「被害者を責めないで、ただ寄り添いたい。」ルーム だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
被害者を責めないで、ただ寄り添いたい。
ショートタームがすごくグッとくる作品で、ブリーラーソンを覚え、そんな彼女の最新作ということで楽しみにしていました。
レイプシーンや監禁している人に殴られたりするシーンがいっぱいあったらつらすぎるな、見てられるかな?と、少し心配でしたが、見られないほど怖くはなかったです。
しかし、オールドニックがやってきた夜、せまい部屋に響くギシギシゆれるベッドの音が、気持ち悪くて気持ち悪くて、ママが可哀想すぎて、泣けて仕方なかったです。
ママの気持ちをずっと考えてみていました。七年の監禁生活が幸せだった少女から奪ったあらゆるもの。その尊さ、取り返しようのなさに絶望しつつ。決して望んでいない妊娠だけれども、ママになって子供を育てるんだということが、彼女を生きながらえさせたのだろうと思いました。
生きていたからよかったのか?そう言い切れるのか?でも、ママのジャックへの思いは、まぎれもない母の愛だし、ジャックが犯罪者の遺伝子を持っていたとしても、自分の息子だし。いろんなことがよぎっては、それを打ち消す別の考えが浮かんでは消え、というハラハラがありました。
描かれることのすべてが多角的で、複雑で、祈りながら見ることしかできませんでした。
ジョイとしての世界を取り戻そうとする中で、彼女は再び傷つけられてゆきます。
父は孫であるジャックを監禁者の息子としてしか見られない。(この男性にありがちな反応!だいきらいだ。)
幸せであろう友人たちとの比較。
極め付けが、テレビのインタビューで、インタビュアーが投げかけた、「ジャックをちゃんとした世界で育てるべきだとは思わなかったのか、施設に預けるなり方法があったのでは」という言葉。
極限で必死に生きてきたことを否定され、ジョイは自殺未遂をしてしまいます。
このことに、本当に胸が潰れそうに、悲しく悔しく思いました。
犯罪被害者をなぜ責めるのか。彼女にどんな咎があると?
どんなベクトルからも責めないでほしい。他人が責めなくても本人がものすごく責めてるんだから、あなたは悪くない、間違ってないよって言い続けてほしい。それ以外に他人ができることなんてないのに。
そういう意味で、ジャックの存在は、ジョイを肯定したのかなぁと思いました。
もちろん、ジャックがいたことで苦しんだこともありましょうが、でも最後にはジャックがジョイをこの世に繫ぎ止めたのかなぁと。
ジャックの目線で進む物語ながら、ママとジョイのことをずっと考えずにはいられなくなる物語でした。
生きていることは、希望であってほしい。生まれたことは、どんな背景があっても祝福であってほしい。
ジャックを愛して、ママになったあなたは、とても強い女性なんだよ。間違ってなんかない。誰にでもできることではない、すごいことが出来た人なんだよ。
辛くて苦しく、怒りもおぼえますが、強い希望も見える、眩しい作品です。