「新天地へ旅立つ人へオススメしたい作品」ルーム 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
新天地へ旅立つ人へオススメしたい作品
原作未読。アカデミー賞作品賞にノミネートされた中でも映画評論家の松崎健夫さんや中井圭さんが、「出来るだけこの作品の情報を入れないで観てほしい」と言っていたので概要だけ聞いた状態で観に行ってみたら終始観入ってて、退屈さを全く感じなかった。
監禁からどう脱出するかのサスペンスや人間の醜い部分を映し出す半ドキュメント的な話じゃなく、監禁された"部屋"で息子と共に過ごしながら脱出したいと願い、いざ戻ると今まで戻りたいと願っていた"世界"に壊される母親と、"部屋"が世界そのものって意識の幼子が"世界"を見て世界をどう受け入れていくのかって言う対比が、これから新天地で新たな生活を始める様な人にオススメしたくなる作品に感じた。
レニー・アブラハムソン監督は、ともすれば母親主体のセンセーショナルにしやすい映画に描きそうなこの作品を、一歩引いた位置から眺めるジャックの視点を随所に入れることで、観客にこの作品はジャック視点の作品なんだと認識させる工夫をしてたし、観終わってもラストに至るまでに悲しいだけじゃない爽やかなものを後に残している気がした。
ジャック役のジェイコブ・トレンブレイ君はベテラン俳優かと思う程わざとらしく見えない、違和感を全く感じさせない演技で、この作品みたいな経験をした事があるかよっぽど天性の才能があるんだろうなあってのを思ったし、母親・ジョイ役のブリー・ラーソンも唐突にこんな理不尽な境遇に遭って不安定になってる母親役を見事に演じていたと思う。
レオ役のトム・マッカムスさんが地味に重要な役どころで、ジョイとしては突然両親が離婚し母親が再婚しているのはショックだったろうけど、ジョイの家族も思い悩んでお互いを責めている中で一番ジョイの家族から遠い位置にいるからこそ、ジャックに対して普通の子供として接してくれたレオがいなかったらこの結末にはなっていなかったかも知れないと思うと、レオの存在は大きいと思う。