「痛い」ルーム kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
痛い
17歳の高校生のときに犯人に拉致され、やがて犯人の子を宿し、出産、そのまま男の子を狭い納屋の中で育てる・・・序盤はその辛い生活と、世界を知らない息子の無邪気な部分の物語。日曜日になると犯人がやってきて、なすがままにされる母親ジョイ。たしか新潟県で9歳の少女が誘拐され9年間監禁されていたという事件が記憶にあるが、少女から大人の女性へと成長する貴重な青春時代を奪ったという許されない事件。オスカー女優となったラーソンのすっぴん姿からしても、閉じ込められた期間に老けてしまった感じが出ている。
そして、脱出するために、息子を病気に見せかけるが、薬を買ってくると言い放つ犯人。全く病院には行こうとしないのだ。翌日にはカーペットでぐるぐる巻きにして死亡したと見せかけ、助けを呼ばせるという作戦に出るジョイ。ハラハラドキドキする前半のハイライト。母親の愛を信じてわけもわからず作戦を実行する。この時、保護した女性警官の対応が良かったため、監禁場所を発見、犯人も逮捕される。
脱出するまでがメインかと思いきや、外の世界を知らない少年が体験する心理描写と、精神に影響が出始めるジョイの描写。また、7年の空白の時間は両親の離婚という出来事もあったのだ。そして父親(ウィリアム・H・メイシー)もまた自分にできた初孫が犯人との間に生まれた子という目で見てしまい、まともに顔を見ようとしない・・・むしろ、母親(アレン)の恋人レオ(トム・マッカムス)の方が血が繋がってないため、ジャックに優しく接することが出来てた感がある。
帰宅して2週間くらい経った頃、マスコミの取材を受けたジョイは息子の件で色々質問を受けたせいで精神分裂気味となり自殺未遂をしてしまう。余計な説明がないストーリーだが、気持ちが痛いほど伝わってくるのだ。一方、少年は世界を知らなかったわけだが、5歳という幼さもあり徐々に順応していく様子も伝わってくる。終盤では「部屋に戻りたい」とジョイにねだるジャックだったが、ジョイはなぜだかあっさりと監禁現場に彼を連れてゆく。彼女自身も立ち直ろうとする気持ちで行ったのだが、気持ちいいくらいに爽やかにエンディングを見れる作品に仕上がっている。日本じゃこんな映画を作れるのだろうか?非ハリウッド映画という点でも、どことなく是枝作品にも通ずるのだが・・・