「観た後で幸せになれる作品」海よりもまだ深く Ukさんの映画レビュー(感想・評価)
観た後で幸せになれる作品
ドラマには着地点が必ず存在するが
現実の人生においてあるべき着地点は明確でない。
日常というものは本来無味無臭でドラマのように刺激的ではないのである。
この作品にはいくつかのエピソードがあるが
主人公とその周りにいる元妻、息子、母親、そして父親は
この作品の冒頭とラストにおいてその関係性はなんら変わっていない。
実際、他人の一言や一夜の体験で人生観が変わるはずもなく、
翌朝も淡々とした日常が続くのは極めて現実的なのである。
ただ、この作品の中の”日常”を観た後に、なぜかある種の
幸福を感じる。
この幸福感こそが、是枝作品の真骨頂なのではないだろうか?
同時にお腹に重たい豪華キャストの作品や、観た人間が皆泣く
作品が上映されているが、それらの映画鑑賞で荒れた胃に優しい七草粥のような作品であるのは間違いない。
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