劇場公開日 2016年5月21日

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「こんな大人だけど。」海よりもまだ深く ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0こんな大人だけど。

2016年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

難しい

ローマ人にも山男にもダメ男にもなれる阿部ちゃんの^^;
良多シリーズ第3弾は更にいっそうダメ男になっている。
別れた妻子に未練タラタラの割に息子の養育費も払わず、
妻の男に嫉妬、有金ギャンブル、困ると老母の懐を弄る、
一体お前は幾つなんだ!?とほざきたくもなるロクデナシ
の団地サイズに納まりきれない阿部ちゃんがそこにいる。
この台所で凍ったカルピスアイスを差し出してラジオを
抱える母親がピッタリ寄り添い、どんなロクデナシでも
私には可愛くてたまらない息子なのよと訴えかけてくる。
高度成長期にガンガン建ち並んだ公団も今では独居老人
の住処扱いになり、シャッター通り商店街もお馴染みだ。
なりたい大人になれないし住みたい住まいにも住めない。
母親の嘆きがホンワカした嫌味にしか聞こえず、その夫
がまるで同じような性格だったことを踏まえ血筋という
言葉が脳を支配する。歩いても歩いても夢は叶わず、海
よりもまだ深く愛したところで手放したものは戻らない。
そんなこと分かっちゃいるのに改めようとしない人間の
可笑しさと情けなさは子供の目から見ても明らかなのだ。
それでも今作の真の主人公である少年のあの成長ぶりに
言ってはナンだがこの子も大人になって父親に似るのは
なんとなく目に見えている。こんな大人たちに囲まれて
十歩も百歩も成長を余儀なくされている少年の不憫から
そろそろ学びなさいよと私たちに訴えかけてくるようだ。
だけど嬉しいのは、ロクデナシに向ける温かい師弟愛や
誰だって人間には失敗談があるだろう?と、先生と名の
つく老人の悲哀をチラリ見せるあたりの心憎さが、監督
の人間愛を描いているところ。リアルな対人模様は健在。

(老母の描き方が完璧。息子、娘、嫁、孫へのあの接し方)

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ハチコ