劇場公開日 2016年4月9日

  • 予告編を見る

「いやいや、だからと言って、ススメてはいないんじゃない?」孤独のススメ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いやいや、だからと言って、ススメてはいないんじゃない?

2016年4月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

知的

妻に先立たれ、息子を追い出した、初老で一人暮らしののフレッド。
知的障害(のちに事故による後遺症とわかるが)の男と、奇妙な共同生活を始めたが、はじめは、近隣住民や教会に対して善人の顔を見せたいアピールなのか、と思ってみていた。
そのわりには、その薄汚れた男・テオを追い出すわけでもなく、彼のしたいがままに任せている。
中盤まで、フレッドの意図がまったく見えない。
しかし、次第に奇妙な友情や信頼も生まれ、単調だったフレッドの生活に変化が現れだす。
家の壁に書かれた落書きは、フレッドとテオを、傲慢で肉欲におぼれ、ついに神によって罰せられた「ソドムとゴモラ」に擬して中傷していた。
「善きサマリア人」を引き合いに出す場面は、善行を称えているというよりは、君(フレッド)は嫌われてると暗に揶揄したようにも取れた。など、各所各所でその場面にあったキリスト教の教えの示唆がある。
今まで、異端者を憎悪し毛嫌いしてきたのであろうフレッドが、いざ自分が周りからそうゆう目で見られだしたことで、心の基準が変わりだす。監督のいう「解放」という言葉がぴったりの心境になっていくのだ。
なによりもその証拠に、息子ヨハンの歌う「this is my life」がブレッドの心に届く。その姿が僕の胸にも突き刺さってきた。

それらを踏まえたうえで、受け容れること、赦すこと、認めること、そんな宗教観が物語の底辺に根深くしみ込んでいるを感じた。

ラストのマッターホルンは、まさに孤高の頂き。それでいて、気高ささえ感じた。一人でもいいじゃないか、とマッターホルンを自らにかぶせているようだった。やはり、タイトルは原題(マッターホルン)のままにしてほしいわ。

栗太郎