつながっていく。
彼女の助力を得てフレッドは息子に向き合える。
聖書の言葉、結婚の誓いが胸に刺さる。
なにこれ全然ほのぼの系じゃない
プロモーションのビジュアルからは想像だにできない
ドラマチックな展開に心グッと掴まれました。
おかげでレビューも熱が入り、長くなってしまいました。
なんせ主人公のおじさんフレッドも寡黙だし、そこんちに住み着く
おじさんテオは「ンー」とか「ヤー」とか「メエ~」しか
言わないので、前半は非常に穏やかに淡々とことが進みます。
全体的にセリフが少ないので、ちょっとした効果、演出で
状況、空気がわかります。
ピクトグラムのように余計な説明がなく、簡潔で好ましい。
1分たりとも食事の遅延を許さないようなフレッドは、自由すぎる
テオにしばしばそのリズムを乱されて不機嫌になりますが、
次第に、そんな謎だらけのテオに心を許し、のみならず、
惹かれていきます。
そしてようやく我々に笑顔をも見せるようになります。
しかし彼らを囲む非常~に敬虔なカトリック教徒の
隣人たちは、それをよく思いません。
説得に押しかけられたり、嫌がらせを受けたり。
勝手に、自由の国のイメージを持っていましたが、宗教的な部分で
特に田舎においては、閉塞的な場所もあるのですね。
テオがまさかの所帯持ちであり、奥さんはまさかの
先ほどフレッドが旅行の相談に訪れた、代理店の女性。
この奥さん、心からテオを愛しているようで、それでいて
自分の気持ちは全く後回し。
テオが自分の居場所を見つけたならそれでいいと、
フレッドとの同居に意義を唱えることは決してしません。
健常者だった頃のテオと奥さんの写真を見るかぎり、
仲の良い夫婦だったと思われます。
突然の事故で普通の生活が送れなくなり、半端ないショックも
受けただろうし、混乱した、悲痛な日々を重ねたことが容易に
想像できるのですが、この奥さんは、今のテオの全てを愛し、
想いやり、委ねています。
人間、悲劇をも全て受け入れると、ここまでの寛容さを
持てるものなのでしょうか?
カトリック教徒達が毎週ミサで拝む「神」よりも、
わたしには彼女の方が神々しい存在に見えてしまいました。
だんだんと物語の進み方に変化が起き、フレッド自身の息子に
会いに行くことになります。
恐らく熱心なカトリック教徒であったフレッドは、息子がゲイで
あることが許せず、追い出してしまったようです。
その息子の働くゲイバーに、意を決して赴き(一度失敗しましたが)
彼が自身の心をさらけ出して熱唱する姿、そして息子の存在、
生き方を認めます。
この渾身の熱唱と、最愛の妻にプロポーズしたマッターホルンへの
旅の風景が重なり、想像もしていなかった壮大なエンディングを
迎えます。
何かを捨てたり、得たいの知れない何かを信用してみたり、
当たり前だったことを変えることはとても難しい。
しかし逆に、ものの見方、気持ちの持ちよう、つまり自分次第で
どうとでも状況を変えることができる。
自分次第。
とても難しいけど、できるのだ。自分しかできないのだということ。
どんなタイプの逆境に対しても有効なソリューション。
それを、ガツンと見せてくれるのです。
このチラシや、公式サイトや、キャッチコピーのほのぼの感は
一体何だったのか?
わたしの場合はそれが功を奏し、意外すぎる流れにノックアウト
されてしまったので、結果は良いのですけども。
これは今年の個人的ランキングトップ5に入ります。確実。
このパンフと邦題では・・・・
こんなに良い映画とは思わなかった。 何の予備知識も無く(予告も観ず)、パンフの写真と邦題だけだったので、映画の方向性も分からないまま観てました。 予想外の展開に驚きながらも・・・良かったですよ。
負けた気分
几帳面さと信仰心でカチカチの主人公が不思議な男の登場で変化して行く話。 テオの抱えている問題や隣人との関係等、話が二転三転、何とも言えない展開の果てに主人公の背景がみえた時、コメディなのかヒューマンなのか、いっぱい食わされた様な気分になった。 邦題は…良くわからない。
いやいや、だからと言って、ススメてはいないんじゃない?
妻に先立たれ、息子を追い出した、初老で一人暮らしののフレッド。 知的障害(のちに事故による後遺症とわかるが)の男と、奇妙な共同生活を始めたが、はじめは、近隣住民や教会に対して善人の顔を見せたいアピールなのか、と思ってみていた。 そのわりには、その薄汚れた男・テオを追い出すわけでもなく、彼のしたいがままに任せている。 中盤まで、フレッドの意図がまったく見えない。 しかし、次第に奇妙な友情や信頼も生まれ、単調だったフレッドの生活に変化が現れだす。 家の壁に書かれた落書きは、フレッドとテオを、傲慢で肉欲におぼれ、ついに神によって罰せられた「ソドムとゴモラ」に擬して中傷していた。 「善きサマリア人」を引き合いに出す場面は、善行を称えているというよりは、君(フレッド)は嫌われてると暗に揶揄したようにも取れた。など、各所各所でその場面にあったキリスト教の教えの示唆がある。 今まで、異端者を憎悪し毛嫌いしてきたのであろうフレッドが、いざ自分が周りからそうゆう目で見られだしたことで、心の基準が変わりだす。監督のいう「解放」という言葉がぴったりの心境になっていくのだ。 なによりもその証拠に、息子ヨハンの歌う「this is my life」がブレッドの心に届く。その姿が僕の胸にも突き刺さってきた。 それらを踏まえたうえで、受け容れること、赦すこと、認めること、そんな宗教観が物語の底辺に根深くしみ込んでいるを感じた。 ラストのマッターホルンは、まさに孤高の頂き。それでいて、気高ささえ感じた。一人でもいいじゃないか、とマッターホルンを自らにかぶせているようだった。やはり、タイトルは原題(マッターホルン)のままにしてほしいわ。
コドク
亡き妻と追い出してしまった息子。フレッドは、孤独による寂しさから、テオを受け入れてしまったのだと思った。不器用なフレッドだけど、優しさもあり… 手のかかるテオだけど、テオから気づかされることもある。 タイトルにススメってあるように、独りになることは悪くない。独りになって初めて気づくことってあるから… ラストのsongとフレッドの表情が良かったです。 あと景色に癒されますよ。
シンクロ。
映画を、映画館を愛する人って、孤独感を抱えている割合が高いでしょ? シンクロ率高そうだったので鑑賞。 序盤、すごく起伏の少ないストーリー展開なんだけど、それでも飽きさせない、絶妙な心地よさ。 孤独な者同士の出会い、そこから開かれる新たな扉、それぞれが背負っているバックグラウンドは何なのか。 後半加速度的に明らかになっていく事実、主人公たちとともに感じる、居た堪れない気持ち。 苦い涙も、歓びも、温かく包摂してくれる。 そんな作品でした。 観て良かったです。
浅すぎる
全て裏の意味があるのかと思ったが、 結局そのままの映画だった。 今どき、しがらみは捨てて自由になろう、 罪は赦して愛が大事って…。 50年くらい前のメロドラマ? 古すぎる。 世界は自由過ぎて困ってるんだよ。 カタルシスはゼロの時代錯誤映画。
緩やかな描写から一気に加速してカタルシスへ
雰囲気はアキ・カウリスマキ監督などの北欧映画に似た味わいがありますが・・・ オランダの田舎町で独りで暮らす中年男性フレッド(トン・カス)。 町は教会を中心にした小さな集落で、誰もが皆、顔見知り。 ある日、フレッドの向かいの家に、奇妙な男テオ(ルネ・ファント・ホフ)が現れて、ガソリンがほしいといっている。 その奇妙な男は、昨日フレッドの許を訪れ、同じようにガソリンがほしいといった。 ガソリンのないフレッドはわずかばかりの金を渡して、彼を追い払ったのだが、どうも嘘だったらしい。 嘘というよりも、テオは口もほとんど利かず、どこかヘンなので、実際のところはわからない。 テオに、昨日の金の代わりに、玄関前の敷石の掃除をさせたフレッドは、労をねぎらうために彼を室内に招き入れた・・・ というところから、フレッドとテオの奇妙な同居が始まる・・・といったハナシ。 中年男ふたりの奇妙な同居生活をシュールな笑いで描いただけの映画かと思っていると、後半、物語は一気に加速し、爆発的なカタルシスが訪れる。 加速する物語は、唐突起こるのではなく、前半に丹念に布石が打たれていて、翻ってみると、実によく出来ている。 フレッドの独り暮らし・・・ 若い頃の妻と幼い息子の写真が飾られている。 妻が事故死したことは早々にわかるのだけれど、その事故で息子も亡くなったかどうかは語られない。 テオの奇妙な行動の原因・・・ 先天的なものものかしら、と思っていると、さにあらず。 フレッドの過去と心情的に同化してくるところがある。 フレッドが暮らす小さな集落・・・ 集落の皆が教会に通い、日曜日の礼拝では皆、座る場所が決まっているほど。 フレッドの家の向かいに住む中年男は、教会の役員かなにか。 しかし、その彼も心に何かを抱えており、それがまたフレッドの過去に関係がある。 フレッドとテオが同居し始めてすぐに、彼らふたりに同性愛の噂が立つ・・・ ただ単ににテオが、フレッドの亡き妻の洋服を着ているからだけではない。 と、これらの要素が、後半、ストンと腑に落ちて、感動を呼び起こします。 (ただし、どのように展開するのかは書きません) そして、重要なのは、映画の奥底に流れる宗教観。 受容と赦し。 これが大きなテーマでしょう。 受け容れることなく、赦すことなく、生きてきた男が、あることがらを受け容れる。 それが、赦し(ひと皆、神の前で平等であることで得られる赦し)になるというものです。 クライマックスで歌われる「This Is My Life」、鳥肌ものでした。
最初から最後まで乗れなかった
田舎で孤独に暮らす男性が、一人の無口な男性を受け入れて共に暮らすうちに、生活に変化が起きる話。 最初から最後まで、気持ちが入り込めず、気分がのらないまま終了してしまった。 田舎の煩わしさや、しがらみを捨てた時、人は自由になり、自分らしい生活を手に入れることができる。 って話だけど、あまり心にせまるものがなく、シュールでかわいた笑も私には笑えなかった。 残念。
この邦題からは絶対に想像出来ない秀作に癒される!
「一体これは何?」、この映画は、観客を何処へ誘おうとしているのだろうか? 本作はオランダ作品なので、多分物語の舞台もオランダの片田舎の町なのだろうか?それはそれは、緑が目に眩しい程の美しい草原から物語は始まる。 そして全編通してクラシック音楽の美しい響きが心地良く流れる。 物語は、初老の男ヤモメである、主人公フレッドが或る日、奇妙な出来事に遭遇する事で彼の人生が大きな変化を起こして行く。そして彼の暮らす、その小さな村の多くの人々を巻き込む事件へと発展していくのだが、完全に先が読めない! そして、ラストがまさか???の驚きの終焉を迎えるのだ! しかし、全編どう進むのか、何を語ろうとしているのかが、途中全く見えないままに物語は進行するのだが決して退屈する事も無ければ、飽きる事も無い摩訶不思議な映画なのだった!! 「シザーハンス」「アメリ」のような特別な異次元空間のような映画! 貴方はきっとこの映画で癒され、そして勇気を貰うに違いない! この作品のキーポイントの一つがスイスのマッターホルンの山だ。 まさに本作もあの美しい名峰のような奥深さを秘めたミステリアスな秀作だった! 是非このラストを観て欲しい!
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