「世界」ルーム U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
世界
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とても深いテーマを扱った作品だった。
冒頭、部屋の中で日常を過ごす母子が描かれる。あまり裕福な家庭ではなさそうだが、それでも子供は笑い、母を慕い、怒り泣き、不貞腐れ、甘える。
どこにでもある家庭の一幕。
だが、特殊な状況がその日常を非日常に塗り替える…。
彼の世界はそれまで「部屋の中」だけではあった。閉ざされた空間、地平線も海もない。彼の世界の空は四角く切り取られていた。
彼が初めて外に出て、空を目の当たりにした時の表情は忘れられない…未知との遭遇そのものであった。
文字通り別世界に触れた彼の戸惑いは尋常ではなかった。
彼の都合などお構いなしに時間は進む。
今まで母とだけでは対峙してれば良かったが、そうもいかない。
彼は少しづつ少しづつ、別世界を自分の世界へと認識していく。
「世界はこんなにも美しい」
それは対比から生まれる言葉なのかもしれない。彼にとっての美しさは、他の尺度認識あるようにも思える。
彼にはどう映るのだろうか?
いずれにせよ、子供は成長する。
いつまでも部屋の中だけには居られない。
TVのキャスターが問いかける
「それが彼にとって最善だったと思いますか?」
そうやって、世間は良識を押し付ける。
なんと、残酷で無神経な問いかけであろうか?
常識という牢獄を感じたような気になった。
一般論という未曾有の渦を擁する怪物を。
使い方を誤るとホントに怖い。
今の日本はそれに席巻せれてるようにも思う。
兎にも角にも、主役の彼が素晴らしい。
彼の目に映るもの全てがリアルであった。
そして、それを導いた監督も。
深い…とてつもなく深い闇と光を内包した作品だった。
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