「ジャックとママが築いた「パワー」」ルーム HammondJ3さんの映画レビュー(感想・評価)
ジャックとママが築いた「パワー」
まずは、7年間の監禁生活という全く想像できない過酷な状況、そして開かれた世界に対する戸惑い、怖れ、それを克服するまでを見事に演じきった、2人に圧倒されました。
ブリー・ラーソンは、若くても健気に幼い息子を支え続け、しかし、ギリギリな精神状態で自分の平常心さえ保つのに必死な中、何とか生き延びようともがく様は、観ているこちらの心を抉るような演技を魅せてくれました。
ジェイコブ・トレンブリー君も、母親と共に「世界」を受け入れていくという難しい設定を本当に自然に演じていました。
今作には、あるキーワードが時たま出てきます。
それは「パワー」。観た方なら分かると思いますが、ジャックは人の体というかパーツにパワーが宿っていると信じています。実は、この「パワー」が、ストーリーを突き動かし、親子の運命を切り拓いていると言えると思います。
もちろん「パワー」が親子を救ったのではなく、親子として5年間の間に築いた信頼関係、クサく言えば愛こそが、お互いを支え、そして親が子を、子が親を勇気づけた、それが「パワー」として結実したのではないのでしょうか。
恐らく、彼女はジャックが生まれていなければ自殺を選んでいたでしょう。しかし、ジャックが産まれたことで希望が生まれ、ジャックに「世界」を見せてあげたいという気持ちが、彼女の生きる原動力となったようにも思えます。そして、ジャックもママがどんな窮地に陥っても、世界の「内側」で唯一愛した人だからこそ、自分を犠牲にしてまでママを守ろうとしたのだと思います。
よく「人は一人じゃ生きていけない」なんて言いますが、そんな当たり前のことを陳腐なセリフに頼らず、
しっかり芯を通して描いてくれた、本当に良くできた作品だと思います。